《釜ヶ崎》
あきらめずに闘う
2019年の5月から6月にかけ、それまでは南海高架下の西成労働福祉センター前の駐車場に向けられていたのに、釜ヶ崎のあいりん総合センター(以下、センターと略す)のシャッター前の団結小屋に向きを変えた監視カメラに、ゴム手袋やスーパーのレジ袋を被せた行為が、「威力業務妨害」の容疑に当たるとして、この行為を実行したとされる4人が逮捕・起訴され裁判が行われていましたが、2022年3月14日の大阪地裁判決は検察の求刑通りの不当判決でした。
この大阪地裁判決を受けて3人が控訴したのですが、2023年6月14日に、大阪高裁で判決の言い渡しがあり、斎藤正人裁判長は、監視カメラにゴム手袋やスーパーのレジ袋を被せた3人の行為は正当防衛にあたるとし、罰金10万〜50万円とした一審・大阪地裁判決を破棄し、控訴した3人全員に無罪を言い渡したのです。
大阪府は裁判の中で、監視カメラの撮影目的を、「放火対策」と一貫して主張していましたが、それがいかに根も葉もないものであったということが、大阪高裁判決では明らかになっていますし、監視カメラの撮影の真の目的は、「2019年4月24日に行われた、センター強制閉鎖に抗議するために建てられた団結小屋に出入りする人たちに委縮効果を与え、立ち退きを余儀なくさせる状況に追い込むことだった疑いが強く、監視カメラの撮影はプライバシーを侵害する違法な行為である」ということが大阪高裁判決では明らかになったのです。
2023年6月28日、大阪高等検察庁は上告の手続きをしなかったため、3人の無罪判決が確定しました。起訴されれば、99.9%が有罪になるという日本の司法の現状において、3人が無罪判決を勝ち取った意義は非常に大きいと言えますが、今回の裁判で起訴された3人があきらめずに闘ったことが、無罪判決を確定させた一番の原因だったと思います。この裁判を支援して来た一人として、気を落とさずに絶えず祈る(行動する)ことを教えているイエスのたとえ話(ルカ福音書18・1〜8)を、裁判支援を通して具体的に実感出来たことも、私にとっては嬉しい出来事でした。
(大谷隆夫報)