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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4615号】荒野の声

2006年12月2日

▼ここ数年か、もう少し前から、「小説聖書」の類の出版が目立つ。ベストセラーもあると聞く。漫画版も続々と現れるそうだ。▼漫画では手塚治虫のものが出色だと、これは定評だろう。「長い物語をどう要約するかが難しいのに、聖書には登場しないキツネが狂言回しを演じ、それが無駄どころか実に効果的なのがニクイ」、とはある牧師の評。全く同感だが、中勘助の『鳩の話』は御存知ないようだ。▼そこでは、聖書的にも根拠のある鳩が、キツネ以上に活躍する。福音書の世界がみずみずしく描かれたこの作品は、昭和十六年の著。この年に、福音と平和を描いたことに敬意を覚える。しかし、孤高の詩人もまた、時代を免れることは出来ないのだろうか。暗い。このイエスは、著者自身が言うように、悲劇の主人公であり、この物語は、あまりに絶望的だ。▼モーリアックの『イエスの生涯』は聖書より先に読んだ。トルストイの『福音書』もノーマン・メーラーまでも。しかし、聖書が一番面白い。聖書にだけ、キリストが登場する。

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