「教師退任勧告」巡り鋭く対立
今常議員会は「教師退任勧告を行う件」が焦点になるものと予想されていた。案の定、鋭い対立を見せ、激しい議論が交わされた。一方で、待ったなしの抜本的機構改革案が提示され、出版局長の交替があり、更には、「合同のとらえなおし」等継続的に議論されてきた重要課題が山積し、今後の展開はいっそう複雑・深刻化を免れない様相。春の各教区総会、秋の教団総会まで、濃密な議論が続くか。
*「中越」終了、募金の重点は「能登」へ
第35総会期第四回常議員会は、二月十八日から二日間、教団会議室で三〇人全員が出席して開催された。
まず議事日程に関して、「出版局長選任の議題だけでなく、辞任議題もあるべき」「辞任勧告のような重要案件は三分の二賛成で決すべきだ。議事の進め方について前回、明確な答弁がないまま、議長は教団新報で答弁を行った」などの意見が相次いだ。
山北宣久議長は、「勧告議案を過半数で決するということは前回確認している。その時答えたことを教団新報に文章化した」と答え、賛成十八票で議事日程を採択した。
続く書記報告で、秋山徹出版局長の辞任承認が報告されたことについて、「二行の書記報告で済ませる問題ではない。教団総会で選任された局長が任期途中で辞任する説明が欲しい」との意見に対し、内藤留幸総幹事は「議長宛ての辞表には『一身上の都合で』とあったので、話し合いをしたが、『祈って導かれた』と答えられたので、牧師である人にそれ以上は問えなかった」と答え、山北議長も「一つの立場の長が熟慮して決めたことは重いもので、それなりの経過があったことを思い、祈って出された結論を尊重することとした」と述べた。
また報告に添付されていた北村慈郎教師宛て勧告書について、「期限を切って回答を迫っているが、どこからその権限を委譲されたのか」との質問が出た。山北議長は、「ご意見を聞いて次の段階に進むために、応答があるのは当然で、議長の権限内と思う」と答え、書記報告は賛成多数で承認された。
内藤留幸総幹事は、総幹事報告で教区活動連帯金に触れ、「常議員会で論議してもらうため、七月常議員会に提案出来るよう事務局で準備している。分担金拠出の仕方、金額の決め方の不明確さ、配分協議会の役割についての理解の不一致など、現状の問題点を明らかにし、解決の途を探りたい」と報告した。
これに対し、「拠出の仕方、金額の決め方が不明確というが、何をもって不明確というのか。協議会で決めたことを何故不明瞭というのか」との質問が出た。内藤総幹事は、「連帯金の四〇年間の歴史の中で不明瞭な点が多々ある。連帯金の性格が変質して来たことを指しており、数字に問題があるという訳ではない」と答弁した。
中越地震募金について、小橋孝一・被災教会会堂等再建支援委員会委員長は、08年二月十五日現在、一億七九八二万円余と目標額まで十八万円弱まで達した募金状況を説明して「目標達成は確実視され、教団の被災教会支援を能登半島地震に集中するため、三月末で募金を終了したい」との委員会報告を行った。
疋田國磨呂関東教区議長は「小出教会の会堂建設は08年度中に完工の見込み。中越沖地震被災信徒六人に三〇〇万円を支援した」と報告し、委員会報告が承認された。
能登半島地震について、長山信夫・被災教会会堂等再建支援委員会委員長は、「七尾教会牧師館建築、七尾幼稚園改修、魚津教会会堂補修工事が完了した」と感謝をもって報告し、高橋潤中部教区議長は、「08年二月十五日現在の募金四六一三万円で、中越地震募金一年目とほぼ同様のペースで推移している。三月二三日(日)、被災を覚える礼拝を行う」と目標額一億五〇〇〇万円への支援を訴えた。中越、能登報告質疑の中で阪神淡路大地震第二次募金処理について質問、意見が相次ぎ、菅根信彦兵庫教区議長は、「最後となった芦屋浜教会の再建は成ったが、返済が困難となっている教会もあり、現在も募金は運用中だ。年度内には報告を完了したい」と述べた。
(永井清陽報)
*教師退任勧告、「正しい」の字義で激しく対立
昨年十月に行われた第三回常議員会において「北村慈郎教師に対し教師退任勧告を行う件」が可決され、山北宣久議長から十月二六日付けで同教師に対する「勧告書」が送付された。本議案を扱うにあたり山北議長は、送付した勧告の内容およびその後の経過等について説明した。その中で、勧告書には「この勧告に対する応答を二〇〇七年十二月三一日までにご連絡ください」と添えられており、それに対して「勧告書に対する応答はできない」との内容の返事(十二月三一日付)があったこと、それを受けて山北議長からなお応答を求める「ご通知」を送付したこと(二月四日付)、それでもなお応答がなければ、別紙「再勧告書」をもって再度勧告する備えであること等が報告された。なお、「再勧告書」では、勧告に至った事実経過や未受洗者への配餐の問題点などにも触れられており、最後に「今後もなお、全教団的合意なしに未受洗者への配餐を行うのであれば、戒規の執行申し立てに進まざるを得ないことを申し添えておきます。上記勧告に対する応答を二〇〇八年六月二〇日までにご連絡ください」とある。
勧告を受けた北村氏は、以下のように三点の疑問と二点の意見を述べた。疑問な点として、①第二回常議員会の際に山北議長は、北村氏の「常議員としての資格」を問うと言っていたが、第三回常議員会を経て出てきたのは、「教師退任」だった。②山北議長は「正しい聖礼典」を強調するが、私には「これが正しい聖礼典」だという意識はない。「正しい」とはどういうことか。聖礼典は人間の側の応答だから、間違いもある。それを絶対化できるのか。③教憲・教規違反だというが、私の行っている聖礼典は必ずしも違反だとは思えない。教憲・教規の理解には幅がある。山北議長は狭くとらえている。信仰告白にも問題がある。それを重んじていない訳ではないが、聖書とイエスの方が教憲・教規に優り、教憲・教規を乗り越えるのである。次に意見として、①この度の勧告に関しては多くの教会、信徒の反応があるが、これは何か。合同のとらえなおしについては十分な議論が起こっていないのに、なぜこれには反応があるのか。「聖餐は教会の生命線」だというが、私は沖縄や性差別に取り組んでいくことがより大きな生命線だと思っているので、こういう反応は奇異に思う。②『福音と世界』に書いたことは、一歩を踏み出していくことが宣教の現場では大事だということ。教団ではマイノリティだが、集団をとらえるときは、幅を持ってとらえるべき。
勧告に反対する立場から、各個教会の中では教憲・教規をはみ出していく部分もあるが、それを生かし活性化するのが教団の豊かさとなる。教憲・教規一本では、一歩踏み出していく創造性が発揮されない、などの意見があった。
これらに対して山北議長は、次のように応答した。①北村氏は「第34回総会は無効だ」と言っていたのに常議員となり、「沖縄不在の聖餐は受けない」と言った。そうした伏線がある。常議員を辞めたとしても違法な聖餐を続けるのでは意味がない。②ここで「正しい」とは、信仰告白や教憲・教規に則っていること。③教憲・教規は教団の豊かさや多様性を守っている。私たちは同じ信仰に立って天の宴に与るのである。
聖餐執行のあり方や退任勧告について賛否の意見が激しく交わされた他、勧告書に対する応答を求めたことや「再勧告書」の意味、本議案が「報告」として承認されることの可否などを巡って議論されたが、本議案は議長の行ったことの報告として、賛成多数で承認された。
(藤盛勇紀報)