【4788・89号】クリスマスメッセージ 邪魔が入るとき 楠本史郎

さて、ザカリアは自分の組が当番で、神の御前で祭司の務めをしていたとき、 祭司職のしきたりによってくじを引いたところ、主の聖所に入って香をたくことになった。 香をたいている間、大勢の民衆が皆外で祈っていた。すると、主の天使が現れ、香壇の右に立った。 ザカリアはそれを見て不安になり、恐怖の念に襲われた。 天使は言った。「恐れることはない。ザカリア、あなたの願いは聞き入れられた。あなたの妻エリサベトは男の子を産む。その子をヨハネと名付けなさい。 《ルカによる福音書1章8〜13節》

予定通りにならない生活

 教務教師になって思うことの一つは、牧師館の生活は予定が立たなかったということです。

 牧師は仕事をたくさん抱えています。礼拝説教や聖書研究会、諸集会の準備があります。聖書を読み、注解書や関連する書物を調べます。一つ一つ心をこめて用意するには、かなり時間がかかります。他にも週報を作り、さまざまな原稿を書きます。家族のためにも時間を使います。

 けれども書斎にこもってばかりもいられません。教会員や求道者を訪ねます。病気の方を見舞います。さらに牧師館を訪ねる方もいます。予定はあっても、その通りにはなりません。まして、葬儀が入ると他の一切が止まってしまいます。牧師館の生活には、予定を乱すものが満ちています。

 

神が邪魔をなさるとき

 いいえ、神ご自身が邪魔をなさることもあるのです。ルカ福音書では、クリスマスの物語は、ザカリアという人の話から始まります。ザカリアは祭司です。エルサレムの神殿に勤めていました。エルサレム神殿は大きくて、祭司も、大勢います。それが何組にも分かれ、交替しながら礼拝をつかさどります。

 ザカリアの組が礼拝の当番だったときのことです。神殿の中央に聖所があります。そこには神がおられると信じられていました。特別に神聖な場所です。そこに入ることができるのは、一人の祭司だけです。クジで選ばれます。選ばれた祭司は、聖所に入り、決められた手順で香を焚き、祈りをささげます。光栄ある務めです。この時は、ザカリアがクジに当たりました。

 大切な務めに選ばれたのです。名誉なことです。一生に一度あるかどうか、一世一代の晴れ舞台です。ザカリアは緊張したことでしょう。決められた手順を何度も確認し、練習をします。その上で聖所に入り、儀式を始めます。

 ところがそこに天使が現れました。ザカリアは驚きます。こんなことになるとは、予想していませんでした。緊急事態です。それでも必死に、覚えたとおりの手順で儀式を進めようとします。そこへ、天使が話しかけてきます。「あなたに男の子が生まれる」と語ります。心が動揺します。「今はそれどころではない」と思ったことでしょう。頭の中はもう真っ白です。あんなに繰り返し覚えた手順がすっかり飛んでしまいます。分からなくなります。「お願いだから、邪魔しないで」と叫びたくなります。

 すると天使は言います。「あなたは、わたしの言うことを信じなかったから、子どもが生まれるまで、話すことができなくなる」。

 踏んだり蹴ったりとは、このことです。せっかく名誉ある務めをいただきました。それを邪魔され、きちんとできませんでした。そのうえ、話すこともできなくなりました。散々な目に遭います。しかしそれが、クリスマスの出来事の始まりでした。

 

そこから新しいことが始まる

 神が現れ、ザカリアの邪魔をなさいました。おかげで手順は混乱します。儀式は滅茶苦茶です。ザカリア自身、話をすることができなくなります。けれども、そこから新しいことが始まっていきます。

 ザカリアと妻エリサベトとの間には子どもがいません。そのまま夫婦は年を取りました。しかし神は「エリサベトから男の子が産まれる」とお告げになります。そのとおり、子どもが生まれます。それが、洗礼者ヨハネです。このヨハネが大きくなり、救い主が来られると告げます。人々の心を主イエスへと向けます。

 神が邪魔なさいました。そこから、救い主イエス・キリストの出来事が始まりました。クリスマスの物語が展開していきます。

 人は予定を立てます。仕事の段取りを立て、今日はこれをしよう、明日はこうしようと考えます。そのとおりできると満足します。でも実際にはそんなにうまくはいきません。邪魔が入ります。思ってもいなかったことが起こります。すると「あーあ」とため息をつきます。邪魔された、迷惑だと思います。けれどもそうなのでしょうか。

 ペニシリンという薬があります。これは偶然、見つかったそうです。菌を培養していたら、カビが生えてしまいました。もう使いものになりません。がっかりです。でもよく見ると、カビの周りは、病気の菌が少なくなっていました。菌を抑える働きがあると分かります。そこからペニシリンができました。さらに色々な抗生物質が生まれました。今では、欠かせない薬になっています。

 人が計画して、そのとおりにしているだけでは、新しいものは生まれません。邪魔が入ります。思いもよらないことが起きます。そこから新しいことが起こっていくのです。

 神が御子をお送りになります。地上の人間の許に御子が来られます。私たちの世界に神の手が入ります。人間にとってそれは邪魔です。思いどおりになりません。思ってもみないことが起こります。迷惑です。困惑します。

 けれども、そこから、まったく新しいことが始まります。人を罪から救い出し、暗闇から光へと導き出す、すばらしい救いが始まったのです。

 祭司ザカリアは、話すことができなくなりました。しかし翌年、ヨハネが生まれます。ヨハネは、救い主をお迎えする、大切な準備をする人になります。そのヨハネが生まれました。神が働き始められました。その時、ザカリアは話すことができるようになります。といっても、自分のことを話したのではありません。地上のことを語ったのでもありません。神をほめたたえます。主はすばらしいことをなさると告げるようになるのです。

 

すでに神の救いのみ業が

 綿密に予定を立てていたのに、邪魔が入ります。そのとき、私たちはため息をつきます。嫌になります。けれども実は、そこに神が働いておられます。新しいことを始めておられます。それを知るのがクリスマスです。

 もはやすでに、神の救いのみ業が始まっています。それを見つけます。そして主をほめたたえます。あのザカリアのように、主はすばらしいことをなさると、喜びの声をあげます。そのクリスマスを、教会の人たちと、町の人たちや子どもたちと一緒に迎えましょう。今年、主は何をしてくださるのでしょうか。楽しみです。
(北陸学院学院長)

  • 日本伝道の推進を祈る日

    「2021 日本基督教団教会・伝道所一覧」発行

    10

    新型コロナウイルス対策資料

    共に仕えるためにPDF

    牧会者とその家族のための相談電話

    International Youth Conference in Kyoto

    日本基督教団2019年度宣教方策会議

    公募・公告

    エキメニュカル協力奨学金 申込書類一式

    日本基督教団年鑑2020年版

    よろこび

    日本基督教団 伝道推進室

    東日本大震災救援対策本部ニュース

    にじのいえ信愛荘

    教団新報 archive

    教日本基督教団 文書・資料集 申請書等ダウンロードコーナー

    月間 こころの友