【4741号】みんなで生きる 日本キリスト教海外医療協力会

支え合いから始まる平和  大江  浩(総主事)

2010年度は、JOCS創立50周年という記念すべき年でした。半世紀にわたる活動が続けられたことを感謝すると共に、50年間、私たちの活動が必要とされる状況が続いたという事実に痛みをも覚えています。公益社団法人として初年度となる今年度は、従来の海外での保健医療協力と同時に、東日本大震災への対応から幕を開けました。JOCSのこれまでの10か月を振り返ってみたいと思います。

東日本大震災被災者支援から

JOCSの被災者支援活動は、私たちの仲間である仙台JOCSが拠点とする東北教区センター/東北教区被災者支援センターへの協力から始まりました。その後釜石に移り、初期段階(~5月末)では避難所での巡回診療や新生釜石教会前の街角保健室の活動を行いました。
第2段階(6月~)はカリタス釜石(カトリック釜石教会)を拠点に、カウンセラーの派遣や看護チームによる仮設住宅や孤立集落の被災者の訪問ケア活動へとシフトし、今も続けています。
私たちの活動は、被災地における“Care(ケア)”と“Cure(治療)”とをつなぐ役割であると言えるかもしれません。

被災地・釜石の様子

私も数回被災地を訪問しましたが、初回はこの世とは思えぬ惨状にただただ言葉を失いました。少し現地の様子をご紹介したいと思います。
新生釜石教会前の赤テントの「街角保健室」は、地元住民が立ち寄り、お茶を飲みながら話をする、そんなオープンカフェでした。あるご婦人が「家は基礎から跡形もなく洗い流された。夫も連れ去られたが、先日見つかった」と。それを聞いていた同じく被災した若者が「見つかっただけ良かったね。うちはまだ家族が2人行方不明のままだ」と。さりげなく交わされるとても重い言葉に、私はただ聴くばかりでした。
その後、何度か孤立集落への看護チームの訪問ケア活動にも同行しました。被災者の方々は口々に震災当日や直後の様子を語って下さり、生々しい様子や凄まじさは聴くたびに胸が押しつぶされそうになりました。
震災から5か月後お連れ合いを自死により失くされた方、心の奥底に気持ちを押し隠して身内にも吐露できない方、仮設住宅に引きこもったままの方、など一人ひとりの「生きる」物語があります。家族の死をDNA鑑定で確認された方、検死に従事された医療者の過酷な現場のお話も伺いました。
死別・喪失体験とトラウマ(心的外傷)に生きる被災者の方々は、「3月11日の午後2時46分」-あの瞬間で時が止まったままです。それは「1月17日の午前5時46分」も同様です。被災者はもちろん、被災は免れたものの負い目を持つ人、生き残った故の罪責感
(Survivors’ Guilt)に苦しむ人、傷ついた被災者の悲しみを聴き自らも傷つく支援者など様々で、それぞれの傷跡は海ほどに深いものです。
被災地は今、長く厳しい冬の寒さと出口の見えない「絶望のトンネル」の只中にあります。抑うつ・アルコール依存・自殺を防ぐための「心のケア」、仮設などでの「孤独死」や支援者の燃え尽き症候群などへの対策も重要です。「よそ者にはできないこと」があるものの、「よそ者にしかできないこともある」と信じて、カリタス釜石の方々との協働を続けていきたいと思います。

海外での医療協力と被災者支援

ここで、JOCSの海外での働きと被災者支援とをつないで考えてみたいと思います。
JOCSは今年度、バングラデシュ・ネパール・パキスタン・タンザニアなどへの医療従事者(ワーカー)派遣と共に、6か国88名の保健医療スタッフへの奨学金支援やバングラデシュでの学校保健教育を行っています。
奇しくも3・11の時、ネパール短期ワーカーの楢戸健次郎医師が日本にいたために仙台の被災地に駆けつけました。楢戸さんは長く北海道での地域医療に従事した後、ネパールでの僻地医療に携わっている家庭医です。また釜石の看護チームの中心メンバーは、やはりネパールで医療奉仕を続ける(ワーカーとしてではないですが)JOCSの会員である山本貞子さんや元ワーカーの柴田恵子さんです。途上国での医療経験が日本の医療過疎地での活動に役立っている一例でしょう。患者を「待つ」のではなく患者のもとへ「赴く」。刻々と変化する事態や多様なニーズに臨機応変に対処する、などです。地域の人々への理解・配慮・感謝も途上国での経験から学んでいることと言えます。
ワーカーを派遣するタンザニアでも、パキスタンでも、ネパールでも、バングラデシュでも途上国における医療事情は極めて乏しく、人もモノもおカネも何もかもが困窮の状態にあります。電気やガス・水道など基本的なインフラの整わぬ上に、過酷な自然環境や政情不安などの問題にも直面します。「救えるはずの命が救えない」という実に葛藤に満ちた現場がそこにあります。祈りつつ、微かな希望を信じて人々の命と向き合う、人々の傍らに居続ける、それがワーカーや現地スタッフの日常です。
私たちの海外の活動地ではカトリックやキリスト教諸派に加えて、イスラム教やヒンズー教など宗教・宗派を超えた協働が進んでいます。異なる言葉や宗教、文化、生活習慣を持つ地域での活動経験も生かされたのではないでしょうか。それは被災地釜石でもカトリックや仏教とも自然な形で繋がっていった背景にあります。
ちなみにバングラデシュでは、昨年末寒波災害が到来し(日本では報道もされません)、JOCSは、現地団体の要請に基づいて、寒波被害の深刻な貧しい人々の救済のために支援金を送金しました。「過去30年間の世界の自然災害の被害の約9割はアジア地域に集中している」との統計があります。途上国では災害や紛争、そして貧困は「非日常」ではなく「日常」です。
被災地の避難所での出来事です。あるお年寄りが配給された2枚のパンを、「私は1枚しか要らないので」と隣の子どもに渡すと、その子はパンを兄弟で分け合いました。その光景は貧しくとも分かち合うアジアやアフリカの人々の姿と重なりました。そこに豊かさがあります。私たちは途上国の草の根の人々の営みに勇気づけられ、励まされて歩んできたのです。
世界各地で誰かが助けや支えを求めています。遠くのどこかでも、すぐ身近な所でも。私たちはこのような国難の時こそ、海外の苦難にある人々の痛みに寄り添いたいと思います。
「あなたたちができることは私たちにはできません。私たちができることはあなたたちにはできません。でも一緒になれば、神様のために何か美しいことができます」(マザー・テレサ)
私たちは違いを越えて力を合わせ、祈りを合わせたいと思います。「みんなで生きる」ために。そこに不思議な力が働くはずです。
私たちは人々の「静かなるSOS」と向き合いたいと思います。神様からの「声」として。そこから平和への道が始まります。

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