イエスはそこをたち、ティルスとシドンの地方に行かれた。 すると、この地に生まれたカナンの女が出て来て、「主よ、ダビデの子よ、わたしを憐れんでください。娘が悪霊にひどく苦しめられています」と叫んだ。 しかし、イエスは何もお答えにならなかった。そこで、弟子たちが近寄って来て願った。「この女を追い払ってください。叫びながらついて来ますので。」 イエスは、「わたしは、イスラエルの家の失われた羊のところにしか遣わされていない」とお答えになった。 しかし、女は来て、イエスの前にひれ伏し、「主よ、どうかお助けください」と言った。 イエスが、「子供たちのパンを取って小犬にやってはいけない」とお答えになると、 女は言った。「主よ、ごもっともです。しかし、小犬も主人の食卓から落ちるパン屑はいただくのです。」 そこで、イエスはお答えになった。「婦人よ、あなたの信仰は立派だ。あなたの願いどおりになるように。」そ……
実を結ばない暗闇の業に加わらないで、むしろ、それを明るみに出しなさい。 彼らがひそかに行っているのは、口にするのも恥ずかしいことなのです。 しかし、すべてのものは光にさらされて、明らかにされます。 明らかにされるものはみな、光となるのです。それで、こう言われています。
「眠りについている者、起きよ。
死者の中から立ち上がれ。
そうすれば、キリストはあなたを照らされる。」
愚かな者としてではなく、賢い者として、細かく気を配って歩みなさい。 時をよく用いなさい。今は悪い時代なのです。 だから、無分別な者とならず、主の御心が何であるかを悟りなさい。 酒に酔いしれてはなりません。それは身を持ち崩すもとです。むしろ、霊に満たされ、 詩編と賛歌と霊的な歌によって語り合い、主に向かって心からほめ歌いなさい。 そして、いつも、あらゆることについて、わたしたちの主イエス・キリストの名により、父で……
そのころ、ファリサイ派の人々と律法学者たちが、エルサレムからイエスのもとへ来て言った。 「なぜ、あなたの弟子たちは、昔の人の言い伝えを破るのですか。彼らは食事の前に手を洗いません。」 そこで、イエスはお答えになった。「なぜ、あなたたちも自分の言い伝えのために、神の掟を破っているのか。 神は、『父と母を敬え』と言い、『父または母をののしる者は死刑に処せられるべきである』とも言っておられる。 それなのに、あなたたちは言っている。『父または母に向かって、「あなたに差し上げるべきものは、神への供え物にする」と言う者は、 父を敬わなくてもよい』と。こうして、あなたたちは、自分の言い伝えのために神の言葉を無にしている。 偽善者たちよ、イザヤは、あなたたちのことを見事に預言したものだ。
『この民は口先ではわたしを敬うが、
その心はわたしから遠く離れている。
人間の戒めを教えとして教え、
むなし……
それからすぐ、イエスは弟子たちを強いて舟に乗せ、向こう岸へ先に行かせ、その間に群衆を解散させられた。 群衆を解散させてから、祈るためにひとり山にお登りになった。夕方になっても、ただひとりそこにおられた。 ところが、舟は既に陸から何スタディオンか離れており、逆風のために波に悩まされていた。 夜が明けるころ、イエスは湖の上を歩いて弟子たちのところに行かれた。 弟子たちは、イエスが湖上を歩いておられるのを見て、「幽霊だ」と言っておびえ、恐怖のあまり叫び声をあげた。 イエスはすぐ彼らに話しかけられた。「安心しなさい。わたしだ。恐れることはない。」 すると、ペトロが答えた。「主よ、あなたでしたら、わたしに命令して、水の上を歩いてそちらに行かせてください。」 イエスが「来なさい」と言われたので、ペトロは舟から降りて水の上を歩き、イエスの方へ進んだ。 しかし、強い風に気がついて怖くなり、沈みかけたので……
イエスはこれを聞くと、舟に乗ってそこを去り、ひとり人里離れた所に退かれた。しかし、群衆はそのことを聞き、方々の町から歩いて後を追った。 イエスは舟から上がり、大勢の群衆を見て深く憐れみ、その中の病人をいやされた。 夕暮れになったので、弟子たちがイエスのそばに来て言った。「ここは人里離れた所で、もう時間もたちました。群衆を解散させてください。そうすれば、自分で村へ食べ物を買いに行くでしょう。」 イエスは言われた。「行かせることはない。あなたがたが彼らに食べる物を与えなさい。」 弟子たちは言った。「ここにはパン五つと魚二匹しかありません。」 イエスは、「それをここに持って来なさい」と言い、 群衆には草の上に座るようにお命じになった。そして、五つのパンと二匹の魚を取り、天を仰いで賛美の祈りを唱え、パンを裂いて弟子たちにお渡しになった。弟子たちはそのパンを群衆に与えた。 すべての人が食べて満腹した……
そのころ、領主ヘロデはイエスの評判を聞き、 家来たちにこう言った。「あれは洗礼者ヨハネだ。死者の中から生き返ったのだ。だから、奇跡を行う力が彼に働いている。」 実はヘロデは、自分の兄弟フィリポの妻ヘロディアのことでヨハネを捕らえて縛り、牢に入れていた。 ヨハネが、「あの女と結婚することは律法で許されていない」とヘロデに言ったからである。 ヘロデはヨハネを殺そうと思っていたが、民衆を恐れた。人々がヨハネを預言者と思っていたからである。 ところが、ヘロデの誕生日にヘロディアの娘が、皆の前で踊りをおどり、ヘロデを喜ばせた。 それで彼は娘に、「願うものは何でもやろう」と誓って約束した。 すると、娘は母親に唆されて、「洗礼者ヨハネの首を盆に載せて、この場でください」と言った。 王は心を痛めたが、誓ったことではあるし、また客の手前、それを与えるように命じ、 人を遣わして、牢の中でヨハネの首をはねさせた……
「天の国は次のようにたとえられる。畑に宝が隠されている。見つけた人は、そのまま隠しておき、喜びながら帰り、持ち物をすっかり売り払って、その畑を買う。
また、天の国は次のようにたとえられる。商人が良い真珠を探している。 高価な真珠を一つ見つけると、出かけて行って持ち物をすっかり売り払い、それを買う。
また、天の国は次のようにたとえられる。網が湖に投げ降ろされ、いろいろな魚を集める。 網がいっぱいになると、人々は岸に引き上げ、座って、良いものは器に入れ、悪いものは投げ捨てる。 世の終わりにもそうなる。天使たちが来て、正しい人々の中にいる悪い者どもをより分け、 燃え盛る炉の中に投げ込むのである。悪い者どもは、そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。」
「あなたがたは、これらのことがみな分かったか。」弟子たちは、「分かりました」と言った。 そこで、イエスは言われた。「だから、天の国のこ……
イエスはこれらのことをみな、たとえを用いて群衆に語られ、たとえを用いないでは何も語られなかった。 それは、預言者を通して言われていたことが実現するためであった。
「わたしは口を開いてたとえを用い、
天地創造の時から隠されていたことを告げる。」
それから、イエスは群衆を後に残して家にお入りになった。すると、弟子たちがそばに寄って来て、「畑の毒麦のたとえを説明してください」と言った。 イエスはお答えになった。「良い種を蒔く者は人の子、 畑は世界、良い種は御国の子ら、毒麦は悪い者の子らである。 毒麦を蒔いた敵は悪魔、刈り入れは世の終わりのことで、刈り入れる者は天使たちである。 だから、毒麦が集められて火で焼かれるように、世の終わりにもそうなるのだ。 人の子は天使たちを遣わし、つまずきとなるものすべてと不法を行う者どもを自分の国から集めさせ、 燃え盛る炉の中に投げ込ませるのである。彼……
それとも、兄弟たち、わたしは律法を知っている人々に話しているのですが、律法とは、人を生きている間だけ支配するものであることを知らないのですか。 結婚した女は、夫の生存中は律法によって夫に結ばれているが、夫が死ねば、自分を夫に結び付けていた律法から解放されるのです。 従って、夫の生存中、他の男と一緒になれば、姦通の女と言われますが、夫が死ねば、この律法から自由なので、他の男と一緒になっても姦通の女とはなりません。 ところで、兄弟たち、あなたがたも、キリストの体に結ばれて、律法に対しては死んだ者となっています。それは、あなたがたが、他の方、つまり、死者の中から復活させられた方のものとなり、こうして、わたしたちが神に対して実を結ぶようになるためなのです。 わたしたちが肉に従って生きている間は、罪へ誘う欲情が律法によって五体の中に働き、死に至る実を結んでいました。 しかし今は、わたしたちは、自分……
イエスは、別のたとえを持ち出して言われた。「天の国は次のようにたとえられる。ある人が良い種を畑に蒔いた。 人々が眠っている間に、敵が来て、麦の中に毒麦を蒔いて行った。 芽が出て、実ってみると、毒麦も現れた。 僕たちが主人のところに来て言った。『だんなさま、畑には良い種をお蒔きになったではありませんか。どこから毒麦が入ったのでしょう。』 主人は、『敵の仕業だ』と言った。そこで、僕たちが、『では、行って抜き集めておきましょうか』と言うと、 主人は言った。『いや、毒麦を集めるとき、麦まで一緒に抜くかもしれない。 刈り入れまで、両方とも育つままにしておきなさい。刈り入れの時、「まず毒麦を集め、焼くために束にし、麦の方は集めて倉に入れなさい」と、刈り取る者に言いつけよう。』」
イエスは、別のたとえを持ち出して、彼らに言われた。「天の国はからし種に似ている。人がこれを取って畑に蒔けば、 どん……