伝道を推し進めるために
3月31日、復活日夕刻、伝道推進室発足記念大会が銀座教会にて開催された。第1部記念礼拝は銀座教会の主日夕礼拝に合流して守られ、第2部に記念講演が行われた。
記念礼拝には、説教者として小島誠志氏(久万 教会牧師)が御言葉を取り次いだ。「夜明けの岸辺」と題し、ヨハネ福音書21章1〜14節をテキストとした。
一晩中、全く収穫がなかった弟子の徒労、岸辺に立つ者からの命令に「結果はわかりきっているとの思いで、仕方なしに網を打った」弟子たちのあきらめから語りはじめられた。
夜が明けて、岸辺に立つ者によって、決定的な場面転換が起こっていることにまだ弟子たちは気付いていない。しかし、新しいときを既に迎え、「復活の主が弟子たちの働きに手を添え、弟子たちの働きの意味が決定的に変わっている」。弟子たちが主に気付くときは、「自分の不信仰を思い知らされ、伝道する者が経験する、祝福によって打ちのめされる経験でもある」。
夜明けの岸辺で網を打っているとき、何をしているのか、実りのないかのような徒労を覚える。「しかし、収穫を引き上げることができないのである。この収穫を主のもとで見せていただくときがある」。引き上げられないほどの大漁に網は破れない。「そうであるなら、労苦や祈りは決して無駄にはならない。網は破れず、労苦の実りは決して失われない。主の日に向けて気を落とさず、その日があるから弛まず網を打ち続けたい」。終わりの日、主の招きにより、わたしたちは大きな収穫の祝いの宴に与ることを忘れてはならない、と結んだ。
復活の主によってはじめて眺め透かすことのできる終わりの日の大きな収穫の希望を語る説教に、一同、伝道への志を新たに得、励ましを受けた。
記念講演では、この3月で東京神学大学学長の任期を終える近藤勝彦氏が「救われた命を伝道のために」と題して約一時間半の講演を行なった。
伝道推進室設置の意義、発足記念を復活日に行なう意義から語られた。復活の主の大伝道命令に従い「伝道することは、日本基督教団として必須のことであり、日本、世界伝道のため専念してして働く機関が必要である」。「伝道推進室が負うべき使命は、教団が伝道する教団として前進するために具体的かつ実践的に仕えること」とした。
諸教会が伝道を推進するための具体的、実践的支援は、「本来、『室』という一つの部屋の課題や責任ではなく、教団全体の根本的性格と行動を規定する統合的な部局」を必要とする。この実現まで伝道推進室の取組みに期待する、とした。
「伝道は、主イエス・キリストにおける決定的な神の救いの業を伝えること、キリストのまわりに神の民が集められ、世の終わりの神の国の到来に備える終末的行為」として、「伝道意識の向上と伝道的体質の強化」を教会に取り戻すことが喫緊の根本的課題である、とした。
伝道意識の向上、伝道的体質の強化のためには特別な工夫は必要とはせず、「教会、キリスト者として、ごく普通の教会生活によって生かされること、神の恵みに豊かに生かされること」が必要で、「ごく当然の礼拝を中心とする教会生活の中で、福音の前進と世の人々の救いのために、ごく当然の祈りを真実になすこと」とした。その中で、「他の人の信仰と救いのために用いられる喜びを経験する」。「『救われた命』と『伝道のため』は切り離すことができず、伝道は救いに至り、救いは伝道に至る。伝道に共に与りながら、救われた命の喜びをいっそう深く、確かにされる」とした。
「直接伝道してもよいし、直接伝道する人を助けて間接的に伝道してもよい。伝道のため祈っている人が一人いたら、神はその人の祈りを必ずお用いになる。一人の人が祈りつつ立つなら、いかなる世の無関心もその人を押し流すことはできない」。「伝道推進室が現在の伝道の難局を少しでも乗り越えて主の御名をほめたたえることができるよう祈る」と講演を結んだ。
近藤氏にとって学長として最後の講演となった。伝道推進室が為すべきこと、進むべき方向、先にある展望、伝道の意義を大胆に力強く語る講演であった。
大会では、石橋秀雄教団議長(推進室長)が挨拶を、山北宣久氏(青山学院院長)が祝辞を述べた。説教者、小島氏と共に、伝道決議、推進、実質化を押し進めてきた議長、前議長たちが会したことになる。また東京神学大学コーラス部による讃美歌奉唱が献げられた。参加者は約200名であった。
(教団新報編集部報)