6月16~18日、天城山荘(伊豆市)にて、2014年度新任教師オリエンテーションが開催された。出席者は70名(そのうち新任教師44名)であった。主題は「教団の教師として宣教を共に担う」であった。教師委員会としては、このオリエンテーションが、教団における宣教の働きの学びと共に、教団教師として、新しい出会いと交わりの恵み(同期の者が集まる唯一の機会)を味わうことを願って準備に当たった。
《日本基督教団の伝道》
1日目、小宮山剛委員長による開会礼拝説教では、委員長自身が新任教師として輪島教会に遣わされた時に、伝道の困難さを突きつけられた出来事を通して語られた。暗澹たる思いに支配された中で、伝道の主体が誰なのかを示され、その主体は自分ではなく、復活のイエス・キリストであることを示された。自分に力がなくとも、復活の主に力があり、神の栄光は主の福音によって現されることを力強く語られた。
その後、石橋秀雄教団総会議長による講演「日本基督教団の伝道」がなされた。教団議長として、日本基督教団が伝道に燃える教団になるために、熱い思いを持って取り組む決意を聞かされた。宣教基礎理論の改訂も、伝道推進室の設置もその決意の元で行われたことである。そのためにも、聖書に立脚した日本基督教団信仰告白と教憲・教規による一致の重要性が強調され、聖礼典の一致の大切さを語られた。最後に戒規に関する資料が配付され、戒規は懲罰ではなく、悔い改めへの促しであることの説明がなされた。
《特別講演》
2日目は、窪寺俊之聖学院大学大学院人間福祉学研究科科長による、「終末期患者への牧会的配慮」と題して、講演を伺った。窪寺教授の淀川キリスト教病院ホスピスでの末期ガン患者との関わりを通して、終末期患者がどんな心理状況にあり、その中で終末期患者が等しく感じる痛み「スピリチュアルペイン」についての説明があった。スピリチュアルペインに対して、牧師だからこそできるスピリチュアルケアがある。それは、キリストの十字架の贖いこそが、終末期に襲われる自分の人生に対する後悔の念に赦しを与え、同時に、天国へとつながれる永遠の命の希望、すなわち、死んだ後の行き先を見いだすことによって、スピリチュアルペインを福音によってケアできることが語られた。
《教団教師論》
特別講演の後、全体写真を撮り、その後、伊藤瑞男教団総会副議長による講演「教団教師論」がなされた。教団の教師像として、信仰告白と教憲教規の内容について語られ、教師は召命、献身、教団によって立てられ、教団に所属し、教団と契約関係にあること。契約の内容は信仰告白と教憲教規であることが強調された。この契約内容に基づく一致のほかは、自由であり多様であることが教団の教師像であることが示され、特にA・E・マクグラスの霊性定義を通して、霊性を求める研鑽の重要性が語られた。
《震災への取り組み》
続いて雲然俊美教団総会書記による講演「震災の教団の取り組みについて」がなされた。被災教区の教師かつ教団書記という立場から、全体教会としての教団の取り組みの経過と共に、被災教会の状況と各教区の対応が報告された。震災後3年が経過し、教会の再建が始まる一方、建物が再建できても、街の復興が遅々として進まない現実にあって、今も大きな試練が続いていることが語られた。
《教団の機構について》
昼食を挟んで、午後には長崎哲夫総幹事より、教団の機構についての説明があった。教団の機構についての説明を皮切りに、教団と教区と教会の会議制について、学びを深めることで教団の一員としての力をつけていくことが熱く語られた。日本基督教団という背番号を全員が背負って、日本伝道のみ業に仕えることについて、総幹事の熱意が新任教師に伝えられた。
引き続いて「教団の取り組み」として、教団事務局(道家紀一教団総務幹事)、出版局(竹澤知代志出版局長)、年金局・隠退教師を支える運動(藪田安晴年金局理事長)、宣教研究所(佐々木美知夫委員長)、部落解放センター(小林明主事)のそれぞれの働きや取り組みの紹介がなされた。最後に教師委員長より「お金とセクハラとの対処について」具体的な事例を通して、それぞれの場面における対処と心構えについて示された。お金もセクハラも、被害者に対する重大な犯罪行為であるにとどまらず、教会や教団の信用にまで及ぶ事柄であり、常に意識を高めて対処すべき問題として受け止める時を持った。
夜は分団の時間を持ち、各講演についての感想や、それぞれの働きの紹介と課題、悩みや喜びが活発に話し合われた。今回の分団も、「主任担任教師として招聘された教師」「担任教師として招聘された教師」「付属施設(幼稚園など)のある教師」に分けられ、同じ課題を担っている教師が、それぞれに今感じていることを語り合い、重荷を分かち合うことが出来たのは良かった。
《牧会講話》
3日目は、小島誠志教師による牧会講話が行われた。分裂をした教会に対する牧会や、牧会での失敗談、牧師家族の苦悩や父親として、夫としての苦しみを赤裸々に語って下さり、慰めと励ましの時が与えられた。その後、全体のまとめとして、参加した新任教師全員が、一言ずつ感想等を述べた。特徴的だったのは、参加する前は、違う教派的伝統を持つ新任教師が集うことに等しく不安を感じていたのに、オリエンテーションを終了するに当たり、お互いの違いを超えて、「教団の教師として」この場から遣わされていくことの絆を確認する意見が多数見受けられた。「ケンカをしない新しい教団を自分たちの世代が造る。そのためにも今の気持ちを大切にして遣わされていきたい」との意見も見られた。
最後に吉澤永書記による閉会礼拝をもって、すべてのプログラムを終えた。
新任教師たちが今後の働きの場において豊かに用いられることを心から祈りつつ、恵まれた新任オリエンテーションを終えることができ、感謝であった。(吉澤 永報)