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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【4651号】宣教師からの声

2008年5月31日

宣教師の最後の願い
ヘイスティングス・トマス・ジョン
ヘイスティングス・キャロル・ジャニーン
(合衆国長老教会派遣宣教師)

過去二三年間で宣教の巡礼で出会った、甲府の山梨YMCA、金沢の北陸学院、西宮の聖和大学、東京の東京神学大学の素晴らしい学生、同僚、諸教会の兄弟姉妹の故に神様に感謝を献げます。七月で日本を去る前に皆さんにお礼申し上げます。いつまでも日本を愛し、教えられた賜物を大切にします。
お別れの言葉は、先ず日本のクリスチャンに向けたいのです。世界どの国にも福音とは関連のない大きな物語(grand narrative)があるものです。
米国の場合それは自国利益と神の御心を混同する公民宗教(civil religion)と云えます。9.11以降米国は 、自国利益を守るという建前で、破滅的な外交政策を追求してきました。他方日本の場合それは、「日本は等質的な島国」なる神話ではないでしょうか。日本は今、より開かれた社会を目指すべきか、それとも自国利益という建前で「鎖国」に戻るか、という厳しい選択を迫られています。
甲州、加賀、兵庫、と江戸という異なる地域に滞在した経験から学んだことは、日本の文化・社会が等質的だという考えが、実は有害なお伽話に過ぎぬことです。日本語と地域文化を標準化する政策にも関わらず、皆さんの愛する国は、集団のレベルでも特色のある、豊かな異質性に富んだ地域文化のコラージュとして存続してきました。日本の等質性のお伽話は、内外の異質性とよそ者を日本社会の調和への脅威として描き出します。しかし今や日本人が国内と外国の異質性を喜ぶ、又よそ者の積極的な貢献を歓迎する、という態度も大切です。多数の「引きこもり」の存在がそれを証ししています。
二三年間のよそ者経験を通して私たちに確信が与えられました。日本は国内の豊かな文化的多様性に感謝しつつ、隣の中国と韓国への歴史的文化的な恩義を認める新しい道を探求しなければならないという確信です。それは日本人が自らのアイデンティティーをより広い視野の元に築き、アジアや世界の諸外国ともっと上手に付き合う為に必要です。
私たちクリスチャンは自らのアイデンティティーをキリストの上に確立するので自国特有のお伽話を相対化します。お伽話に代わる、国を超えた世界市民としてのアイデンティティーの基礎は、キリストから与えられると信じます。
最後に、日本の諸教会と神学者に問い掛けます。米国の諸教会は、聖書の神と国旗を区別することができずに自分たちを「新しいイスラエル」と見誤る誘惑に遭います。日本の諸教会は「万物の主」を地元の「氏神」に、「聖なる公同の教会」を「檀家」のような会員名簿一覧表に、信徒の教会役割を分担する「町内会」組織に、そして牧師を儒教的「君子」になぞらえる誘惑に陥り易いのです。
明治初期から日本のプロテスタントの諸教会は、神道、仏教、日本の農村の組織、や儒教の諸伝統を全く認識していない欧米(主にドイツ)の神学書をよく勉強してきました。しかし数人の例外を除いて、日本の神学者たちは、日本の土壌から世界の「合唱団」への歌声に貢献できませんでした。文化に根付いて長く存続する教会は、福音・教会と文化との間の緊張に直面し、これを乗り越えねばなりません。
現在の日本の教会は、御言に従い聖霊の呼びかけに導かれ、恩師たちの路線を超える、勇敢な、創造力に富む神学者を必要とします。等質性のお伽話に捕われずに、現代日本社会に適合できない人たちに、違いを喜び祝う福音が届けられるよう、新しいアプローチを探求することが、私たち宣教師の最後の願いであります。心より長い間お世話になりました。

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