神学の基本的学びを問う
二〇〇五年春季教師検定試験は、三月一日~三日、東京と京都の両会場で行われた。今回の受験者総数は七八名であった。試験直後の委員会での学科試験判定によると、補教師試験全体では七三名が受験した。うち合格者は四四名、保留者八名、不合格者二名であった。Cコース受験者二二名のうち一八名が、またBコース受験者一名が継続となった。また昨年秋の正教師試験で科目が残った五名が再受験し、一名が合格、二名が保留、二名が不合格となった。保留者については、改めてレポートが課された。委員会で後日、再判定する。また今回は他教派よりの転入志願者はなかった。
前回春季試験ではA、B両コースの受験者の中から多数の不合格者が出たが、今回は概して良い準備がなされ、不合格者が少なく、また保留者も比較的少なかったことは喜ばしい。検定試験では、教師となる上でどうしても理解しておく必要のある基本的な神学の学びについて問われる。今後も各受験者が、教師となる自覚のもとに良い準備をされるよう望む。
それでも依然として保留となる者がある。とくに教団教憲教規・宗教法人法、および新約聖書神学の両科目については、基本的な理解を問う問題であるにもかかわらず、学びが不足している場合がある。宗教法人法の知識は教会現場における実務に必須である。新約聖書神学の知識と理解は、説教と伝道、牧会にあたり、直ちに問われることになる。
Cコース受験については、ギリシア語の合格率が低い。限られたごく初歩的な範囲での出題であるので、時間をかけて少しずつ準備を進めてほしい。また教会史・教理史の知識は神学的思考の基礎となる。日頃の積み重ねが重要である。組織神学の記述も不十分な点が見うけられる。基本的な書物を繰り返し学び、組織神学的思考を養う必要がある。
そうしたことが積み重ねられていって、説教や牧会、ひいては教会形成へと結晶することになる。今後も個人の学びを進めていくことはもちろん、相互の共同の学びを継続し、研鑚を深めていくことが望まれる。
学科試験後の個人面接の前に両会場で全体会を行い、受験志願者と委員全員で懇談の時をもった。これは、検定試験への理解を深めるとともに、よりふさわしい試験のあり方を求めるものである。八束潤一委員長が挨拶し、試験全般について説明した。第一に、検定試験は教団教憲教規と検定規則、および信仰告白に基づいて行われている。第二に、教師検定試験はたんなる合格だけを目指すものではなく、準備を通して福音の豊かさを学び、人々に届かせるための良い機会でもある。第三に、いま教団において現在の二種教職制度の改革について検討が始められている。最後に、教憲第九条において「本教団の教師は、神に召され正規の手続きを経て献身した者」とされていることに触れ、教師となるにあたり、教区教団における教会の手続きを重んじるとともに、献身と召命の思いを新たにして、研鑚と学びを続けてほしいと述べられた。委員長挨拶に基づき、受験志願者との質疑応答、意見交換がなされた。
試験後の委員会では、いくつかの点が指摘された。今回、受験者の準備が良くなされていたことが評価される。また三名の検定委員が教会員の召天に伴い、日程半ばで帰らざるをえなくなったが、今後そうした場合、面接等の職務遂行について、対応が求められる。また現在は東京と京都の二会場に分かれて試験を実施しているが、これを一会場とすることも今後の課題である。検定試験制度を、より細かく定め、規則を整備する必要がある。次期委員会への申し送り等については、時間を改め、別に委員会を開催する。
教師検定試験においては、神学の基本的な知識と理解を問われる。そのいずれも、教師として伝道と牧会の場に立つ上で、欠くことのできないものばかりである。今後、そのための良い備えをして試験に臨み、主の聖なるみ体である教会に仕えることができるよう、努力していただきたいと願う。
(楠本史郎報)
*2005年春季・補教師検定試験問題
教憲教規および諸規則・宗教法人法(60分)
(A・B・CⅢコース)
次の2題に答えてください。 1. 宗教法人である教会の主任担任教師の就任と辞任について、必要な手続きについて記してください。
2. 宗教法人である教会が備えなければならない書類・帳簿について記してください。
旧約聖書神学(60分) (B・CⅢコース)
次の2題に答えてください。
1. 捕囚前の預言者の使信の特徴について述べてください。
2. 旧約聖書における「契約」思想について述べてください。
新約聖書神学(60分) (B・CⅢコース)
次の3題のうちから2題を選んで答えてください。
1. 共観福音書におけるイエスの「受難と死」について述べてください。
2. パウロにおける「神の義」について述べてください。
3. ヨハネによる福音書における「キリスト論」について述べてください。
『講 評』
教師検定委員長
八束 潤一
33総会期委員会として最後の教師検定試験を実施した。
試験期間中、教会員の召天等により三名の委員が途中で不在となる事態が生じたが、委員諸氏の協力により無事に実務を終えることが出来た。働きを終えるにあたり委員長個人として感じたことを述べたい。
今期委員会は、32総会期第五回常議員会が行った検定試験の基準に関する決議の後に選ばれ実務にあたった。信仰告白を基準とする決議は何より、受験生にとって良いことであった。また同時にこの決議は、私たちが教団の中にある多様性や差異を、合同教会の豊かさとして互いに受け入れ、生かすために努力することを求めていると思う。大切な課題であろう。
今一つは、検定作業に携わりつつ、委員自らが福音を証しする働きに召され、神に献身する者として立てられている事を改めて問われたことである。このような働きに携わることが出来て感謝している。