奥羽教区では長年「キリスト教幼児施設教職員修養会」という集いを開催してきました。保育園や幼稚園、その他の教会に関係する諸施設に勤める方々を主な対象として、また広く全教会にも開かれた学びと交わりの場として既に三二回を数えています。
テーマは時々によって変化してきましたが、近年は「共に育つ」を基本に据えて、保育現場の様々な課題をキリスト教保育の視点からとらえ直す学びを重ねてきました。
その上で最近は、現在の日本社会のなかで、子どもたちがどのように生きているのか、子どもたちを取り巻くおとな社会はどうなのかを考え、私たちの足元を見つめ直しています。
今年は一月五~六日に、弁護士で「NPO法人カリヨン子どもセンター」の理事長坪井節子さんをお迎えし、その日々の取り組みを通した素晴らしいお話しを伺うことができました。
坪井さんは、子どもの人権救済活動の現場に長く関わって来られました。学校内でのいじめ・体罰・不登校、家庭内虐待、児童擁護施設内での人権問題、子ども買春問題等、子どもたちがどれ程苦しみ傷ついているかを率直に話されました。いじめや虐待のなかで自殺を図り、自暴自棄に陥った少年少女との出会い。言葉なく、涙とともにただ聴き続けることから、長い回復への道のりを共に歩む日々。
人権とは「生まれてきて良かった。ありのまま生きていていいんだ」との確信。「私は私の人生の主人公。私のことは私が選び、私が責任をとる」という覚悟。「ひとりぼっちじゃない。一緒に歩いてくれる人がいる」という信頼でもあると、分り易く説いて頂き、「子どもの権利条約」を批准した私たちと社会の現実を的確に指摘しておられます。
何より「少年非行の防止に関する国連ガイドライン」からの学び、『子どもと大人は、対等かつ全面的なパートナー』という理念に、三人の子どもの母親としても具体的に立ち続けようとする模索の日々等、等身大の言葉に誰もが共感です。
さらに虐待を受けた子どもたちが安心して避難できるシェルター、弁護士や専門家もスタッフとなっている「NPO法人カリヨン子どもセンター」の開設から、新たな取り組みと展開への実践の数々。
大雪のために二割強の方々が不参加になるという初めての経験でしたが、講師の静かにそして深い想いを込めて語りかけるひと言ひと言に胸打たれつつ、幼い子どもたちとその家庭とに関わる一人一人の現場で、日々どのようなパートナーシップを築くのか、大変貴重な示唆をたくさん頂くことができました。
(太田春夫報)