103歳の新生
本堂ゑつさんは、一九〇四年八月十五日生まれの一〇三歳。八人の子どもを育て上げた。そして、昨年夏から六番目の本堂正さんの家に越して来ている。
沼津に来てからは、正さん夫婦に連れられて、毎週欠かさず礼拝を守り、二階にある礼拝堂へも階段を上り下りする元気なおばあちゃんである。
四月に同世代(?)の集まりであるシメオン会で牧師が説教したところ、説教が良く分かると言う。説教が分かるという声に牧師は勇気百倍、初心者の会に誘った。すると、そこでの入門書の読み合わせでは、周囲の者が驚かされた。若いだれよりも大きな声で、漢字も間違うことなく読み切ったからである。更に、教会生活入門書を一冊手渡すと、すぐに読破して、逆に牧師に質問したいことがあるという意欲的な反応だった。
遂に、本人に受洗の気持ちを確かめ、「日本基督教団信仰告白」を学んで受洗の準備をし、試問会でもイエス・キリストを信じる告白をされた。
洗礼式は、八月十九日の礼拝で執り行われた。さすがに緊張は隠せなかったが、誓約の「あなたは主イエス・キリストの救いのしるしであるバプテスマを受けることを心から願いますか」との問いに、駆けつけた子供たちと会衆一同の耳に届く大きな声で「はい、願います」との返事があった。ゑつさんは、三重県の生まれ。お国訛りが入った「願います」との誓約に心からの告白であることを感じさせられた。一〇三歳で人生を新しくされた沼津教会新星誕生の瞬間である。
ゑつさんは、幼い頃、なぜか「見えざる食卓の客、イエス・キリスト」という言葉を聞いたことを覚えていると言う。その言葉でキリストに出会い、一〇三歳でキリストに捕まり、新しい命に生きる者とされた。洗礼式が終わったとき、「最早われ生くるにあらず、キリスト我が内に在りて生くるなり」との御言葉が聞こえてくるようだった。
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●新刊から
『真夜中に戸をたたく-キング牧師説教集』C・カーソン、P・ホロラン=編、梶原寿=訳 人間本来の人権・存在回復のために全身全霊で闘ったキング牧師。真夜中に悲しみが生まれるにもかかわらず、朝には喜びが訪れることを力強く告げた標題の説教をはじめ、今も全く古びることなく、臨場感にあふれ、聴く者の魂を揺さぶる十一篇の説教を厳選して収録。(四六判・二九〇頁・二七三〇円)
『カール・バルト 一日一章』K・バルト=著、R・グルーノー=編、小塩節・小鎚千代=訳 神学者カール・バルトの著作、講義、説教など、膨大な言葉を丹念に掘り起こし、教会暦に従って日々の黙想のために再編集した労作を、二人のドイツ文学者が精魂を込めて新たに訳出。バルト神学に親しい読者から、初めて出会う人まで、バルトとともに祈る三六五日。(A5判・七二二頁・特価八七一五円〔〇八年一月末迄〕通常定価九二四〇円)
『生の冒険』ポール・トゥルニエ=著、久米あつみ=訳 人生のすべては冒険である。幼時の遊びや発見、青年期の進路や人間関係の選択、各時代に固有の冒険がある。隠退さえも新しい冒険の始まりだ。散乱から集中へ、偶発から永続へ。神の手に導かれる数々の冒険を通して生の全体的意味を問う、著者円熟期の代表作。(四六判・三三〇頁・二九四〇円)
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『新・教育基本法を考える』深谷松男=著 教育基本法は「改正」によってどのように変わったのか。大切な教育の理念を保持し、真に豊かな教育を実現するために、いま知っておくべきこととは。改正前後の比較表も掲載。(A5判・一〇四頁・九九八円)
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『私のキリスト教入門-使徒信条による』隅谷三喜男=著(四六判・一四四頁・一四七〇円) ※価格税込
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人生を変える出会い
ACEF事務局 木部 紫
「バングラデシュに寺子屋を贈ろう」を合言葉に、私たちアジアキリスト教教育基金(ACEF)が活動を開始したのは一九九〇年。翌九一年の夏には第一回スタディーツアーを行い、二五名の参加者をバングラデシュへと送り出しました。以来、春と夏、年二回のスタディーツアーは今年の夏で三三回を数え、参加者は延べ五百名を越えました。
スタディーツアー参加者の多くは学生で、アジアの国は初めて、中には海外へ出るのも初めてという若い人たちです。その彼らが、春や夏の長期休みに、英語習得のための短期ホームステイやリゾート地への旅行を選ばず、あえてバングラデシュへと出かけていくのは、それぞれ理由があるのでしょう。ひとつ確かなことは、みなが何かを求めている、ということです。
スタディーツアーで目にするバングラデシュの現実は、参加者の心を揺さぶります。都市部のスラム、貧しい農村、そして物乞いをする少年の姿に動揺します。一方、圧倒的な自然の美しさに息を呑み、そこで営まれている暮らしの中に、また現地の人々との暖かい交流の中に、豊かな「生」の彩を見出します。これらすべては、参加者にとって唯一無二の出会いであり、アジアのまだ見ぬ外国の一つであったバングラデシュが、生涯の友としてたち現れる瞬間なのです。けれどもスタディーツアーには、もう一つの本質的な出会いが準備されています。それはキリスト教との出会いです。
ツアー中は毎日、朝と夜に祈りの時をもちます。ツアー参加者全員が、あらかじめ聖書の箇所を割り振られます。そして毎回の担当者を中心に、メンバー全員で聖書の言葉を学ぶのです。今まで教会に足を向けたことなどなく、スタディーツアーに参加するため、やむなく聖書を購入したという若い人たちが、バングラデシュで初めて神と出会う。それこそがACEFスタディーツアーの、他の同様のツアーとは徹底的に異なる、重要な側面なのです。
バングラデシュとの出会いの中では、目の前の現実の一つ一つが衝撃です。何かを求めてきたはずなのに、そこには「答え」はありません。私が今、目にしているものは何なのか。求める気持ちがますます強くなるとき、神の言葉は自然と心の奥深くにまで届くのかもしれません。帰国後に教会に通うようになったという参加者の話を聞くと、ACEFには、バングラデシュへの教育支援にとどまらず、日本の若者たちのために果たすべき役割が与えられていることを、改めて感じます。
ただ、時には残念なこともあります。スタディーツアーの興奮も冷めやらぬまま、勇気を振り絞って教会へと出かけていった学生が、一度きりで教会から足が遠のいてしまうことも少なくないのです。自分のバングラデシュでの体験を、教会で多くの人と分かち合いたいのに、理解してくれる人と出会えなかった、というのです。
ACEFの活動は、これまでも多くの教会と牧師、教会員の方々に支えられてきました。団体会員として支援してくださる教会も多数ありますし、クリスマス献金やバザーでのバングラデシュ手工芸品の販売などを通じての支援もしていただいています。
ACEFがキリスト教主義に基づき、その役割を十分に果たしていくために、より多くの日本の若者に意義ある「出会い」を提供するために、いっそうのご理解とご支援をお願いしたいと思います。
【ACEF連絡先】
電話(ファクス兼用) 03-3208-1925
e-mail : acef@acef
4635号1面報告者氏名「野村忠則氏」を「野村忠規氏」にお詫びして訂正いたします。
地域社会と共に
柴田もゆる
西中国教区が長年取り組んでいる働きの一つに社会福祉法人西中国キリスト教社会事業団というのがある。
メアリ・ジョーンズ宣教師の働きに端を発し、地域の部落差別や在日韓国・朝鮮人の方々の課題を担ってきた「広島キリスト教社会館」(一九五六年設立/子どものためのグループ活動、保育所、高齢者デイサービスセンター)、「戦責告白」の具体化として第15回教団総会(一九六八年)決議に基づいて一九七一年に設立された「清鈴園」とそこから生まれた「廿日市高齢者ケアセンター」(一九九四年設立/高齢者福祉全般)、障害者の自立支援を願って一九七二年に岩国市に建設された「亀の里アパート」、益田教会の証しに始まる「ねむの家・湖水園」(一九九八年設立、ケアハウス、デイサービスセンター)が事業団の働きとして営まれている。
設立の経緯や働きの内容はそれぞれ異なっているが、信仰に根ざしつつ地域に生きる人々と共に歩もうとする姿勢は共通している。そして法的には社会福祉法人という別組織ではあるが、西中国教区の働きと一体のものとして位置づけ取り組んできているのである。
近年の社会情勢の変容の中で、とりわけ介護保険事業にあたる部分は厳しい運営を強いられているが、主から与えられた志を保って歩み続けたいと願っている。
これらのはたらきを全国の諸教会において祈りに覚え、ご支援くだされば幸いに思う。
(西中国教区総会議長)
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