在欧日本語教会・集会による合同の修養会「ヨーロッパ・キリスト者の集い」が、7月29日から8月2日にかけて、チェコのプラハで開催された。毎夏の恒例の行事となって、今回で32回目となる。
今年2015年がボヘミアの改革者ヤン・フスの殉教600周年の年であることを覚え、プラハのコビリシ教会日本語礼拝が主催団体となり、フスの残した言葉から「すべての人に真実を」というテーマを掲げての開催であった。ヨーロッパ14ヵ国と、日本、韓国、イスラエル、チュニジア、ブラジル等から、総勢225名の参加者が与えられ、幼少科、中高科、ユースグループを含めて大会を共にした。
本大会の6回の講演と朝の祈祷会では、在欧の教職者がメッセージを担当し、フスが追い求めた聖書の真実を、それぞれの視点から説き明かした。
そのうち7月31日午後の講演は、旧市街のベツレヘム礼拝堂で持たれた。ベツレヘム礼拝堂は、14世紀にチェコ語の説教の場として建てられ、フスが専任の説教師を10年間務めた礼拝堂である。
この集会では、フス派の信仰を受け継ぐチェコ兄弟団福音教会(Evangelical Church of Czech Br-ethren)議長のヨエル・ルムル牧師からチェコ教会の歴史についての話をしてもらった。17世紀にフス派の信徒たちは追い出され、チェコはカトリックの国となったが、現在は世俗化の最も進んだ国の一つとなっている。プロテスタント教会がマイノリティであることは、日本の状況と似ている。
集会後には、プラハ旧市街を散策しながらフスの足跡を偲ぶ一時を持った。ヤン・フスの業績についてはあまり広く知られていないが、今回の大会を通してその生涯と教えの一端に触れられたことは、参加者に大きな感銘を与えた。
8月1日午後の時間には2つの特別講演があり、まず福島第一聖書バプテスト教会の佐藤彰牧師が、4年前の東日本大震災の被害と現状について話した。その後、ライデン大学教授であった村岡崇光氏が、戦後70年を迎えての日本人キリスト者の責任を問いかける講演をした。2つの主題とも時宜にかなったものであり、日本から遠く離れた欧州においても、信仰者として関わらずにはいられない問題を認識させられた。
「集い」では毎回、賛美がたいへん重要な役割を果たす。今回は、各教会からの奉仕者からなる賛美チームが、フス作詞のチェコの讃美歌を会衆と共に捧げ、特に「賛美の夕べ」の時間には、フスからルターへと受け継がれる宗教改革をテーマとしたプログラムが組まれ、恵みに満たされた。
「集い」は、欧州に散らばる信徒たちが直に交わりを持つことのできる貴重な機会である。小グループでの分かち合いの時間にそれぞれの思いが飛び交うが、語り尽くされることはなく、主日礼拝を最後に帰途に就くことになる。今大会では、すべての人に真実を望んだフスの思いを心に抱きながら。
(孫 信一報/プラハ・コビリシ教会〈教団関係教会〉牧師、在日大韓基督教会派遣宣教師)