説教のため釈義する力、神学的思索の力をさらに
去る2月23日から25日にかけて、春季教師検定試験が行われた。今回の検定試験の受験者数は、補教師試験46名、正教師試験25名、計71名であった(他に転入審査2名)。キリスト教会館(東京・西早稲田)が耐震工事に伴い使用できないため、今回の春の検定試験も、信濃町教会(東京教区)を借りて行われた。信濃町教会の厚意と、事務局の入念な準備によって、支障なく行われたことは感謝であった。
試験全体の印象は次の通りであった。まず、補教師の提出試験である釈義と説教は、旧約からはカインとアベルの物語、そして新約はヘブライ人への手紙からが課題箇所であった。旧約に関しては、物語として良く知られている個所であったために扱いやすいテキストであり取り組みやすかったと思われた。反面、聖書テキストそのものに深くとどまることよりも、表面的な事柄で満足してしまう傾向も見られた。やはりテキストが何を語ろうとしているのかを丁寧に釈義することの大切さを覚えて欲しい。特に補教師はコースによっては釈義が採点対象になっていないが、釈義が説教の力強さにつながっていることを覚えてもらいたい。同様のことは新約にも当てはまり、説教というよりも説明で終わっている印象の説教が多くあった。福音を語ることの意味をとらえてもらいたい。全体的にテキストを釈義する力、また一つの事柄を神学的に思索する力が、より求められると思われる。
筆記試験の印象は次の通りであった。「教憲教規および諸規則・宗教法人法」の試験は、今回は正教師、補教師共通の問題とし、論じることを求めたが、条項の列挙で終わっている解答が多く見られた。論じることの不足は、組織神学的思考の不足と相通ずる面があるように思われる。聖書神学については、旧約、新約ともに幅広い聖書の理解が不十分に思えた。聖書を一面的に捉え、俯瞰的に捉える力の不足を感じる。もっとも基本的なこととして、聖書が精読されているかどうかが解答に現れているように感じられた。教会史の問題も、神学校で問われているはずのものであったが、やはり、歴史全体を見渡す力が欠けていると思わされた。とはいえ、良く準備して臨んだと思われる者は、いずれの教科においても十分な解答を得ていたので、そもそも、教師となるための心構えが問われているのかもしれない、ということを考えさせられた試験でもあった。
近年、面接もまた試験であることを説明し、面接に臨んでもらってきた。今回も同様に行った。個人面接試験では、自分自身の言葉で答えるよう促したこともあり、受験者の生の声に触れることができたことは良かった。学科試験だけでは推し量れない受験者の思いも聞くことができることは、面接を試験として捉えていることの利点と言えるであろう。わけても、召命観を確認し合えることは、恵まれたときでもあった。
その後、学科試験の判定が保留となった者たちの再レポート課題提出・採点を経て、3月22日の教団三役会において合格者承認がなされた。結果は以下のとおりである。補教師試験=合格34名、不合格1名、Cコース継続11名。正教師試験=合格23名、不合格2名。
また今回も、教師検定規則3条6号対象者(Cコース受験志願者)2名の認定面接が行われた。受験志願者の召命の確認や、受験に向けての説明を丁寧に行うことができた。
次回の認定面接は、秋季検定試験後に行う予定にしている。
(服部 修報)
講 評
今春季試験は、キリスト教会館耐震工事に伴い、信濃町教会(東京教区)を会場にお借りして行われました。
今試験の「教憲教規」(筆記試験)においては、「会議制を論じてください」という出題をいたしました。しかし、条項を列挙するだけで、論じるところまで至らない解答が多く見られました。諸規則を記憶するだけではなく、なぜそのような仕組みになっているかを理解する学びを期待しています。
面接試験においては、召命と献身の思いを述べていただきました。主からの召命を重く受け止め、献身を誓う言葉を、それぞれの受験者の口から聞くことができました。
これからも、私たちの教団に、収穫の主が働き人を送ってくださることを切に祈ります。
第39総会期
教師検定委員長
鷹澤 匠
2016年春季・補教師検定試験問題
教憲教規および諸規則・宗教法人法
(60分)(A,B,CⅢ)
次の2題に答えてください。
1.「教憲教規および諸規則」に定められている会議制について論じてください。
2.宗教法人となっている各個教会の宗教法人規則変更手続きの順序を、当該条項を挙げて述べてください。
旧約聖書神学(60分)(B,CⅢ)
次の2題に答えてください。
1.バビロン捕囚について旧約聖書はどのように考えているか、旧約聖書のテキストをいくつか挙げつつ神学的に論じてください。
2.旧約聖書におけるサタンについて、旧約聖書のテキストをいくつか挙げつつ神学的に論じてください。
新約聖書神学(60分)(B,CⅢ)
次の2題を、新約聖書のテキストをいくつか挙げつつ、答えてください。
1.新約聖書における「神の国」について、述べてください。
2.エフェソの信徒への手紙における教会理解について、述べてください。