正教師受験28名合格、11名不合格
客観性を帯びた具体的な確信を得るために
2012年秋季教師検定試験を9月11日(火)~13日(木)、大阪会場(大阪クリスチャン・センター)において実施した。1日目は学科筆記試験、2日目と3日目は全体会および個人面接試験という日程でそれぞれ行った。
今回の受験志願者総数は71名であった。内訳は補教師14名、正教師56名(大多数は2年半前の春季教師検定試験で合格して補教師としての准允を受け、正教師受験資格を得た)、他教派からの転入1名。
合否の結果は次のとおり。補教師:合格1名、保留2名、継続7名、不合格4名。正教師:合格28名、保留17名、不合格11名。転入(正教師):合格1名。
「保留」とは、学科筆記試験の得点が合格点に少し足りなかった受験者について即不合格とはせず、レポート課題を改めて与えて、後日その提出物に基づいて合否の再判定をすることを決定したケース。最終的な判定結果は第38回教団総会で報告承認される運びとなる。
なお、不合格者の数字には筆記試験欠席(補教師受験者1名、正教師受験者5名)による結果、筆記試験前に審査が終了している課題論文の未提出による結果が含まれている。
東野尚志教師検定委員長は2日目、3日目の全体面接で「講評」を述べ、教憲第9条において「本教団の教師は、神に召され正規の手続きを経て献身したものとする」と規定されていること、それゆえに教師検定試験が「主の召命に応えて日本基督教団の宣教を担い、主の教会に仕える教師を送り出すために、教憲教規に基づき、教師検定規則に則って実施される」という筋道においてなされる(教師検定委員会基本方針)ことを丁寧に説明した。
特に今回は、正教師受験者が多い。教師として奉仕をする中で、日々「召命」を問い続け、「献身」を吟味する歩みを重ねてきた教師たちの、その取り組みの中身が明らかとなる。
本試験は、最先端の知識を問うのではなく、日本の地で伝道者として働いていく上で必要な資質を具えているかを見るために、基本的な知識、神学的な思索力を問う。「主の召命に応える」思いを抽象的で主観的なところに止まらせず、客観性を帯びた具体的な確信へと至らせる大切なきっかけだとも言える。その意味を踏まえて、各受験者に告げられる判定結果を謙遜に受け止めて欲しい。
学科試験の結果について、委員からいくつかの所感が出された。以下はその抜粋である(主に正教師)。
「教憲教規および諸規則・宗教法人法」:例年とは傾向の異なる出題をしたが、基礎をきちんと押さえておれば対処できたはず。日ごろから『諸手続き』にも親しんでおくとよい。「旧約神学」:設問の意図を捉えて的確に解答するには、旧約神学のあらましを知るとともに、新約とのつながりを意識しながら重要概念を押えておくことが必要。良書一冊を聖書と照らし合わせつつ熟読してほしい。「新約神学」:どれも難なく出来てほしかった問題。不十分、あるいは苦し紛れの答案が少なからずあったのは残念。「教会史」:全体的によく出来ていた。ヤマをはった準備ではなく、教会史の全体的な流れ(通史)の中での位置づけを意識した学習を積み重ねてほしい。「組織神学」(論文):特定の神学者の著作に寄りかかった論文がいくつも見られた。教義学の基本を「自分のもの」にする中で、教会形成に活かし支えとする「神学的思索力」の骨格を養ってほしい。
パソコン普及の影響か、手書きによる文章作成力の低下が感じられた。正しい漢字を使って書く努力を意識的にしてほしい。
今回、乳児連れの受験者が安心して授乳できる部屋の用意、全盲(中途失明)の受験者用の試験方法の検討・実施、歩行に困難を抱えている受験者の席の配慮、などを行った。それぞれ混乱なく実施できたと思われる。
全日程を主が守り導いてくださった。感謝である。
(渡部和使報)
2012年秋季・正教師検定試験問題
教憲教規および諸規則・宗教法人法(60分)
次の2題に答えてください。
1.「教憲教規および諸規則」が示す、教団と教区、教区と各個教会・伝道所のあるべき関係について述べてください。
2.あなたが主任担任教師であるA教会に対して、近隣のB教会から合併をしたいという要望を受けました。その際、B教会の権利義務はすべてA教会に所属するものとし、B教会そのものは解散することにします。この要望を受け入れ、両教会が合併に至るまでに為さなければならない必要な手続きを「教憲教規および諸規則」と「宗教法人法」の規定に沿って、両方の教会の発議から宗教法人法上の手続きの完了に至るまでをすべて順序正しく(=時間系列に沿って)述べてください。(A教会もB教会ももともと別の宗教法人であったものとする)
旧約聖書神学(60分)
次の2題に答えてください。
1.旧約聖書における「法」について、述べてください。
2.旧約聖書における「終末論」について、述べてください。
新約聖書神学(60分)
次の2題を新約聖書のテキストを2箇所以上挙げつつ、論じてください。
1.洗礼と救いについて
2.ヨハネによる福音書における「愛」について
教会史(60分)
次の5題のうちから2題を選んで述べてください。
1.古代教会における信条の成立について
2.中世の三本柱のひとつである「ローマ教皇庁」の役割とその意義について
3.ルターの「九十五条提題」をめぐる贖宥券論争について
4.英国におけるピューリタンの特色について
5.日本基督教団の成立について
講 評
秋季試験は、正教師試験の受験者が多くなります。補教師として教会や学校における御言葉の奉仕に専念してきた人たちにとって、主の召しを改めて確認し、聖礼典の執行に仕える信仰と覚悟を問われる大切な時だと言ってよいでしょう。
その意味で、学科試験の準備不足は、主の前に言い訳の立つことであったかどうか、自らに厳しく問うていただきたいと思います。合格も、決して、免許皆伝ではありません。試験対策だけの勉強ではなく、生涯、主の召しに誠実に応えていくための学びの姿勢を整えていただきたいと願います。
面接において、伝道者としての姿勢について、福音の理解とそれを正しく伝える言葉について、厳しく問われた人もあります。召してくださった方の前に謙遜に立ち、悔い改めをもって、献身者としての生活を整えてください。
主の憐れみと祝福をお祈りします。
37総会期教師検定委員長
東野尚志