毎年幼稚園の年長組は、幼稚園でお泊り保育をする。その開会礼拝でのことだ。礼拝の聖書の言葉は、年長組の今年度の主題聖句だ。その年度の始めに、その年その年の主題聖句を定めてきた。お泊りへの期待で子供たちの心が高まっている中での開会礼拝。「隣人を自分のように愛している人」との問いに即座に迷うことなく手を高く上げて一斉に「ハーイ」と元気が良い。この幼児の反応に感動。「隣人を愛している人」、「自分を愛している人」と重ねて問う問にも同様の反応だ。保育者は誰も手を上げない。「先生は手を上げないんだ」と言って同じ問を繰り返したが、結果は同じだった。「お友達に大好き大好きと言われたら、自分が大好きになるよね。反対にお友達から大嫌い大嫌いと言われ続けたら、自分が大嫌いになるよね」、「自分が大嫌いになったら悲しいね」と話した。
「隣人を愛している心」でのお泊り保育は、例年と違っていた。母親から離れて不安の中で、泣く子はいなかった。大好きな友達とのお泊り保育、心が安定していた。「瞬間、瞬間、その時の真実に生きる幼児」とのある保育者の言葉をかみしめた。礼拝後、あの瞬間を写真に収めたいと思って、再度問い、あの場面を写真に収めることができた。この写真を見たら、一人の保育者が手を上げていた。「えっ、嘘ー」と言ってしまった。幼児の心から遠い自分を思い知った。
(教団総会議長 石橋秀雄)