教団としてぜひ継続して取り組んでほしいと願う課題は多い。その一つが生命倫理の分野、特に医療現場における遺伝子研究に関わる課題ではないかと思っている。
かつて、キリスト教界においても「脳死と臓器移植」の問題が大きく取り上げられ、議論されたことがあった。しかし、最近のiPS細胞を使った再生医療の研究に関する倫理的な問題や、遺伝子検査による特定の病気の診断とその予防的対応(米国の女優が乳がんのリスクを減らすために予防的乳房切除を行った例など)といったことについては、事柄についての議論よりも、実際の研究の方がかなり進んでしまっているというのが現状である。
日本においては、これらの研究が進められる際には、各医療機関が設置している倫理委員会での審査を受けることが定められている。私は市立秋田総合病院で10年以上にわたって治験審査委員および倫理委員を務め、現在は秋田大学医学部倫理委員(外部委員)の一人としてその審査に関わっているが、近年、委員会に提出される案件は、その8割方がまさに遺伝子研究分野そのものである。
倫理委員は、遺伝子という“究極の個人情報”を研究の対象として扱うことに大きな畏れをもちつつ、その承認・不承認を決定しなければならないし、判断に迷うことも多い。まずは教団の教師・信徒で倫理委員の務めを担っている方たちと、可能な範囲で情報や意見交換をする場をもつことができないだろうかとのことを考えさせられている。
(教団総会書記 雲然俊美)