「神はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。」
(旧約聖書・創世記1章31節)
東日本大震災から5年が経過しました。今この時も、被災地にあって困難な日々を送っておられる方たち、また、放射能汚染から逃れて故郷から移住し、不安な日々を過ごしておられる方たちに、神のお支えとお守りを心よりお祈りいたします。
日本基督教団は震災から2年目の2012年3月に、「原子力発電というものが…神の創造の秩序を破壊し、命あるものの関係を断ち切る人類滅亡の危機の始まりとなりうること」を指摘しました(『福島第一原子力発電所事故に関する議長声明』より)。
また、3年目の2013年3月には、「あらためて原子力発電所の稼働停止と廃炉に向かっての処置がなされるように求める」ことを表明いたしました(『福島第一原子力発電所事故三年目に際しての議長声明』より)。
東日本大震災から5年目を迎えるこの時、原子力発電所事故が引き起こした深刻な問題が今なお継続していることを誰もが認識しております。きわめて長い期間にわたる避難生活が続いておりますし、震災関連死者数も増加しております。
そのような中で、まるで福島における原発事故とその被災者の存在を無視するかのようにして、2015年8月11日、九州電力は川内原子力発電所1号機を再稼働しました。その際、政府は、原子力規制委員会による審査は「世界で最も厳しいレベルの規制基準」によってなされたと述べていますが、「世界で最も厳しい」ということには何の根拠もありません。
また、田中俊一原子力規制委員長は、「川内原発は新規制基準に適合したもので、安全と認めたわけではない」と発言しました。まさにその通りで、基準に適合したからといって、原子力発電所の稼働が安全であるということでは全くありません。さらに、事故が起きた場合の防災対策もきわめて不十分なままです。
世論調査においても、全国で半数を超える人たちが原発の再稼働に反対している中で、これらの国民の声を無視して原子力発電所の再稼働を進めていることに強く抗議します。
それと共に、政府に対して、原子力発電所の稼働を停止し、すみやかに廃炉に向けての処置を取ることを求めます。
東日本大震災から5年目を迎えるにあたり、私たちは、神がお造りになり、聖書が「見よ、それは極めて良かった」と述べている世界の回復を心から願い、祈ります。
そして、国内外の諸教会との連携・協力において、それぞれの場で原子力に依存しないエネルギー政策への転換の取り組みを求める働きかけを継続してまいります。
2016年3月11日
日本基督教団総会議長 石橋秀雄