死んだ蠅は香料作りの香油を腐らせ、臭くする。
僅かな愚行は知恵や名誉より高くつく。
賢者の心は右へ、愚者の心は左へ。
愚者は道行くときすら愚かで
だれにでも自分は愚者だと言いふらす。
主人の気持があなたに対してたかぶっても
その場を離れるな。
落ち着けば、大きな過ちも見逃してもらえる。
太陽の下に、災難なことがあるのを見た。
君主の誤りで
愚者が甚だしく高められるかと思えば
金持ちが身を低くして座す。
奴隷が馬に乗って行くかと思えば
君侯が奴隷のように徒歩で行く。
落とし穴を掘る者は自らそこに落ち
石垣を破る者は蛇にかまれる。
石を切り出す者は石に傷つき
木を割る者は木の難に遭う。
なまった斧を研いでおけば力が要らない。
知恵を備えておけば利益がある。
呪文も唱えぬ先に蛇がかみつけば
呪術師には何の利益もない。
賢者の口の言葉は恵み。
愚者……
わたしは心を尽くして次のようなことを明らかにした。すなわち
善人、賢人、そして彼らの働きは
神の手の中にある。
愛も、憎しみも、人間は知らない。
人間の前にあるすべてのことは何事も同じで
同じひとつのことが善人にも悪人にも良い人にも
清い人にも不浄な人にも
いけにえをささげる人にもささげない人にも臨む。
良い人に起こることが罪を犯す人にも起こり
誓いを立てる人に起こることが
誓いを恐れる人にも起こる。
太陽の下に起こるすべてのことの中で最も悪いのは、だれにでも同じひとつのことが臨むこと、その上、生きている間、人の心は悪に満ち、思いは狂っていて、その後は死ぬだけだということ。
命あるもののうちに数えられてさえいれば
まだ安心だ。
犬でも、生きていれば、死んだ獅子よりましだ。
生きているものは、少なくとも知っている
自分はやがて死ぬ、ということを。
しかし……
わたしはこのようなことを見極め、太陽の下に起こるすべてのことを、熱心に考えた。今は、人間が人間を支配して苦しみをもたらすような時だ。
だから、わたしは悪人が葬儀をしてもらうのも、聖なる場所に出入りするのも、また、正しいことをした人が町で忘れ去られているのも見る。これまた、空しい。
悪事に対する条令が速やかに実施されないので
人は大胆に悪事をはたらく。
罪を犯し百度も悪事をはたらいている者が
なお、長生きしている。
にもかかわらず、わたしには分かっている。
神を畏れる人は、畏れるからこそ幸福になり
悪人は神を畏れないから、長生きできず
影のようなもので、決して幸福にはなれない。
この地上には空しいことが起こる。
善人でありながら
悪人の業の報いを受ける者があり
悪人でありながら
善人の業の報いを受ける者がある。
これまた空しいと、わたしは言う。
それゆ……
名声は香油にまさる。
死ぬ日は生まれる日にまさる。
弔いの家に行くのは
酒宴の家に行くのにまさる。
そこには人皆の終りがある。
命あるものよ、心せよ。
悩みは笑いにまさる。
顔が曇るにつれて心は安らぐ。
賢者の心は弔いの家に
愚者の心は快楽の家に。
賢者の叱責を聞くのは
愚者の賛美を聞くのにまさる。
愚者の笑いは鍋の下にはぜる柴の音。
これまた空しい。
賢者さえも、虐げられれば狂い
賄賂をもらえば理性を失う。
事の終りは始めにまさる。
気位が高いよりも気が長いのがよい。
気短に怒るな。
怒りは愚者の胸に宿るもの。
昔の方がよかったのはなぜだろうかと言うな。
それは賢い問いではない。
知恵は遺産に劣らず良いもの。
日の光を見る者の役に立つ。
知恵の陰に宿れば銀の陰に宿る、というが
知っておくがよい
知恵はその持ち主に命を与える、と。
……
彼らが使徒たちを引いて来て最高法院の中に立たせると、大祭司が尋問した。「あの名によって教えてはならないと、厳しく命じておいたではないか。それなのに、お前たちはエルサレム中に自分の教えを広め、あの男の血を流した責任を我々に負わせようとしている。」ペトロとほかの使徒たちは答えた。「人間に従うよりも、神に従わなくてはなりません。 30わたしたちの先祖の神は、あなたがたが木につけて殺したイエスを復活させられました。神はイスラエルを悔い改めさせ、その罪を赦すために、この方を導き手とし、救い主として、御自分の右に上げられました。わたしたちはこの事実の証人であり、また、神が御自分に従う人々にお与えになった聖霊も、このことを証ししておられます。」
これを聞いた者たちは激しく怒り、使徒たちを殺そうと考えた。ところが、民衆全体から尊敬されている律法の教師で、ファリサイ派に属するガマリエルという人が、議場に立……
太陽の下に、次のような不幸があって、人間を大きく支配しているのをわたしは見た。 2ある人に神は富、財宝、名誉を与え、この人の望むところは何ひとつ欠けていなかった。しかし神は、彼がそれを自ら享受することを許されなかったので、他人がそれを得ることになった。これまた空しく、大いに不幸なことだ。
人が百人の子を持ち、長寿を全うしたとする。
しかし、長生きしながら、財産に満足もせず
死んで葬儀もしてもらえなかったなら
流産の子の方が好運だとわたしは言おう。
その子は空しく生まれ、闇の中に去り
その名は闇に隠される。
太陽の光を見ることも知ることもない。
しかし、その子の方が安らかだ。
たとえ、千年の長寿を二度繰り返したとしても、幸福でなかったなら、何になろう。すべてのものは同じひとつの所に行くのだから。
人の労苦はすべて口のためだが
それでも食欲は満たされない。
賢者は愚……
焦って口を開き、心せいて
神の前に言葉を出そうとするな。
神は天にいまし、あなたは地上にいる。
言葉数を少なくせよ。
夢を見るのは悩みごとが多いから。
愚者の声と知れるのは口数が多いから。
神に願をかけたら
誓いを果たすのを遅らせてはならない。
愚か者は神に喜ばれない。
願をかけたら、誓いを果たせ。
願をかけておきながら誓いを果たさないなら
願をかけないほうがよい。
口が身を滅ぼすことにならないように。
使者に「あれは間違いでした」などと言うな。
神はその声を聞いて怒り
あなたの手の業を滅ぼされるであろう。
夢や空想が多いと饒舌になる。
神を畏れ敬え。
貧しい人が虐げられていることや、不正な裁き、正義の欠如などがこの国にあるのを見ても、驚くな。なぜなら
身分の高い者が、身分の高い者をかばい
更に身分の高い者が両者をかばうのだから。
何にもまして……
わたしは改めて、太陽の下に行われる虐げのすべてを見た。
見よ、虐げられる人の涙を。
彼らを慰める者はない。
見よ、虐げる者の手にある力を。
彼らを慰める者はない。
既に死んだ人を、幸いだと言おう。更に生きて行かなければならない人よりは幸いだ。いや、その両者よりも幸福なのは、生まれて来なかった者だ。太陽の下に起こる悪い業を見ていないのだから。
人間が才知を尽くして労苦するのは、仲間に対して競争心を燃やしているからだということも分かった。これまた空しく、風を追うようなことだ。
愚か者は手をつかねてその身を食いつぶす。
片手を満たして、憩いを得るのは
両手を満たして、なお労苦するよりも良い。
それは風を追うようなことだ。
わたしは改めて
太陽の下に空しいことがあるのを見た。
ひとりの男があった。友も息子も兄弟もない。
際限もなく労苦し、彼の目は富に飽くことがな……
何事にも時があり
天の下の出来事にはすべて定められた時がある。
生まれる時、死ぬ時
植える時、植えたものを抜く時
殺す時、癒す時
破壊する時、建てる時
泣く時、笑う時
嘆く時、踊る時
石を放つ時、石を集める時
抱擁の時、抱擁を遠ざける時
求める時、失う時
保つ時、放つ時
裂く時、縫う時
黙する時、語る時
愛する時、憎む時
戦いの時、平和の時。
人が労苦してみたところで何になろう。
わたしは、神が人の子らにお与えになった務めを見極めた。 11神はすべてを時宜にかなうように造り、また、永遠を思う心を人に与えられる。それでもなお、神のなさる業を始めから終りまで見極めることは許されていない。
わたしは知った
人間にとって最も幸福なのは
喜び楽しんで一生を送ることだ、と
人だれもが飲み食いし
その労苦によって満足するのは
神の賜物だ、と。
わたしは……
また、わたしは顧みて
知恵を、狂気と愚かさを見極めようとした。
王の後を継いだ人が
既になされた事を繰り返すのみなら何になろうか。
わたしの見たところでは
光が闇にまさるように、知恵は愚かさにまさる。
賢者の目はその頭に、愚者の歩みは闇に。
しかしわたしは知っている
両者に同じことが起こるのだということを。
わたしはこうつぶやいた。
「愚者に起こることは、わたしにも起こる。
より賢くなろうとするのは無駄だ。」
これまた空しい、とわたしは思った。
賢者も愚者も、永遠に記憶されることはない。
やがて来る日には、すべて忘れられてしまう。
賢者も愚者も等しく死ぬとは何ということか。
わたしは生きることをいとう。太陽の下に起こることは、何もかもわたしを苦しめる。どれもみな空しく、風を追うようなことだ。
太陽の下でしたこの労苦の結果を、わた……