「ここの生活は、聖書の世界そのものです。だから、旧約聖書にとても親しみを覚えます。こちらの山から日が昇り、あちらの山に沈む。夜になると、季節に応じて現れる星座が満天に広がります。24時間、自然と一体ですから」と、目を輝かせて語ってくださる木俣三枝子さん。
酪農は、命そのものに触れる仕事である。牛はストレスに敏感で、気候の寒暑によって弱るだけでなく、乳を搾る人も健やかでなければならない。農場主の忠さんが健康を損ねて入院したときには、一気に乳量が落ちたという。
都会の生活は自分には合わないと思って北海道・酪農学園大学に入学したという忠さんは、大学在学中に野幌教会で受洗し、卒業後1年間カリフォルニアで酪農実習した。
教会付属幼稚園教諭であった三枝子さんと結婚すると同時に、1970年、道南の今金町日進に入植。1年たったころ、初めての子が生まれてすぐに、動物からの菌に感染して召されるという悲痛な体験をした。そのときに、祈りの中で与えられた御言葉が、「どんな被造物も、わたしたちの主キリスト・イエスにおける神の愛から、わたしたちを引き離すことはできない」(ローマ8・39)であった。以来、苦しいときはいつもこの御言葉を握りしめてきた。「神さまが備えて下さったのだから、助けてくださる」。
もう一つ、入植当初から絶えず夫妻を支えてくれたのが、大学の先輩でもある酪農同志会の人々である。利別教会員として信仰の歩みも共にしてきた。その同志たちの間でも、今は次世代の若者が酪農の経営を引き継いでいる。仕事と共に、信仰の継承も始まっている。
直接命に関わる仕事だからこそ、信仰の継承を毎朝真剣に祈らざるを得ない、と夫妻は口を揃える。
1970年、結婚と同時に北海道道南・日進に入植。利別教会員。