「黙秘権を使ってもいいですか」と少年は言った。少年院における面接のときである。彼は初めての面接で、随分と緊張しているようだった。「あなたを取り調べるのではなく、あなたの今後のことについて話し合うんだよ」と述べた。少年院では篤志面接委員を担っている。面接では少年達が将来について積極的に質問し てもらいたいのである。しかし、多くの場合、こちらから話しかけないと口をつぐんだままである。何回かの面接で、ようやく心を開き、少しずつ話すようになる。当然、将来については不安であり、相談を持ちかけてくるのであった。
院内の生活は刑務所より緩やかであるが、やはり厳しい。やたらに雑談はできない。まして、自分の過去などは話すことはできない。しかし、面接では何でも話してよいことを知り、積極的に自分のことを話してくれるようになる。
黙秘権の少年は誰も信用してないようだった。兄弟に苦しい思いをさせられ、その仕返しが社会の中での悪なのである。出院しても家には帰りたくない。二度目の面接のとき、歯をくいしばって、誰からも理解されないと思っている彼なので、少年を受け止める存在がおられることを示した。すると、彼ははらはらと涙を流した。 そして、その後は堰を切ったかのように、自分について話すのであった。
まさに出会いが導かれる。
私を受け止めてくれる存在、説教で取り次いでいるのであるが...。 (教団総会書記 鈴木伸治)