心に記憶を植える
学校法人美唄キリスト教学園めぐみ幼稚園園長・理事長
美唄教会牧師 木村拓巳
1954年に創立しためぐみ幼稚園を紹介する上で、どうしても炭鉱地に建てられた教会の宣教について触れるべき責任を感じます。先立って1952年に創立した日本基督教団美唄教会は、美唄の地での宣教について真摯な協議を重ね、美唄めぐみ幼稚園を設立しました。地域の子どもと保護者に福音を伝える意義は当然ながら、背景には北海道特別開拓伝道(北拓伝)によって建てられた教会であることの重圧があったことを想像します。
美唄教会創立30周年記念誌の序文には次のように記されます。「北海道特別開拓伝道のプログラムによって、空知炭田地帯に誕生した四つの教会のうち、30年の歴史を記すことができるのは美唄教会のみとなりました」。
1950年代の人口9万人余をピークとして、閉山と共に、人口は15年で半減しました。つまり、2022年度創立70周年を迎えた美唄教会は、美唄めぐみ幼稚園の働きなくして地域に立ち続けることはできなかったのです。今日の北海教区においても、いかに教会と幼稚園の働きが大切であるかが噛み締められています。
近年の本園の保育では「手」に着目しています。粘土から陶芸教室やそば打ち教室につなげたり、積み上げたカプラ(積木)を見上げて、ボルダリング(クライミング)に挑戦してみたり、食育を兼ねたクッキングでは、こねたりまぜたりを通じて、手のいろんな役割を発見したり…。それまでできなかったことや見えなかったことが形になっていく過程を子どもたちと楽しんでいます。やがて、見えざる御手が一人ひとりに働いていることに気づいてほしいと願っています。
さて、机の片側に園児2名が並んで座り、一方向に向かって黙食する保育の日々が来るだなんて、誰が想像したでしょうか。マスク着用・手指消毒、分散しての行事開催、平日の運動会やクリスマスページェント開催…数えればたくさんあります。言い換えれば、入園から卒園まで、「ずっとマスクを着用して園生活を過ごす子どもたちがいる」ということです。
ウイルスや雑菌など、目に見えないいろんなものを取り除く日々ですが、同時に、むしろ目に見えない大切な何かを心に植える作業を大切にしたいとも思います。何かを生み出す創造力であったり、共感する心であったり、また神さまに出会う機会のことです。主にある希望を園児と保護者と、そして保育者と分かち合って歩んでいきたいと思います。全国で子どもと福音を分かち合う保育者の方々の働きが、日々御手に導かれるようにと祈ります。
来たる9月、胆振東部地震から4年を迎えます。その記憶を持つ子どもがもう園内に少ないことに気づかされます。子どもたちに炭鉱や災害、さまざまな記憶を伝えたいと思います。