それはわたしの恋しい人へ滑らかに流れ
眠っているあの人の唇に滴ります。
わたしは恋しい人のもの
あの人はわたしを求めている。
恋しい人よ、来てください。
野に出ましょう
コフェルの花房のもとで夜を過ごしましょう。
朝になったらぶどう畑に急ぎ
見ましょう、ぶどうの花は咲いたか、花盛りか
ざくろのつぼみも開いたか。
それから、あなたにわたしの愛をささげます。
恋なすは香り
そのみごとな実が戸口に並んでいます。
新しい実も、古い実も
恋しい人よ、あなたのために取っておきました。
あなたが、わたしの母の乳房を吸った
本当の兄だと思う人なら
わたしをとがめたりはしないでしょう
外であなたにお会いして
くちづけするわたしを見ても。
わたしを育ててくれた母の家に
あなたをお連れして
香り高いぶどう酒を
ざくろの飲み物を差し上げます。
あの人が左の腕をわ……
眠っていても
わたしの心は目覚めていました。
恋しい人の声がする、戸をたたいています。
「わたしの妹、恋人よ、開けておくれ。
わたしの鳩、清らかなおとめよ。
わたしの頭は露に
髪は夜の露にぬれてしまった。」
衣を脱いでしまったのに
どうしてまた着られましょう。
足を洗ってしまったのに
どうしてまた汚せましょう。
恋しい人は透き間から手を差し伸べ
わたしの胸は高鳴りました。
恋しい人に戸を開こうと起き上がりました。
わたしの両手はミルラを滴らせ
ミルラの滴は指から取っ手にこぼれ落ちました。
戸を開いたときには、恋しい人は去った後でした。
恋しい人の言葉を追って
わたしの魂は出て行きます。
求めても、あの人は見つかりません。
呼び求めても、答えてくれません。
街をめぐる夜警にわたしは見つかり
打たれて傷を負いました。
城壁の見張りは、わたしの衣をは……
夜ごと、ふしどに恋い慕う人を求めても
求めても、見つかりません。
起き出して町をめぐり
通りや広場をめぐって
恋い慕う人を求めよう。
求めても、あの人は見つかりません。
わたしが町をめぐる夜警に見つかりました。
「わたしの恋い慕う人を見かけましたか。」
彼らに別れるとすぐに
恋い慕う人が見つかりました。
つかまえました、もう離しません。
母の家に
わたしを産んだ母の部屋にお連れします。
エルサレムのおとめたちよ
野のかもしか、雌鹿にかけて誓ってください
愛がそれを望むまでは
愛を呼びさまさないと。
荒れ野から上って来るおとめは誰か。
煙の柱が近づいて来るかのよう。
それは隊商のもたらすさまざまな香料
ミルラや乳香をたく煙。
見よ、ソロモンの輿を。
輿をになう六十人の勇士、イスラエルの精鋭。
すべて、剣に秀でた戦士。
夜襲に備えて、腰に……
恋しい人の声が聞こえます。
山を越え、丘を跳んでやって来ます。
恋しい人はかもしかのよう
若い雄鹿のようです。
ごらんなさい、もう家の外に立って
窓からうかがい
格子の外からのぞいています。
恋しい人は言います。
「恋人よ、美しいひとよ
さあ、立って出ておいで。
ごらん、冬は去り、雨の季節は終った。
花は地に咲きいで、小鳥の歌うときが来た。
この里にも山鳩の声が聞こえる。
いちじくの実は熟し、ぶどうの花は香る。
恋人よ、美しいひとよ
さあ、立って出ておいで。
岩の裂け目、崖の穴にひそむわたしの鳩よ
姿を見せ、声を聞かせておくれ。
お前の声は快く、お前の姿は愛らしい。」
狐たちをつかまえてください
ぶどう畑を荒らす小狐を。
わたしたちのぶどう畑は花盛りですから。
恋しいあの人はわたしのもの
わたしはあの人のもの
ゆりの中で群れを飼っている人のも……
恋人よ、あなたをたとえよう
ファラオの車をひく馬に。
房飾りのゆれる頬も
玉飾りをかけた首も愛らしい。
あなたに作ってあげよう
銀を散らした金の飾りを。
王様を宴の座にいざなうほど
わたしのナルドは香りました。
恋しい方はミルラの匂い袋
わたしの乳房のあいだで夜を過ごします。
恋しい方は香り高いコフェルの花房
エン・ゲディのぶどう畑に咲いています。
恋人よ、あなたは美しい。
あなたは美しく、その目は鳩のよう。
恋しい人、美しいのはあなた
わたしの喜び。
わたしたちの寝床は緑の茂み。
レバノン杉が家の梁、糸杉が垂木。
わたしはシャロンのばら、野のゆり。
おとめたちの中にいるわたしの恋人は
茨の中に咲きいでたゆりの花。
若者たちの中にいるわたしの恋しい人は
森の中に立つりんごの木。
わたしはその木陰を慕って座り
甘い実を口……
これ以上、何を話そう。もしギデオン、バラク、サムソン、エフタ、ダビデ、サムエル、また預言者たちのことを語るなら、時間が足りないでしょう。 信仰によって、この人たちは国々を征服し、正義を行い、約束されたものを手に入れ、獅子の口をふさぎ、 燃え盛る火を消し、剣の刃を逃れ、弱かったのに強い者とされ、戦いの勇者となり、敵軍を敗走させました。 女たちは、死んだ身内を生き返らせてもらいました。他の人たちは、更にまさったよみがえりに達するために、釈放を拒み、拷問にかけられました。 また、他の人たちはあざけられ、鞭打たれ、鎖につながれ、投獄されるという目に遭いました。 彼らは石で打ち殺され、のこぎりで引かれ、剣で切り殺され、羊の皮や山羊の皮を着て放浪し、暮らしに事欠き、苦しめられ、虐待され、 荒れ野、山、岩穴、地の割れ目をさまよい歩きました。世は彼らにふさわしくなかったのです。
ところで、この人たち……
その日クセルクセス王は、ユダヤ人の敵ハマンの家を王妃エステルに与えた。エステルはモルデカイとの間柄を知らせたので、モルデカイは王の前に出た。 王はハマンから取り返した指輪をモルデカイに与え、エステルは彼をハマンの家の管理人とした。
エステルは、再び王の前に申し出て、その足もとにひれ伏し、涙を流し、憐れみを乞い、アガグ人ハマンの悪事、すなわち、ユダヤ人に対して彼がたくらんだことを無効にしていただくことを願った。 王が金の笏を差し伸べたので、エステルは身を起こし、王の前に立って、 言った。「もしお心に適い、特別の御配慮をいただき、また王にも適切なことと思われ、私にも御目をかけていただけますなら、アガグ人ハメダタの子ハマンの考え出した文書の取り消しを書かせていただきとうございます。ハマンは国中のユダヤ人を皆殺しにしようとしてあの文書を作りました。 私は自分の民族にふりかかる不幸を見るに……
その夜、王は眠れないので、宮廷日誌を持って来させ、読み上げさせた。 そこには、王の私室の番人である二人の宦官、ビグタンとテレシュが王を倒そうと謀り、これをモルデカイが知らせたという記録があった。 そこで王は言った。「このために、どのような栄誉と称賛をモルデカイは受けたのか。」そばに仕える侍従たちは答えた。「何も受けませんでした。」 王は言った。「庭に誰がいるのか。」ハマンが王宮の外庭に来ていた。準備した柱にモルデカイをつるすことを、王に進言するためである。 侍従たちが、「ハマンが庭に来ています」と言うと、王は、「ここへ通せ」と言った。 ハマンが進み出ると、王は、「王が栄誉を与えることを望む者には、何をすればよいのだろうか」と尋ねた。ハマンは、王が栄誉を与えることを望む者は自分以外にあるまいと心に思ったので、 王にこう言った。「王が栄誉を与えることをお望みでしたら、 王のお召しになる服を持……
女官と宦官が来て、このことを王妃エステルに告げたので、彼女は非常に驚き、粗布を脱がせようとしてモルデカイに衣服を届けた。しかし、モルデカイはそれを受け取ろうとしなかった。 そこでエステルはハタクを呼んでモルデカイのもとに遣わし、何事があったのか、なぜこのようなことをするのかを知ろうとした。ハタクは王に仕える宦官で、王妃のもとに遣わされて彼女に仕えていた。 ハタクは王宮の門の前の広場にいるモルデカイのもとに行った。 モルデカイは事の一部始終、すなわちユダヤ人を絶滅して銀貨を国庫に払い込む、とハマンが言ったことについて詳しく語った。 彼はスサで公示されたユダヤ人絶滅の触れ書きの写しを託し、これをエステルに見せて説明するように頼んだ。同時に、彼女自身が王のもとに行って、自分の民族のために寛大な処置を求め、嘆願するように伝言させた。 ハタクは戻ってモルデカイの言葉をエステルに伝えた。 エステルは……
クセルクセス王の治世の第十二年の第一の月、すなわちニサンの月に、ハマンは自分の前でプルと呼ばれるくじを投げさせた。次から次へと日が続き、次から次へと月が動く中で、第十二の月すなわちアダルの月がくじに当たった。
ハマンはクセルクセス王に言った。「お国のどの州にも、一つの独特な民族がおります。諸民族の間に分散して住み、彼らはどの民族のものとも異なる独自の法律を有し、王の法律には従いません。そのままにしておくわけにはまいりません。 もし御意にかないますなら、彼らの根絶を旨とする勅書を作りましょう。わたしは銀貨一万キカルを官吏たちに支払い、国庫に納めるようにいたします。」 王は指輪をはずし、ユダヤ人の迫害者、アガグ人ハメダタの子ハマンに渡して、 言った。「銀貨はお前に任せる。その民族はお前が思うようにしてよい。」
こうして第一の月の十三日に、王の書記官が召集され、総督、各州の長官、各民族……