シンギュラリティ(技術的特異点)という言葉が使われるようになって久しい。AIの発達が臨界点に達し、人間の知性を超える時点のことだ。それを境にAIは、加速度的に進化を遂げるとの予測もあり、「問題」視もされている。既に、「AIの発達により無くなる職種」をテーマとした言説を、しばしば見聞きする。▼最近開発されたAIは、聖書箇所を示し説教の作成を指示すると、膨大なデータから言葉を繋ぎ合わせ、無難な説教例のようなものを提示する。今、自らが担っている働きが、遠くない将来、取って代わられるかもしれないとの思いがよぎる。▼福音宣教の務めは、単なる知識の伝達ではなく、キリストのからだを立てることであり、赦された罪人として愛に生かされ、人々と共に歩むことだ。それは「愚か者」となることであり、およそAIが担える分野ではない。▼パウロは、自身が主に仕えることで愚か者となっていることを告げ、キリストを信じることで賢い者となっていた教会の人々の姿勢を叱咤して語った。「言葉ではなく力を見せてもらおう」(コリント一4・19)と。このパウロが語る力を示せているのかどうかが「問題」だ。