佐藤さんには、人に語れない空白の30年間がある。幼少期に家族から見捨てられ、暗闇の中を手さぐりで歩き、気付いた時には人生の裏道を歩いていたという。そんな中、信仰の道を歩み始めるきっかけとなったのは、一冊の聖書との出会いからだった。聖書が世界のベストセラーであると知り、興味を持ったところから、ある牧師にその気持ちを手紙で伝えると、その牧師が一冊の聖書を手に会いに来てくれた。その日から、前のめりにイエス様の教え・御言葉に傾倒していき、牧師の説教を聞き、一歩ずつ、確実に人間らしさを取戻していった。そして罪が赦され生まれ変わると知って、迷わず受洗を希望した。
洗礼式は、東日本大震災(2011年3月11日)の2週間後に予定されていた。ところがその日、牧師の身内の突然の訃報で、洗礼式が5ヵ月の延期となった。なぜこのような出来事が起きたのか、「私は神様に見放されたのか」と、洗礼式までの5ヵ月間、懊悩し、煩悶する日々であったが、「今はあの5ヵ月間があったからこそ自身の信仰が深まり、それを確認することができた。これも神様のご計画のうちだったのかと、感謝と感動を新たにしている」と語る。
その後、新しい生活の場を川口に与えられ、西川口教会を地図で見つけ、勇気を出して教会の扉をたたいた。ところが扉は固く閉ざされたままであった。消沈して背を向け歩きかけた時、入れ替わりに来た業者が、自分の気付かなかった呼鈴を押したことで、扉が開かれた。「その時はじめて、ここでも自分が神様に受容れられたのだと実感し、その思いは今確信に変わっている。御言葉を胸に、ただただ主の光を見失わないように歩んでいきたい。主とともに」と語る佐藤さんは今、光の子として歩んでいる。
福岡県出身、理容師、西川口教会員。