WCC第9回大会が、ブラジル南部のポルト・アレグレ市にある「教皇立カトリック大学」を会場として、二月一四日から二三日まで開催され、日本基督教団の代表として大宮溥、上田博子、日本聖公会の代表として西原廉太、在日大韓基督教会の朴寿吉、日本キリスト教協議会の山本俊正(総幹事)、日本聖書協会総主事の渡部信の各氏が出席した。代議員は約七〇〇名だったが、全体の参加者は四、〇〇〇人に上った。
今大会の主題は「神よ、あなたの恵みによって、世界を変革してください」であった。この主題に応える声明「ひとつの教会となるための招き」を最終日に採択した。声明はエキュメニカル運動をさらに進展させるため、相互聖餐、教職者の職制の相互承認などを論じている。また約三四〇の加盟教会に声明の検討を求めている。
中央委新議長にワルター・アルトマン牧師(ブラジル・ルーテル福音教会議長)がカトリコス・アラム一世(アルメニア使徒教会)の後任として選出された。また八名の新議長が世界各地から、またギリシャ正教会と東方正教会から選ばれた。理事に相当する中央委員一五〇名も選出され、日本からは二期一四年間勤められた平田真貴子氏にかわり、西原廉太氏が選出された。
大会は毎日朝八時三〇分の礼拝に始まり、グループでの聖書研究、全体会、夕方六時三〇分の夕拝で終了した。夕拝終了後や昼食休憩時だけでなく大会プログラムと並行して多くの「ムティラオ」(ブラジル語で集会所の意)が催され、ワークショップ、展示、イベントなどがなされた。また、二二分団に分かれて「エキュメニカル対話」がもたれ、様々なテーマで協議された。
全体会では、経済的正義、宗教的多元性、暴力の克服、教会の一致についての発題と協議がなされた。ムティラオ、エキュメニカル対話等の成果や全体会での協議を踏まえ、「ラテン・アメリカ」、「軍事的暴力にさらされている人々への保護の責任」、「テロと人権」、「国連改革」、「朝鮮半島の平和」、「命の水」などの声明が発表された。
今大会ではWCCの活動の縮小と効率化が決定された。これはWCCの危機的な財政難からの決定であり、「霊性と使命」、「教会形成」、「世界の正義」、「論理的な声と預言者的な証し」の四つの分野の活動に焦点を当てることとなった。WCCは、一九九八年の前大会から今大会までに三〇%の収入減となっている。
WCCは一九七〇年代、八〇年代に南アフリカのアパルトへイトその他の差別暴力構造解消のために人種差別撤廃プログラムを展開して大きな成果をあげた。今年は二〇〇一年から開始した「暴力克服の十年」プログラムの中間点にあたり、後半の五年間についても協議された。しかし、課題が多すぎて焦点が定まらない、WCC以外にも同じ課題を担う多くの団体が新たに立ち上がっているなど、WCCは新たな局面にさしかかっている。
期間中、ルラ・ダ・シルバブラジル大統領、ウィリアム・カンタベリー大主教、南アフリカのツツ大主教が訪れ、それぞれ味わい深いスピーチをした。世界の教会が目に見える形でひとつに集う場のシンボルとしてのWCC大会の意義は大きいが、その一方、新しい関係の構築の必要性も認識せざるを得ない。
この機会に、大宮溥世界宣教協力委員長がサンパウロ福音教会(小井沼國光・眞樹子宣教師)を、上田博子宣教幹事がサンパウロ福音教会、マリンガ・メソジスト愛光園教会(宮本純子宣教師)、ブエノスアイレスの在亜・キリスト福音公同教会をそれぞれ訪問できたのは誠に幸いなことであった。