東京信徒会主催・日本伝道150年記念講演会
2009年2月28日(土)富士見町教会において東京信徒会の主催により、日本伝道150年記念講演会が開かれた。
プロテスタント日本伝道150年の年、不況が襲い人々が翻弄される只中にあって、真の価値再発見への提言がなされた。
講師の阿久戸光晴氏(聖学院大学学長)は、キリスト教会史において、厳しい経済状況に直面した時に教会はどのような態度と献身を示したか、それによって次の時代に審判が聞かれると前置きして、グリム童話「愚か者ハンス」を紹介した。
奉公人ハンスは退職金にもらった金塊を次々交換する内に最後は無一物に。交換する毎に価値は下がっていくが、その度に感謝し、全てを無くした時、これで私は自由に解放されたと神様に感謝の祈りを捧げる。
この寓意的意味は、経済価値よりも利用価値で考えるハンスに、感謝の祈りの喜びが増して行くという不思議な構造。しかもハンスを迎える母は、永遠の母なる天国の寓意でもある。現代の我々に本当の価値についての問いかけがある。
現在、世界を揺るがしているバブル崩壊、信用収縮は、80年前米国から始まった世界大恐慌に類似しており、その発生メカニズムを分析しながら、新自由主義経済の終焉、実体の無い経済、実体の無い労働、イスラム金融、イエスの旧約聖書の大胆な解釈、時間価値、還暦を迎えた世界人権宣言など、多岐に亘るキリスト者として の立脚点と課題について語った。
実体経済・実体労働の伴わない経済の落とし穴
バブル崩壊の起源は17世紀オランダ・チューリップ恐慌にある。同様のバブル崩壊が米国で起こり大恐慌となったのは第一次世界大戦後のこと。
戦勝国米国は空前の好景気、膨大な余剰資金が株価を押し上げた。実体労働、実体経済の伴わない株価が頂点に達し、1929年10月24日の暴落を端緒に経済恐慌は世界を襲い、世界同時不況の下で、やがて向かう先は戦争であった。
フランクリン・ルーズベルトはニューディール政策を立て、ケインズ理論に基づく公的資金注入により経済回復を図った。
オバマ新大統領が就任・施政方針演説で一言も新ニューディールを言わなかったのは、ルーズベルトの政策が実は成功していなかったことに因る。成功したのはドイツ日本との戦争特需。戦争によって経済が立ち直った。今回も大変警戒しなければならない状況である。
1980年代以降、金融派生商品先物取引が規制緩和によって秩序が崩れた。そのもたらした産物は、実体労働に価値を見出されにくい風潮が広がったこと。汗一滴流さず億の単位でお金が儲かるなど、先物取引がバブルになり、将来価値を煽り、時間価値が悪用され、現在の経済恐慌を引き起こした。
時間の所有は、人間ではなく神にあること。汗水流す生産的な活動が正当に評価される時代が来るべきではないか。
今、イスラム金融から学ぶべきことがある。実体経済、実体労働を大事にする。利子はコーランで禁止されているが、手数料は利得のためでなく全て神のため、人々の民生のために使う。
この時にあって、旧・新約聖書の利子を巡る両面性を学び直し、イエス様の終わりの時を意識なさった大胆な動的解釈、お金が儲かるなら清く儲け清く用いるという両面性。働く喜びの回復、働く人々の環境整備、更に日本復興の礎となった「世界人権宣言」の精神を訴え続ける。ここに日本のキリスト者の使命があると力強く提 言した。 (鈴木功男報)