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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4721号】くじけてはならない、イェスさまの愛があるから

2011年4月23日

 

448日(月~金)、奥羽・東北両教区に献金を届け、一つでも多くの被災教会を訪ね共に祈ることを目的として被災地を訪問した東海教区小出望議長、宮本義弘伝道委員長(教団宣教研究所委員長)に、教団新報も同行した。

教会員の消息も、会堂・牧師館の被害状況も、余震の度毎に変化する。普段は、原稿締め切りから印刷所入稿まで一週間、発送までは更に5日が必要なのだが、震災後、その一週間を2日に短縮して新報を発行している。しかし、被害の一覧を出しても、数日経てば殆ど無意味になってしまい、結果的に誤報にさえなりかねない。速報はHP等に委ね、数日では変化しない事柄をお知らせしたい。

宮古教会は、津波に浸かった教会を、主に地域に支援物資を届ける集積センターとして用いている。森分和基教師から、自然発生的に奉仕が始められた経緯、隣接の公設避難所とのやりとりなどを聞いた。その手際の良さに感心した同行の一人が、「先生はこの道のプロですか」と質問すると、「いいえ、素人です。高校生の時に兵庫でボランティアを体験したが、子どもの遊び相手をしただけです」。なる程、ボランティアにプロはいないだろう。しかし、体験は確かに生きていた。「一番必要なものは」には、「休み」。この答えは、この後何人もから聞いた。「週報作りだけでも頼みたい、説教者がいたら」。救援活動に普段の牧会、倍の働きが要求される。牧師を支えるボランティアが必要だ。

新生釜石教会では、礼拝堂前の駐車場スペースにテントを張り、お茶などを供する席が設けられた。そうしないと、物資を並べた会堂の中までは見ないで通り過ぎると、柳谷雄介教師。道行く一人ひとりに声をかける。

そこに、医師という札を首に掛けた見覚えのある人物。記者の教会でかつて伝道集会講師として招いたJOCS(日本キリスト教海外医療協力会)の楢戸健次郎ワーカーが医療相談に当たっていた。「今お住まいはどちらですか」と聞くと「ネパールです」。たまたま報告会で帰国中だった。地域の、特にお年寄りにとっては、実に頼もしい存在だ。

柳谷教師の緊急に必要なものは、混乱の中で失われた腕時計。日常という時間が止まったのだということを思い知らされる。道中では新しい時計が手に入らず、同行の東海教区議長が、「安物で直ぐ壊れるかも知れないが間に合わせに」と断って自分の腕から外す。思いがあれば、時間だって提供し共有できる。

大船渡教会へ3月末に赴任した村谷正人教師は、「当初、会堂に救援物資を広げるのには抵抗を覚えた」と言う。しかし、惨状を目の当たりにしては是非もない。高台にあり津波を免れた教会は、さながら無料コンビニとなった。日曜日には、一端物資を除けて礼拝を守るのが手間だという。そこに、かいがいしく働く可愛らしい女子高生2人の姿。「教会員ですか」と聞くと、村谷教師は少し照れて、実はと話してくれた。そもそも2人は被災者、物資を調達する目的でやって来た。品物を物色する様子に、ボランティアと間違えた。用事を頼み、働いて貰うことで、2人は自動的に被災者からボランティアに変身してしまったのだ。多分、この後は教会員にも...希望的観測か。

この後も、岩手・宮城・福島の諸教会を歴訪したのだが、次号に譲り、訪問できた中で、32キロ北と最も原発近くにある鹿島栄光教会と、更に福島新町教会の報告を先にしたい。

鹿島栄光教会は、年鑑によると現住陪餐会員8名、礼拝出席7名。ずっと一桁の礼拝を守って来た。今、一家族が避難し、礼拝は牧師家族4人だけだ。佐々木茂教師は前任地に自宅を持っている。いっそ避難したらと勧められるそうだが、小さな小さな福音の蝋燭を灯し続けるために留まると言う。そのことが、周辺の人々に平安を約束するのだと信じて。

誰も見ていないようで、実は見ている、何の関心も無いようでいて、案外に注目している、そう信じて。

教会の屋根瓦が落ち、雨漏りが心配な状況になっている。そうしたら、近所の方々が、屋根にビニールシートを載せてくれたそうだ。譬えは悪いかも知れないが、周辺の住民にとって、教会は、ちっぽけな祠のようなものだ。普段、信仰している訳でもない。通り過ぎる時に手を合わせることもない。しかし、そこに有ることを知っている。そこに有って欲しい。壊れたり、転がったりしたら、寂しいし悲しい。

この教会に、教会関係の救援物資が、僅かながら届いた。それをご近所と分かち合っている。記者は、佐々木教師が健康を損ねて節制していたことを忘れて、お見舞いに、持っていってはならないものを持参してしまった。彼は、「近所の人たちとちびちびやるかな」と、嬉しそうに言って、夫人に睨まれた。

福島新町教会は会堂の亀裂が大きく、崩れかかった塔を撤去せざるを得なかった。訪問後の余震で亀裂は更に広がっていると、瀧山勝子教師に聞く。

讃美歌21533番「どんなときでも、どんなときでも、苦しみにまけず、くじけてはならない」この作詞者の欄には、髙橋順子、19591967とある。誤植かと気にかかって調べたら、7歳で召された福島新町教会の教会員の娘・教会学校生徒だと教えられた。

「くじけてはならない、イェスさまの愛があるから」。

...次号に続く。

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