任期中に辞任した前任者の後を受けて、二八年間務めた八尾東教会を辞し、三月、出版局長にリリーフ登板した。就任二カ月後の率直な感想は、「四年間の予算決算委員長時代、業務監査を通じて出版局会計に多少の関わりをもっていたが、実務について見ると、思っていたより危機感は薄れた。いろいろ噂されていたのとは違い、誤解が多いことがわかった」とのことだった。
着任して最初の一カ月間に、二〇人の職員と一人一人面談した。「説明責任を果たして欲しい」という要望が多かったそうだ。単身赴任した有澤さんを気遣って「野菜を十分に取りましょう」といった特集女性誌を職員がそっと机の上に置いてくれるようになった。
出版界全体の低迷に加えて、キリスト教出版物の不振が囁かれ、教団総会、常議員会などで出版局財政の立て直しがしばしば論議されるようになった。出版局の現状を見ると、下降線にはあるが、「信徒の友」は下げ止まりで頑張り、「カール・バルト一日一章」「聖書学用語辞典」など最近のヒット作もあって、単年度では黒字となっている。
働きながら牧師を続ける「労働牧師」を目指して、有澤さんは、五年間の会社勤めを経験した。そこで培った企画力を活かして、三つの教会、関連施設を建設した。その企画力を期待されての出版局長登板である。
書店で出版局の書物が求めにくいこと、在庫増問題など、出版局はさまざまな問題を抱えている。有澤さんの企画実行力に期待される所以だが、キリスト教出版の基盤をしっかりとしたものにするために、諸教会、信徒の一層の支えと理解がこれまで以上に必要となっている。
有澤新局長は、当面の目標を「さまざまな出版局見直し論がある。まず、その是非を見極めること。次の局長のためにも組織の立て直しに務めること」の二点に置いている。