▼ジョン・ソールの『ミッドナイト・ボイス』では、そこに入り込んだ子供たちの若さを奪い、自らは新築の姿に若返る妖館が舞台となる。▼妖館と教会とが重なる。子供たちが出入りしなくなった妖館が老朽化するように、教会もそこに信仰生活する者も、老朽化して行く。若さを輸血しなくては…▼否、教会は血を貰う必要はない。命も貰う必要はない。むしろ逆、様々な挫折を体験した若者たちが、教会、聖書、教会員に出会い触れ合うことで、喪失していた若さや生気を、取り戻しているのだ。▼教会は、二〇〇〇年間、人々にパンと葡萄酒を、つまり御言葉と命を、提供して来た。この御言葉と命とは、決して尽きることはない。▼教会の高齢化云々は、議論の前提を間違えている。教会は、若い人たちに、生気や血を貰う必要はない。必要なのは、若い人たちの方だ。深刻なのは、遠からず御国に移される高齢者にとってではない、深刻なのは、教会からパンと葡萄酒を、つまり御言葉と命を、いただくことが出来ない若い人たちにとってなのだ。