【4948・49号】教師養成制度検討委員会主催 教師研修会 『贖罪論』を主題に

教師養成制度検討委員会主催の教師研修会が、3月2日の午後、オンラインにより開催された。「贖罪論」を主題として、教団立神学校である東京神学大学の芳賀力学長の講演が行われ、質疑応答を含めて約2時間の研修の時をもった。

教師養成制度検討委員会では、先に教団信仰告白と教憲から導き出される「教師論」をまとめたところであるが、その作業と並行して、教会に仕える教師たちのために、神学の基礎を学び直す研修の機会を設けることを計画していた。すでに1年前に主題と講師を決めて日程調整に入っていたが、新型コロナウイルスの感染拡大のため、延期せざるを得なかった。

感染防止のため、共に集うことを控える生活が続く中で、オンラインによる礼拝や会議の体制が整って来たのを受けて、教団としては初めてのことであったが、教団事務局の全面的協力のもと、ズームを用いてオンラインによる教師研修会を開催することとなった。案内の期間はそれほど長くなかったにもかかわらず、予想を超えて多くの反響があり、当日は、講師と企画担当の関係者10名のほか教師84名と信徒2名、計96名がオンラインでつながった。

研修会は、菅原力委員長の祈祷で始まり、委員会の活動と今回の研修会の趣旨について短く説明された後、石橋秀雄教団議長の挨拶に続いて芳賀学長の講演へと移った。事前にA4判で12頁に及ぶ完全原稿が準備され、講師の了解を得て参加者全員に講演原稿を配信したので、画面を通して講師の顔と声に接しつつ、手元の原稿で内容の確認をしながら、講演に集中することができたのは幸いであった。

講演は、まず贖罪論への切り口として、日本のキリスト教史における最初の贖罪論論争と言える海老名弾正と植村正久のキリスト論論争を取り上げ、海老名には真剣な罪の自覚が欠けているゆえに贖罪信仰が明確にならないことを批判した植村の言葉に耳を傾ける。そして、それは、目先の安定した暮らしに満足し、救われる必要を感じていない多くの日本人に当てはまり、モーセを拒絶した「エジプトのイスラエル」に通じる心情であると指摘する。

以下、講演の流れを、大まかにたどってみる。

日本人は創造者である神を知らないがゆえに、自らが、神に造られた者としては的外れで非本来的な生き方をしていることに思い至らず、聖書が「罪」と呼ぶ現実をも心理学的な自己疎外という仕方でしか理解し得ない。しかし、罪を知らず、罪の贖いを理解しなくても、自らがさまざまな欲望の囚われの中にあり、そこからの解放を求めることにおいて、求道の入り口にあると語る。

さらに、人間の悲惨は囚われた無力さの中にあり、この隷属状態から解放されることによって救いが実現するという「贖い=解放」のストーリーは現代人にも分かりやすいはずだと言う。買い戻すという意味の「贖う」という比喩を用いて救済を語るとき、失われたものが、然るべき犠牲を払って本来の所有者に買い戻される物語として展開されることとなり、新約聖書は、私たちを買い戻してくださる方としてイエス・キリストがお出でになり、そのために、ご自分の命を犠牲にしてくださったことを証ししていると説く。

ここで講師は、冒頭に触れた贖罪論論争が、当時最新と謳われた歴史批評学を取り入れた自由な聖書解釈によって生まれた新神学の影響を受けたものであったことを指摘し、新約聖書学者である青野太潮氏の主張と対論する形で、キリストの十字架の贖罪としての意味を浮き彫りにする。贖罪論は、不条理なこの世の「苦難」の問題を解決できないとし、十字架は苦しむ者と共にいるキリストのインマヌエルの現実としてのみ強調する青野氏に対して、苦難と死が復活へと逆転される恵みの一方通行の道を担保してくださった方の贖罪のインマヌエルであることの意味を指し示す。

さらに講師は続ける。−宗教改革は、根本的な裁きと根本的な恵みの認識において、罪の徹底性と恵みの徹底性の認識において優れていた。真逆の認識が重なるところに仲保者イエス・キリストの存在がある。徹底的に自分の罪を認識し、正しく自分に絶望することを知る信仰は、自分自身の外、キリストの内に新しい生命の出発点を見いだす。ルターが言うように、私たちは義人にして同時に罪人であり、絶えず赦しを与えてくださったキリストとの関係に依存し、感謝をもって生き続けるほかない−。

講師はまた、当委員会が作成した「日本基督教団の教師論」に触れて、教団信仰告白と教憲に基づいて教師を立てるという共通の出発点が確認されたことを評価し、聖書信仰や信仰義認、贖罪の信仰等、基本的な教理に関して一致していることの大切さを指摘する。最後に紹介された、獄中で聖書を読み十字架のキリストと出会って赦しの愛に触れ、さらにキリストを知りたいと願って神学書の差し入れを求める一人の受刑者との触れ合いの話は、贖いの恵みの深みに触れた魂の生きた証として心に響いた。

講演後の質疑応答は、オンラインゆえの課題や限界を感じさせるところもあったが、どのような問いに対しても、忍耐と愛をもって丁寧に応じた講師の誠実な対応に心から感謝したい。予定の時間となり、委員会の東野尚志書記の祈祷をもって閉会となった。

研修会の後、事務局が実施したアンケートには73通もの回答があり、内容的にも良い学びとして受けとめられたことが確認できた。また感染症対策のために、やむを得ず、オンラインでの研修会となったが、そのお陰で、地域に限定されず多くの方の参加が可能となり、今後もオンライン形式の研修の機会を求める意見も多く見られた。オンラインの限界だけでなく、大きな可能性をも感じる学びであったことを感謝したい。また何よりも、丁寧に準備して奉仕された講師の芳賀力学長に重ねて感謝したい。

(東野尚志報)

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