台風12号のもたらした湿気が残る9月4日~5日にかけて、山口県宇部市にある宇部緑橋教会を主会場にして、西中国教区・部落解放現場研修会が開催された。
4日は18時から、教区・部落差別問題特別委員会委員長である東岡山治牧師(上下教会)による開会礼拝に続いて、部落解放同盟山口県連合会書記次長・川口泰司さんによる、「山口県の部落問題の現状について」の講演を聞いた。川口さんは、『朝日新聞』夕刊の連載コラム「人脈記・差別を越えて②」(10年1月)でも取り上げられていたので、ご存知の方も多いと思う。
講演では、山口県内の被差別部落の実態から始まり、この5・6年の間に山口県内で起きた差別事件、更には、人権意識の啓発を旨とすべき市町村の公的機関が犯す差別事件について、具体的な事例に則して、詳しく解説された。
その中でも特に、中学生が同じ高校を目指す同級生に対して、入試競争を有利に運ぶために、自らも、そして別の同級生を促しても差別発言を繰り返していた事実には、大きなショックを受けた。差別がもたらす“こころの荒廃”を眼前に突きつけられる思いがした。
翌5日は、会場を宇部市厚南隣保館に移して、山口県人権・同和教育研究協議会委員長である萩商工高校教諭・高林公男さんによる、「山口部落解放史を学んで」と題する講演を聞いた後、隣保館がある上中野地区のフィールドワークを行った。同地区の同和対策事業は、道幅拡充などの区画整理が主で、集合住宅などが無く、同和地区であることの痕跡を留める風景はない。その意味で、昨年の呉でのフィールドワークとは対照的であった。しかし、そうした中にも、根深い差別の実態が今なお続いて存在し、それが若者から高齢者まで蝕んでいる現状を教えられたのが今回の現場研修会であった。参加者は講師・現地案内者を含めて30名と少なかったが、昨年の講師の嶌本敏雄さんも近江八幡から参加、充実した集会を持てたことを感謝したい。参加者一同、解放に向けての新たな歩みを始めるべく、西嶋佳弘牧師(広島牛田教会、委員会書記)の閉会祈祷をもって2日間のプログラムを終えた。 (金澤昌善報)