▼「今、私たちの教会は過渡期にあり、この一年二年をいかに過ごすかに五〇年後、百年後の未来がかかっています」。そんな話を教会総会で、昨年も一昨年もした。会員の高齢化、建物の老朽化、新来会者の激減、間違いなく正念場にある。▼ホームページ開設準備のために教会の沿革をまとめている所に、役員の一人が二〇年昔の『信徒の友』を持ってきた。短期間に四〇名の葬儀が行われたこと、教会創立時の会員が高齢となり、九〇才を超えた人もあるという説明文の後に、前々任牧師のこんな言葉が載っていた。「その意味では、いま大きな節目にあることは確かです。これから次の後継者を育てる、これが私たちの教会の大きな課題です」。▼多分、何時でも、何所でも、教会は節目にあり、正念場であり、危機であり、チャンスなのだろう。何時の時代にあっても、教会の一番大きな課題は、人を育てることなのだろう。▼二〇年昔の写真に、現在も礼拝を守っている人の顔は殆どない。二〇年三〇年先の見通しもまして保障も教会にはない。しかし、不思議に、花は咲き実がなる。種を蒔き続けている限り。
厳しい数字にも希望を捨てずに
具体的なデータを基に展望を見出すべく
三月六~七日、阪神淡路大震災から一〇年、会堂再建なった神戸栄光教会を会場に、二〇〇五年度宣教方策会議が開催された。二年前は宣教理解の違いから主題をしぼり切れず開催できなかったので、四年ぶりの開催となった。今会議自体の評価についても見解は分かれるだろうが、一人の信徒参加者から「宣教方策会議の名にふさわしい会合であり、実のあるものだった」という感想を聞いた。とにかく、同じテーブルで、共に学び、話し合った。その意義は大きい。
・開会礼拝 「神義論を超えて」
山北宣久教団総会議長はエレミヤ書一二章一~六節による説教の冒頭に、「その歴史の半分以上が所謂紛争に費やされ『教団には宣教も方策もない』と言われる時、今回の会議の意味はそれなりに重い。教団の体力が落ちている中、体力測定し、改善・回復の契機とされたい」と辛辣とも聞こえる表現で語った。現状分析も釈義も濃厚な内容であり、以下に概要・要点ではなく触りを記す。
世の現実と向かい合う時に、「何故悪人が栄え善人が苦しむのか」という神義論的問いが生まれる。この箇所では事はより複雑で、神に逆らう者も彼らなりに神を信じている。口先では神よ神よという人がエレミヤを苦しめている。神が主導権を握った信仰と自分が主導権を持ったままの信仰と、神に従うにも二種類がある。 ルターは言った。「偶像礼拝とはキリスト以外のものを拝むことではない。自己流に都合良くキリストを礼拝することだ」。
矛盾・不条理も主の十字架の光の中で受け止める以外にはない。主は神義論にまさる矛盾・不条理の中に身を置きながら「父よ彼らを赦して下さい」と息も絶えだえに執り成しの祈りをされ、私たちの救いとなられた。この執り成し・裏打ちがあればこそ、私たちは厳しい現実に向けて宣教の課題を共に担うべく出かけていける。
エレミヤはどんなに苦しくとも虚無的懐疑に陥ることはなかった。歴史の中に働き給う神を信じたからであり、イスラエルという共同体から離れた個としての神を問題にしなかったからである。私たちも、神の臨在に励まされて共通の使命のために励み行きたい。
・教勢から見た教団の伝道の歴史
戒能信生前宣教研究所資料室長は、「教勢から見た日本基督教団の伝道の歴史」と題して発題した。
「情勢の分析は、一見客観的な数字を扱っているようでありながら、どうしても分析者の解釈が入り込む、そのことを自覚し、出来る限り実際的なデータの提供をしたい」と最初に述べた通りに、教団の歴史に刻まれた大きな出来事の前後で数字はどう動いたのかを鮮やかに描き出した。
戦前と戦後の教勢比較では、大規模な教団離脱等の複雑な要因が絡み合っており、数値の精度の問題、用語概念の多様さもあり、一面的に見ては読み誤ることを教えられた。にも拘わらず、数字は雄弁に語る。成程と納得する統計もあったが、戦時四二年の教勢のあまりにも意外な堅調、「教団紛争によって教勢は減少したか?」という項目で、七三年以降礼拝出席数がむしろ上昇したことなど、漠然と思い込んでいたことと実際の数値の違いに驚かされた。この点についての当時の社会情勢に基づく分析は興味深い内容であった。
また、戦前に比較すれば千八百中千の教会が解散または離脱し、九百の教会は戦後に立てられたという表面では見えない数字が示された。
更に、「戦後の教団の伝道の進展(六八年機構改革まで)」、「新規開拓伝道(含・再建伝道)」の項では、様々な方式による伝道によって生み出された教会の推移を数字で追い、教勢の増減に留まらない伝道方策の本質に迫った。
また、機構改正によって宣教の主体は教区に移ったが、教区は互助体制の構築など既存の教会の維持に力を注ぐこととなり、教団としての伝道プロジェクトは策定されなくなり、例えば大都市郊外への積極的な新規開拓伝道などは鈍化したと指摘した。
多岐にわたり各種の統計一覧表が用意されており、その項目を紹介するにも紙数が足りない。会員の年齢別構成や受洗者数の推移と、その数字が物語るものについて、受洗者の高齢化は、見方を変えれば、教会の成熟を表しているとも言えるという戒能氏の見解も興味深い。
また、教区別の統計から、地方教区が人口減少の中で健闘しているのに比して、都会教区は人口増程には教会数・人数は増えておらず、教団全体の教勢増を図るなら都市郊外への伝道こそ急務であると分析した。
■宣教委員長基調報告
開会礼拝の後、岩﨑隆教団宣教委員長から基調報告がなされ、副題に上げられた通りに(宣教方策会議開催の経緯について)、詳細に述べられた。
02年に開催された前回会議を、「合同教会の歴史の部分については、主題講演の講演者や発題者たちによって良い学びが出来た。一方、信仰告白を巡っての議論からは、光明は感じ取ることが出来なかった。全体的な結論として、教団の中にはさまざまな考え方があるが、にも拘わらず、それぞれに与えられた課題を持って真剣に宣教の場で働き、生きているのが分かった」と総括した上で、「時間が経過し教会を取り巻く社会の状況も変化しているので、敗戦後六〇年とプロテスタント伝道開始一五〇年を間近に控えたこの年に」と今回の開催理由について説明した。
毎週水曜日は聖書研究・祈祷会が開かれる。夜七時半からであり、この時間に出席するのは困難な方が多い。おのずと出席者が少ない。開会五分前、連れ合いと共に開会を待っている。この時点ではまだ出席者がなかった。もしかしたら、どなたも来られないかな、ふとそんな思いがよぎる。
昔、地方の教会で牧会していたころ、やはり水曜日の集会が続けられていた。冬ともなると寒さがこたえる地方であり、いつもは四、五名の出席であるが、寒さの厳しいときは牧師夫婦二人の集会のことがある。夫婦で集会を開くとき、困るのはどのような話し言葉を使うかである。丁寧な言葉でもなく、普通の言葉でもない。気を使いながらの集会が終わるころ、決まって末の子がチョコチョコとやってくる。両親だけの集会をじっと見つめ、「今日は、お客さん、来ないねえ」と言うのであった。子どもなりに出席者を期待しているのである。「今日は寒いし、御用のある方もあるからね」と言い訳を言う。
宣教方策会議が三月六~七日に開催された。主題「二一世紀を迎えた教会の現状と展望」のもとに、発題があり協議が重ねられた。統計的に減少を続ける日本基督教団であるが、各教会は祈りつつ宣教している。希望をもって明日の教会を担うことを示された。
開会時間となった。その時、玄関の扉が開く音がした。思わず二人は顔を見合す。互いの顔に安堵を読み取っているかのように。
(教団総会書記 鈴木伸治)
骨太信仰者ここにあり
記章職人と言って何の仕事か解る人は少ないかもしれない。バッジ職人の方がよく解るだろうか。記章の蝋付け職人だった父の縁で、記章屋で修行することになった。生まれた時からバッジとの付き合いがあった。
教会との出会いも小さい時から。自宅の前が浅草教会だった。教会付属小百合幼稚園に入園。そのまま日曜学校の生徒として成長。中学生時代「日曜学校」ではなく「教会」を意識するようになった。自分の罪を誰が救うことができるのか。谷底へ落ちるような、そんな状態から自分を救ってくれるのはイエス様しかいない。そんな気持ちで洗礼を受けた。しかし、赦して頂いても次から次へと罪を犯す自分がいた。とても苦しかった。自分が罪人であると気付くのも洗礼の意味なのだと納得するまでにずいぶん時間が掛かったという。しかし、その間教会との関わりは密接になっていった。一九六六年、夫人の邦子さんと結婚。クリスチャンホームを形成した。
「ものづくり」信仰者として「何かできないか」との思いから「キリスト・メダル・センター」を設立。皆勤賞・精勤賞のバッジやメダルを手懸けるようになる。生まれた時から身近だった職と信仰。それが自然に自分の中で結びついていた。
もちろん順調なことばかりではない。勝負を賭けた仕事が中止になり、詐欺に遭い、負債を抱えて倒産した事もある。しかし、いつも助けの手が差し伸べられた。その時の気持ちを「モーセが海を分けて、連れて行ってくれたみたいです。絶体絶命なのに助かった。神様にしかできないことだと思う」と語る。
今は子どもの教会のスタッフとして、教会役員として奉仕する日々だ。「主を信じることがどんなに平安を与え、心強いものか。教会に繋がることがどれ程暖かいことか。教会に来る人が今何を体験しているのか」これからも、一人でも多くの人に伝えたいと願っている。
★日本基督教団年鑑二〇〇六年版の追録を発行いたしました。
教団年鑑二〇〇六年版において、ミスが多少あったことについてお詫び申し上げます。そこで当年鑑の正誤表を内容とする追録を、年鑑をご購入された方々に差し上げます。年鑑を購入された書店、もしくは教団事務局総務部年鑑係(☎03-3202-0541)に直接お申し込みください。
なお、統計一覧の一部訂正が追録から漏れてしまいましたので、ここに記します。
▼神奈川教区経常収入計=一、〇七五、九九九。同平均=一〇、一五一。
▼全国経常収入計=一二、九〇二、〇〇八。同平均=七、八三四。
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