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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4624号】人ひととき 武藤 昭男さん

2007年4月14日

負いきれない負債を負いつつ、主をほめたたえる

武藤さんは現在六五歳。ふつうは、ゆったりとした年金生活でも考える頃だろうか。しかし、定年退職間近になって思い切って立ち上げた事業が失敗し、億単位の負債を抱えた。今も返済の生活が続いている。
大学卒業後、研究開発に従事したが、医者を目指そうかと考えた。その頃、公害問題に目覚め、「人の医者にならなくても、産業の医者になればよい」と思い立ち、発電所の排煙脱硫の仕事に移った。海外の駐在員として業績をあげ、鼻高々の折、突然のリストラに遭う。一九八五年のことだった。自分が完全失業したことを悟るにも時間がかかったが、経験と技術が買われシーメンスに就職、再び海外を駆けめぐる生活となった。
仲間の定年退職をきっかけに、忘れていた自分の歳を自覚させられる。「人間は誰もが死ぬ。死に方は選べない。しかし人生はやり直しができるものではないか」。思い切って会社を立ち上げ、やり直しのスタートのはずだった。ところが、事業は数年で挫折、失敗。
み言葉は、「立ち帰って静かにしているならば救われる。安らかに信頼することにこそ力がある」と言う。しかし、明日の支払い、あさっての督促の事を思うと安らかにはなれない。「一時的にはみ言葉に力づけられても、『社会』という嵐が来るとすぐ不安になってしまった」。強い風に気づいて恐くなり、沈みかけたあのペトロの姿が自分だったと振り返る。
「そもそも私が抱えている問題は個人で負える限度をはるかに越えているのです」。負いきれない負債。ただみ言葉が力を与えた。「わたしの魂よ、主をたたえよ。主の御計らいを何ひとつ忘れてはならない」(詩編一〇三・二)。「私が最初にすべき、また最後にすべきことは、主をほめたたえることではないか」。それが生きている理由だと腹を据えた。「負債を返していくことがかえって仕事を絶え間なくできる機会になります」。

教団新報
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