人間に普遍にある魂を問うことに導くことこそ、キリスト教学校の使命」。そう語る磯貝曉成さんは、中学時代、人間が死によって愛する者から切り離されて行く存在であることに恐れを抱き、聖書に関心を持った。高校時代、受洗した京都教会で、キルケゴールの専門家でもあった牧師から「人はなぜ生きるのか」とのテーマを投げかけられる。愛読書「デミアン」に出て来る「神学生」に興味を抱き、同志社神学部に入学。在学中、船でロシアに渡り、北欧を経てドイツに旅する。途中、修道院で生活し、アメリカ経由で帰国。1年かけた世界一周の旅程は、神と自分に向き合う貴重な経験になったという。
大学院卒業後、静岡英和女学院で聖書科の教師として31年務め、副校長まで担った。その頃、新設される関西学院初等部の初代校長に抜擢される。この召しを受けた背後には、中高で教える中で感じ取っていた変化があった。かつての生徒は、少なからず「自分は何者なのか」との悩みを持ち、共にその問いと向かい合った。しかし、いつしか生徒たちの関心が、他者との比較の中での自分しか見なくなっていく。高度経済成長によって豊かさを享受して行く反面、個が育たず、他者との関係性も壊され、生き悩む者が生まれることに危機感を持ち、魂が育つ幼少期の子どもに出会うことに使命があると思ったのだそうだ。
校長として6年務め、キリスト教学校教育同盟の働きに移り3年が経った。人間の間で起こっていることは、学校という集団間においても当てはまる。今こそ、各学校が、建学の精神を取り戻し、個々の学校のネットワークと教会との連帯を生み出さなければならない。「事務局長連絡会」、「災害総合支援連絡会」、「看護教育連絡会」、「教師支援地域ネットワーク」等、6つのプロジェクトを立ち上げ、刷新の空気を吹き込んでいる。
「魂と向かい合おうとしない時代背景の中、赦されて生きている者であることを伝え、魂と魂の結びつき、出会いを生み出して行くことに具体的に取り組んでいきたい」と熱く語る。
1948年、京都生まれ。キリスト教学校教育同盟事務局長。