さて、十一人の弟子たちはガリラヤに行き、イエスが指示しておかれた山に登った。そして、イエスに会い、ひれ伏した。しかし、疑う者もいた。イエスは、近寄って来て言われた。「わたしは天と地の一切の権能を授かっている。だから、あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。」
《マタイによる福音書28章16〜20節》
危機の共有、伝道力の回復
日本基督教団は信徒減少による教会消滅の危機、財政破綻の危機を迎えようとしている。
第40回教団総会においてはこの危機を共有し、全教団的取り組みが急務であることを確認する総会となった。
この危機にあって教団の第一の課題は伝道力の回復である。すなわち伝道力の命と力の回復だ。
主イエスの圧倒的な伝道命令に忠実であることこそ「教団の伝道力の命と力の回復」をもたらすと考える。
「さて、十一人の弟子たちはガリラヤに行き、イエスが指示しておかれた山に登った。そして、イエスに会い、ひれ伏した。しかし、疑う者もいた」(マタイ28章16〜17節)。
山は神と人が出会う場だ。モーセがシナイ山に登り、神の言葉が授けられていた時、麓の神の民は、神の臨在に圧倒されて震え上がった。
主イエスの指示に従って山に登った弟子は11人だった。イスカリオテのユダが欠けている。この弟子たちが山に登り復活の主に出会った。すなわち山で、神に出会って震え上がり、主の前にひれ伏し拝む弟子たちの姿が記されている。
この弟子集団はユダ的破れを内にもち、疑う者もいる弟子集団だ。この弟子集団を復活の主が圧倒し、主の伝道命令が、響き渡る。
「だから、あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」(同19節)。
内にユダ的破れを持ち、疑う者もいる弟子たちが、主の伝道命令に圧倒される。
「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」との主の言葉に励まされ、迫害を恐れず、命を捧げて伝道する弟子たちに変えられていく姿が示されている。
驚くべき伝道力の発揮
越谷教会は1884年4月にアンブローズ・D・グリング宣教師が岩槻伝道の後、舟で川を下り、今でも農村地域である地で路傍伝道をはじめ、家を開放した農家で集会を開始。6月には3名がグリング宣教師によって洗礼を受け、越谷の初穂となり、越谷教会が設立される。この歴史を示す資料は、教会の火災で焼失してしまった。
グリング宣教師はアメリカ・ドイツ改革派教会「外国伝道局」が日本に最初に派遣した宣教師だ。
同教会の「外国伝道局」については、宮城学院元理事長出村彰先生が「合衆国改革派外国伝道局50年略史」を翻訳され、宮城学院資料室年報に掲載してくださり、「外国伝道局」の働きとグリング宣教師について詳しく知ることができた。
伝道局の目的が3項目あげられているが、その第一に「外国伝道局の目的は、異教徒の間にキリストの福音を広めることにある。それは福音の説教、学校教育、出版物の刊行による」と記されている。
東京、埼玉と伝道し、その後、仙台に拠点をおいて東北伝道を開始する。伝道の最も困難な貧しい農村地域で、その痛みを背負いながら次々と教会を設立し、山形まで教会を設立していく、学校教育にも力を注ぎ、東北学院、宮城学院を設立する。
日本伝道のために次々と宣教師が日本に派遣されてくる。当時の合衆国改革派教会は信徒数20万人、経済力に乏しい教会が驚くべき伝道力を発揮する。
東北学院には、仙台に派遣された宣教師たちと本国の教会とが「もっと資金を送れ」「送る資金はない」との激しいやりとりをする手紙が残っていると聞いた。
本国の教会では教会学校の子供たちまでが日本伝道のために献金を献げたという。
この驚くべき伝道力は「主の伝道命令に忠実に従い外国伝道を」(50年略史)と主から教会に与えられている第一の使命に服従するところから発揮されていることを知らされた。
ほぼ日本基督教団と同じ規模の教会のこの伝道の業に刺激を受けている。
主の命と力を受ける
わたしたちの教会も、最初に伝道命令を聞いた11名の弟子たちのように、内にユダ的破れを持ち、疑う者もいる群れである。
しかし、わたしたちは、復活の主に、神に出会う。十字架の贖いの福音に救われたわたしたちに圧倒的な主の伝道命令の言葉が、響きわたる。
「彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、 あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい」。
神の民が増えることは教会の大きな喜びだ。何よりも「大きな喜びが天にある」(ルカ15章7節)と主が語られている。
伝道は主の業である。聖霊なる神が伝道の道を切り開いてくださる。この主の伝道命令に忠実に従う時、主の命と力を受けることができる。
主イエスは「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」と、主の伝道命令に従う者を励まし、伝道力の命と力を与え続けてくださるのだ。(第40教団総会議長・越谷教会牧師)