社会での奉仕者の声に聞く
社会委員会が支援した活動の中から
苦難の時にこそ、優しさに気づく場所を
カフェ里やま 《岩手県》
「これらのいと小さき者の一人になしたるは、即ち我に為したるなり」。
誰もが集まれる場所作りを目指し、奥中山高原駅前通りの空家を借りて始めた甘味処と雑貨の店「気まぐれ工房め〜め亭」。店に来る一人ひとりの話しやつぶやき、悩みにお茶を飲みながら耳を傾ける。人は苦しく淋しい時に誰かが傍にいてくれることで安心し、慰めと勇気をもらえることがある。小さな店の小さな活動。来る方は少なくても、その一人ひとりに寄り添うことを大事にしてきた。
戦後奥中山に開拓団が入植した頃に、団長夫人の祖母が偶然にも同じ場所で開拓婦人会を設立し地域交流に走っていた。開拓団3役が偶然クリスチャンであり、地域の子どもたちの多くが教会に足を運んでいた。そんな歴史を背景に、店には当時子供だったお年寄りもよく集まって来た。店に同伴していた車椅子の母との昔話にも花が咲く。
社協と連携して多世代交流会を企画し自分たちの困っていること等を甘味処メニューを食べながら話し合い、ワークショップを企画し地域交流を行った。しかし、運営はかなり厳しかった。
2020年、「め〜め亭」の意志を受け継ぎ、同じ町内でも限界集落と言われる地で産直併設の店舗に「カフェ里やま」をオープンした。しかし、その直後からコロナの波がすさまじい勢いで増していき、激減する客数のため始めた外販に奔走しても売れ残ることも。結局併設の産直もコロナ禍の影響を受け閉店し、建物が売却されることを機に1年半で退去し、22年3月奥中山の店を夫婦で模様替えし「カフェ里やま」を再出発させた。
障がい者グループホームの方々がふらっと訪れて来る。母子室でくつろぐ幼児とお母さんたち。学校帰りにカフェで宿題をする子供たち。
「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を」。コロナ禍という苦難の時にこそ、本来、人が持っている優しさに気づく場所作りが必要かもしれない。
(戸田睦子報)
多岐にわたる相談に対応
NGO神戸外国人救援ネット 《兵庫県》
救援ネットは、阪神淡路大震災を契機に生まれました。それまでこの地域にいわゆるニューカマー外国人を支援する民間の総合的な窓口はありませんでした。震災当時、外国人ゆえの困難な問題を様々な団体がネットワークを組んで取り組みました。医療費、死亡弔慰金、義援金(日赤)などの問題でした。
2年もすると、相談内容は震災と関係しない諸問題に移りました。在留資格、家族関係、社会保障、住居、医療、労働、DV、教育、国籍、刑事事件などです。本当に多岐にわたる相談が寄せられます。在留資格の中では難民申請の問題も増加しています。
電話と事務室での相談から病院、入管、弁護士事務所への同行も増えています。言語は、日本語、 タガログ語、英語、スペイン語、ポルトガル語、中国語、ベトナム語に対応しています。
幸い救援ネットでは、他の支援団体がうらやむ20名の強力弁護士が対応しています。
昨年度の国籍別相談者は、多い順にフィリピン、中国、ウガンダ、チュニジア、イラン、タイ、ブラジル、ベトナム、ガーナ、モロッコ、ラトビア、韓国、日本、シリア、ナイジェリア、ロシア、セネガル、ペルー、モルドバ、コロンビア、その他となります。神戸的な事情もあるのかもしれませんが、本当に多様です。
コロナ下でも従来どおりの相談に加えて、生活の問題が大きくなっています。他の団体と協力して食料配布にもとりくんでいます。またコロナ下、DVの問題も深刻さが増しているように思います。
救援ネットは発足以来、任意団体として活動を続けてきました。行政との関係も阪神淡路大震災時の共同作業を通して信頼関係が生まれてきました。兵庫県の外国人相談窓口の夜間部分の相談業務を受託したりしています。今年8月、特定非営利活動法人を取得しました。新たな一歩を踏み出すことになりますが、初心を忘れず困難な状況にある外国人によりそう活動を継続していきたいと考えています。引き続きのご支援をよろしくお願いします。
(飛田雄一報)
NGO神戸外国人救援ネット
(〒650-0004兵庫県神戸市中央区中山手通1−28−7カトリック神戸中央教会内、郵便振替01100-2-60701、代表=飛田雄一hida@ksyc.jp)
「あなたは高価で尊い」のみ言葉を聞き
しののめケアハウス 《沖縄県》
私たちの生きている世界は、不条理な世界です。戦争では命を奪われ、傷つけられ、家族と引き離され、恐怖に震える方々がいます。争いは他の地域、家庭でも続き心身に痛みをもって生きる方々がいます。こうした方々と出会う時、私たちは黙し、見過ごしてよいのでしょうか。
「しののめケアハウス」はDV被害者を無視することのできない出会いの中で始められました。避難所として「宿を差し出そう」と首里教会と沖縄キリスト教センターの共同の働きとして、「住まいの提供」と「自立支援」を一緒に目指し、今年で13年目を迎えました。来訪された方々は2021年度までに208名の女性と同伴家族255名です。DV被害、性被害、障がいのための差別や貧困などの課題を抱えた方たちです。今の社会ではこれらの方たちへの福祉施策は整備されているかに見えますが現実には法律の隙間や運用基準、予算などを理由にはじかれ、周辺に押しやられ、福祉サービスの対象外となっています。
「わたしの目にはあなたは高価で尊い」のみ言葉を聴いた者として、来訪された方々にもこのみ言葉を伝えたいと押し出されています。働き人も日本基督教団の信徒のみでなく教派を超えた信徒たちの信仰の業として共に歩んでいます。シェルター(住まい)維持の費用や事業費は、教会・伝道所、信徒からの献金、ノンクリスチャンの団体や個人からの寄付、物品提供で行われ、行政の補助金、委託費に縛られることなく運営を継続することができています。また、精神的なケアとして「祈りと讃美のつどい」を運営委員の牧師が奉仕も大きな恵みです。
「わたしがあなた方を愛したように、あなた方も互いに愛し合いなさい」のみ言葉に導かれ、主に従う歩みを続けたいと思います。皆で弱くされた人々を無視せず、主の祝福を信じて歩みましょう。
(仲宗根幸子報)
「互いに愛し合いなさい」のみ言葉に導かれて
香取の地域福祉を考える会 《千葉県》
千葉県内にある24時間365日対応型相談支援事業「中核地域生活支援センター」13カ所の一つを運営すべく「NPO法人香取の地域福祉を考える会」は、香取圏域1市3町の福祉の向上を願い、2009年に設立されました。以来、年間4000件を超す暮らしに係る様々な相談に対応してまいりました。また、その傍ら児童・障がい・高齢にまたがる「分野別福祉講演会」、地域づくり事業「香取圏域ふれあいまつり」を毎年開催してまいりました。
現在、法人では二つの地域貢献活動に取り組んでいます。
一つは、障害のある方々が自立した社会生活を営むことが出来るよう、就労や生産活動の機会を提供する「就労継続支援事業B型ワークおみがわ」。二つ目は、「香取市生活困窮者自立相談支援事業香取サポートセンター」です。
生活保護法に準拠した二つ目の事業を通しては、折りしもコロナウイルス感染拡大により、様々な困難を負った方々の語られる言葉に耳を傾ける時、見ることも叶わないウイルスに日常が脅かされ、当り前の生活が奪われてしまうことに思いを深くさせられています。
最後に、公的支援を受けない活動として「NPO法人ひきこもりコア・クライシス」の活動を共催し、月一度の相談会、個別支援を行っています。10代から50代のひきこもりの中にある方々、そのご家族に寄り添うことの大切さを教えられています。
マザー・テレサは「いちばんの貧困は孤独です。誰にも必要とされていないという思いです」と説かれています。
私が籍を置く佐原教会には、3年前から法人の活動を何かと支えて頂いています。また、一昨年には教団社会委員会より多額の支援を受けました。私共の働きが祈られ、支えられていることを感謝しています。
(中塚博勝報)