【4736号】荒野の声

▼一人の老婆がトルティーリャを焼いていた。一枚をひっくり返すと奇跡が起きた。そこにはイエス・キリストの顔。それ以来、村は聖地となった…トマス・H・クック『夜 訪ねて来た女』、文春文庫、より。▼最も頻繁に利用する火葬場で、収骨時、「これがノドボトケ様です」、担当の職員が、何だか形が奇妙な小さなお骨を箸で拾い上げ、高く掲げて説明する。「少し形が崩れていますが、こうして合わせて見ますと、仏様が座禅しておられる姿に見えます」。参列の人々が、身を乗り出す。或る人は溜息をつき、手を合わせる者さえいる。しばしば見られる光景だ。▼葬儀で、故人の遺徳と重ねて聖書の証を語り、大方の人の共感を得、少しは感動を引き起こした…と思ったが、「ノドボトケ様」で、ぶち壊しになる。毎度のことだ。▼トルティーリャに浮かんだ顔が、本当にイエス様に似ているかどうか、そも、誰もイエス様の顔を知らないではないか。ほとけ様の座禅姿か、それとも、首を切られる前の罪人か。▼そも喉仏は軟骨だから燃え尽きる筈だと、密かに反発していたが、この頃は、反論を踏まえてか、「実際には第3頸骨の~」、敵もさるもの。▼ところで、件のトルティーリャは、冷凍保存でもしているのだろうか。そも、なんでトルティーリャなのだろうか。

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