講演Ⅱは、岡本知之氏(西宮教会牧師)による『日本基督教団における教職制度の課題と展望』。
冒頭、教勢低下とそれに伴う財政逼迫という、絶望的とさえ見える教団の近未来像を、日本国そのものの人口減少、財政破綻と絡めて、生々しく描き出した。その上で、「過去のいきさつを捨てて現況から」と前置きし、次のような、鋭い分析と大胆な提言を行った。
先ず、二種(二重)教職制について、40年来続いて来たヒエラルキー批判というイデオロギー議論とは全く別次元の「機能的側面から」説明し直し、問題解消法を提案した。
「准允」とは、允可・允許を与えること、允可とは要するに許可することであり、宗教や武道等に於いて、特定の段位や資格を認定することである。現行の教憲教規によれば、それは「説教免許」である。つまり教団の教職制度に於ける「補教師」とは「説教免許を与えられた教師」ということである。
プロテスタント諸教派は、その伝統と教会観に従って様々な職制を持つが、伝統的に、教師になる前の教職候補生(主に神学生)に、一定の試験を課し、これに合格したものに説教免許を与え、教職候補生・神学生の身分のまま、主日礼拝に於いて説教する資格を付与する制度があった。
教団において「補教師」とは、その実体は、説教は出来るが聖礼典は執行できないという意味で教職候補生と同じ。「補教師」ではなく「教師試補」である。ここに教団教職制度における呼称と実体のズレがあり、それが苦渋の淵源となっている。
実体と呼称を一致させることにしか、捻れ解消の方法はない。「教師試補(教職候補生)」として、神学生の段階から、この資格を与える以外ない。
正教師・補教師の二種教職制を廃止し、教師資格を一本化する。
神学生(大学神学部、神学校共、最終学年在籍者)を対象に、在学中に説教免許試験を実施し、合格者を教職候補生(教師試補)とし、主任担任教師の指導の元に、所属教会における説教の務めに当たらせる。
説教免許取得者は、在籍教会で訓練を受け、神学校卒業時に教団教師試験を受験する。合格者には按手し、聖礼典執行資格を付与して教会に送り出す。
次に、これに関連して、牧師養成に関する課題を上げ、具体的に提案した。
教団は教師養成を認可神学校に一任しているのが現状、要するに教育の丸投げであり、その教育内容に関して責任ある対応を行えない。
教団の信仰告白に立って、聖書を神の言葉として宣べ伝え、正しく聖礼典を執行する教師を育てねばならない。そのため、これまでの認可神学校にはその教育内容を吟味した上で教育を委ねるとしても、それとは別に、教団立神学校を設立する。その教科内容と教授職は教団常議員会の議を経てこれを決定しかつ任用する。
更に、牧師のリカレント教育に関する課題を、次のように取り上げた。
教団は現在、一旦牧会の現場に送り出した教師について、リカレント教育もしくはライフ・ロング・エデュケーションを行う機関を持っていない。教団に牧会研修所を設けることを提案する。
特に二重教職制廃止を次の教団総会に議案として提案すべきと、山北宣久議長に求める一場面もあった。