【4795号】基調講演 島薗進 上智大学教授 原子力発電の非倫理性と宗教からの声-福島原発災害後の苦難の中から-

 3・11以降、宗教界の反原発発言に関心を抱いてきた。震災による原発事故が倫理問題として論じられるには宗教界が一定の役割を果たしている。これまで政治、社会問題に積極的には発言してこなかった日本の宗教勢力が今回は比較的早く脱原発について意志表明した。

 日本カトリック司教団は、事故前には緩やかな脱原発だったが、「いますぐ原発の廃止を」の声明(2011年11月8日付)を出した。環境へのスチュアードシップ、利益、効率優先の経済至上主義への反省、未来世代への責任といったことを倫理性とする。また、浪費的生活を改める清貧の理想を述べる。日本にも同じ伝統があると訴えるが、清貧を一般社会に求めるのは、世論を味方につけることをあまり顧慮していないと言える。

 日本基督教団の議長声明(2012年3月27日付)は、詩編を引用しキリスト教的世界観をまず前面に出す。原発が「命あるものの関係を断ち切る」のは我々の実感しているところであり、唯一の被爆国としての歴史的経験と結びつけることで公衆に訴える。また、被害者であると同時に加害者でもあることを述べる。経済優先を悔い改めるのはカトリック教会同様であるが、神の創造の秩序に訴えるのは一般に理解されるか。声明は教団内に向けられている。

 主要な伝統仏教諸宗派の連合体である全日本仏教会の宣言文(2011年12月1日付)は、利便性追求と一人ひとりの「いのち」を大切にする社会を対置する。全体の利益のために一部が犠牲となるのではなく、「生活のあり方を見直す中で、過剰な物質欲から脱し、足ることを知る」と述べる。「いのち」が脅かされるときリスクは量的に考えられてはならず、リスクの及び方が人道に反し、リスクを前提として意図的に負わせてよいのではない。功利主義では足りないと指摘し、富の増大による調和が分裂を含んでいると宗教こそが発言できる。声明は特定宗派色を持たないゆえ、日本において原発の倫理性を考える上で取り上げやすい。

 浄土真宗・真宗大谷派の決議文(2012年2月27日付)は、「『安全神話』と『必要神話』を安易に信じ込み」豊かさを求め、「原発の危険性を立地地域に押しつけ」てきた。「未来のいのちを脅かす被爆を避け得ない」ゆえ、「原発に依存しない社会の実現が急がれる」と述べる。弱者への押しつけと言った社会的意識が強い。真宗の教義に基づく生命、死生観、倫理観も述べられ、生活、社会を見直すこと、社会のあり方が仏の教えに合ったものであるのを強く意識している。特定の教義が述べられている点は批判しにくいが、社会的論点には論争があり得る。選択を突き付ける立場性が明解である。

 ドイツ政府が設けた「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」提出の「エネルギー大転換」報告書(2011年5月30日付)は、持続可能性、未来とこれから現れる結果についての責任を倫理性として述べる。倫理的な価値評価は量的比較できるリスク評価でもあり、倫理、リスクを広く見ている。経済優位な考えでなく人間の生き方を含んだ総合的評価を必要とし、人間の良き生活も量的に評価し得ると考えている。産業界、政界を納得させるため量的な評価を必要とするのであろう。リスク評価の合理的な比較衡量に倫理的政治的な要素が入る。リスク評価の絶対的判断では、災害の巨大さ、後世への影響の「リスクを相対的に比較衡量してはならないほど大きいものだと評価」する。リスク理解の相対的比較衡量と絶対的判断、どちらの立場の倫理的考察からも同じ脱原発の結論に達する。

 宗教者ではない人々(高木仁三郎、池内了、村上春樹)も原発問題を倫理問題として論ずる。宗教集団と同等意見だが宗教性は前面に出ない。原発は社会に分裂をもたらし、政財官学報、司法をも巻込む腐敗をもたらす。一方、脱原発は社会の連帯を取り返すことになる。ライフスタイルの変更、世界の経済目標の定義し直しも原発批判に入ってくる。

 今後の課題においても宗教界が貢献できるであろう。キリスト教界は先端に立つと考える。(文責・新報編集部)

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