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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4962号】神学校からの声に聞く
新型コロナウイルス感染拡大の渦中で(2面)

2021年11月27日

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コロナ禍での神学教育

橋本 祐樹 《関西学院大学神学部准教授》

 2020年4月に最初の緊急事態宣言が発出されてから今日まで、関西学院大学神学部は大学全体の方針に基本的には則りながら神学教育のオンライン対応を実施してきました。2020年度春学期はほぼ全ての授業がオンライン形態(ズームでの同時双方向、もしくは授業動画等のオンデマンド方式)でしたが、秋学期以降は予防対策を実施しながら対面授業の数を増やしてきました。

 現在はマスク、手指消毒、人数制限等の予防対策を変わりなく実施の上で、神学部の授業は基本すべて対面で行い、健康上心配のある学生は申し出によってオンラインで受講できるという形態を取っています。多くの授業では、大部分の対面出席者を前に、パソコンとプロジェクターを設置して画面上の少数の学生にも並行して対応している状況です。ただし、一部の授業については後に触れるように積極的な意図をもってオンライン化しているケースもあります。

 個々の状況に触れますと、昨年度は突然のオンライン化に学生側の戸惑いや不安感が大きく、一年生を中心にオンラインでの個人面談と交流を繰り返し実施しました。またオンライン授業中心の時期には、学生の信仰面、精神面でのニーズの認識をも背景に、チャペルメッセージ動画をオンライン配信しました。  夏期派遣と神学校日の説教奉仕については昨年度実施できませんでしたが、今年度は、前者は教会側より希望を受ける形で数を絞って実施し、後者については学生9名と教員2名が計14教会で奉仕しました。

 神学生の働きとしては、例えば対面礼拝に力点を置く教会での精力的な奉仕、オンラインに力点を置く教会での技術的な貢献等を聞いております。

 コロナ禍でのオンラインを用いた神学教育については否定的な側面や影響を無視できませんし、対面でこそ生じる豊かな教育効果があるものと考えていますが、今般の状況はオンライン関連の技術的な習熟と整備を結果し、それは授業展開の国際化、参加窓口の拡大にもつながっています。具体的には、韓国の神学大学とのズームによる交流授業を行ったり、アジアやヨーロッパの神学者やエキュメニカルな団体の責任者をオンライン講師として招いて講義と対話を行ったりすることで、以前にはなかった国際的な学習と交流が始まっています。

 学部後援会や同窓会との関連まで含めて言えば、例年実施する教師と信徒に開かれた研修機会である「神学セミナー」、教師の継続教育を主眼とする「MSセミナー」(MS=メソジスト・ソサイエティ)、そして神学部との関わりの中で若者に向けた学びと出会いの機会を提供する「関学ユースキャンプ」の何れもが同様の技術的展開を享受して今年度は(対面に加えて)オンライン化し、従来なかった幅のある参加を得ています。

 神学教育の前進のためどうかお祈りください。


新しい歌を

原田 彰久 《東京聖書学校舎監》

 「新しい歌を主に向かって歌え。全地よ、主に向かって歌え」(詩編96編1節)

 2020年の前半から流行し始めた、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、それまでの生活を一変させる出来事でした。

 東京聖書学校も、こうした中で、新しい出来事の連続でした。2020年4月に新入生を迎えて始まった新学期は、一部の講師を除き、ほぼオンライン授業となりました。こうして学生はもとより、教授や講師も、何から手を付けたらいいのかわからない状況でした。そして現在は、学校の配信設備等を整備し、新たなあり方に対応しつつあります。また神学生は、年度初めに学校から日曜日の実習教会を指定して派遣されます。しかし県を越えての移動が制限され、礼拝の配信も教会毎に異なることから、大きな困難を抱えました。こうした状況は想定されておらず、また急なことで何の準備もありませんでした。それでも小さな神学校でしたので、何とか1年を過ごし、卒業生を送り出しました。このような中で、神学校も教会も新しい時代、いわゆるニューノーマルを迎えるのでありましょうか。

 例えば、19世紀北アメリカのリバイバル運動では、礼拝に大きな変化が生じました。リバイバルの父と呼ばれたチャールズ・フィニーは、彼の「新案(new meas-ure)」に基づく実用主義の礼拝を展開します(ホワイト『プロテスタント教会の礼拝』、328ページ以下参照)。また海外伝道が盛んになり、日本に福音主義教会がもたらされました。そこでは『口語式文』の礼拝順序Ⅰに代表される簡易な礼拝が行われているのではないでしょうか。一方で、反リバイバル運動として「マーサーズバーグ神学運動」が起こり、あるいは今日の典礼主義的な礼拝改革につながったと言えるでしょう(ヘイゲマン『礼拝を新たに』、148ページ以下参照)。

 過日も「日本ウェスレー・メソジスト学会」で、新型コロナウイルス感染症流行下の聖餐について興味深いパネル・ディスカッションがなされました。日本基督教団において、バプテスマを受けた者が聖餐に与かる教会の形成、礼拝のあり方に向けて、神学校もまた、新たな学びが求められていると思わせられました。

 こうして私たちは「新しい歌を主に向かって歌え」と呼びかけられています。そこでは日本基督教団信仰告白に基づき、規範としての聖書を重んじつつ、歴史を通して形成されてきた教会のあり方を考えなくてはならないでしょう。よく知られたニーバーの「変えることのできるものを変える勇気と、変えることのできないものを受け入れる冷静さと、変えるものと変えることのできないものを識別する知恵を与えたまえ」との祈りを想い起します。

 新しい年度に向けて、献身者が起こされ、神学生を迎えたく願っています。


新たな宣教の手段と課題

 瀬戸 英治 《農村伝道神学校事務長・オンライン特任教師、鶴川教会牧師》

 2020年の4月新学期のスタートは、新型コロナウイルスの感染拡大での休校だった。約2ヶ月後、なんとかズームによるオンライン授業を開始できたのは幸いだった。  農村伝道神学校は学生9名(今年度)の小さな学校である。それでも1週間の授業数は30近くある。火曜日から金曜日まで、1時間30分の授業が1日5時限まであり、1時限に3教科がある場合もある。専門のスタッフを配置する余裕もなく、学内のWi-Fi環境も整っていない中、手探り状態で始めた。授業中に何度も画像が止まってしまうことも多く、そのため学生からオンライン授業への不満が多く寄せられた。

 現在は対面とオンラインの「ハイブリッド」授業になっている。1年半を経て、さすがに学生もスタッフも慣れて違和感も少なくなってきた。

 コロナ禍では授業だけでなく、本校独自の農業実習や他の実習も大きな影響を受けた。例えば台湾の原住民族の神学校である玉山神学院との学生の交換交流が中止となった。また計画中にカナダ合同教会との交流も中断せざるを得なかった。これらは学生にグローバルな、そして多様な宣教を学ぶ貴重な機会であった。

 この他にもコロナ禍で失ったものは数々ある。しかし気付かされたこと、新たに得たこともある。

 本校の授業の多くは2名から5名である。これはオンラインになっても、若干のタイムラグを気にしなければ、対面と同じように意見交換が可能となる規模だ。講師や学生が学校から遠くにいても同様に授業ができる。場所が限定されないということは、何らかの事情で神学校に来ることのできない献身者でも学ぶ道があるということである。実際、Cコース受験者が聴講生として一部の授業に参加している。

 また神学校間を超えての授業さえ可能になる。違う神学校の学生がオンラインで同じ授業を学ぶということは、教団の宣教に大きな変化をもたらすに違いない。またホットな宣教課題をオンタイムで学ぶこともできるし、信徒の学びにも大いに利用できると感じている。

 一方、本校が大切にしている共同性をどう担保するかが大きな課題となっている。オンラインでの学びは確保されたとしても、授業外での交わりは確保されない。学生同士のたわいもない話や意見交換、遊びによって得られるものによって形成される関係性が大切だと感じる。

 教会の現場でも同様だろう。コロナ禍によって教会もオンラインという新たな宣教の手段を手に入れた。しかし主の体なる教会としての共同性をどこでどう養うのか、これは教会の死活問題かもしれない。

 神学校は教師養成だけではない、宣教の課題に答える役目がある。ウィズ・コロナ時代の宣教をどうするか、神学校の在り方自体がその答えになるような対応ができればと思う。

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