要塞の町スサに一人のユダヤ人がいた。名をモルデカイといい、キシュ、シムイ、ヤイルと続くベニヤミン族の家系に属していた。 この人は、バビロン王ネブカドネツァルによって、ユダ王エコンヤと共にエルサレムから連れて来られた捕囚民の中にいた。 モルデカイは、ハダサに両親がいないので、その後見人となっていた。彼女がエステルで、モルデカイにはいとこに当たる。娘は姿も顔立ちも美しかった。両親を亡くしたので、モルデカイは彼女を自分の娘として引き取っていた。
さて、王の命令と定めが発布され、大勢の娘が要塞の町スサのヘガイのもとに集められた。エステルも王宮に連れて来られ、後宮の監督ヘガイに託された。 彼はエステルに好意を抱き、目をかけた。早速化粧品と食べ物を与え、王宮からえり抜きの女官七人を彼女にあてがい、彼女を女官たちと共に後宮で特別扱いした。 エステルは、モルデカイに命じられていたので、自分が属する民族と親元を明かさなかった。
わたしが家の窓から
格子を通して外を眺めていると
浅はかな者らが見えたが、中に一人
意志の弱そうな若者がいるのに気づいた。
通りを過ぎ、女の家の角に来ると
そちらに向かって歩いて行った。
日暮れ時の薄闇の中を、夜半の闇に向かって。
見よ、女が彼を迎える。
遊女になりきった、本心を見せない女。
騒々しく、わがままで
自分の家に足の落ち着くことがない。
街に出たり、広場に行ったり
あちこちの角で待ち構えている。
彼女は若者をつかまえると接吻し
厚かましくも、こう言った。
「和解の献げ物をする義務があったのですが
今日は満願の供え物も済ませました。
それで、お迎えに出たのです。
あなたのお顔を捜し求めて、やっと会えました。
寝床には敷物を敷きました
エジプトの色糸で織った布を。
床にはミルラの香りをまきました
アロエやシナモンも。
さあ、愛し合って楽しみ
朝まで愛を交わして満ち足りましょう。
夫は家にいないのです、遠くへ旅立ちました。
手に銀貨の袋を持って行きましたから
満月になるまでは帰らないでしょう。」
彼女に説き伏せられ、滑らかな唇に惑わされて
たちまち、彼は女に従った。
まるで、屠り場に行く雄牛だ。
足に輪をつけられ、無知な者への教訓となって。
やがて、矢が肝臓を貫くであろう。
彼は罠にかかる鳥よりもたやすく
自分の欲望の罠にかかったことを知らない。
怠け者よ、蟻のところに行って見よ。
その道を見て、知恵を得よ。
蟻には首領もなく、指揮官も支配者もないが
夏の間にパンを備え、刈り入れ時に食糧を集める。
怠け者よ、いつまで横になっているのか。
いつ、眠りから起き上がるのか。
しばらく眠り、しばらくまどろみ
しばらく手をこまぬいて、また横になる。
貧乏は盗賊のように
欠乏は盾を持つ者のように襲う。
ならず者、悪を行う者、曲がったことを言い歩く者
目くばせし、足で合図し、指さす者
心に暴言を隠し、悪を耕し
絶えずいさかいを起こさせる者
このような者には、突然、災いが襲いかかり
たちまち痛手を負うが、彼を癒す者はない。
主の憎まれるものが六つある。
心からいとわれるものが七つある。
驕り高ぶる目、うそをつく舌
罪もない人の血を流す手
悪だくみを耕す心、悪事へと急いで走る足
欺いて発言する者、うそをつく証人
兄弟の間にいさかいを起こさせる者。
子らよ、父の諭しを聞け
分別をわきまえるために、耳を傾けよ。
わたしは幸いを説いているのだ。
わたしの教えを捨ててはならない。
わたしも父にとっては息子であり
母のもとでは、いとけない独り子であった。
父はわたしに教えて言った。
「わたしの言葉をお前の心に保ち
わたしの戒めを守って、命を得よ。
わたしの口が言いきかせることを
忘れるな、離れ去るな。
知恵を獲得せよ、分別を獲得せよ。
知恵を捨てるな
彼女はあなたを見守ってくれる。
分別を愛せよ
彼女はあなたを守ってくれる。
知恵の初めとして
知恵を獲得せよ。
これまでに得たものすべてに代えても
分別を獲得せよ。
知恵をふところに抱け
彼女はあなたを高めてくれる。
分別を抱きしめよ
彼女はあなたに名誉を与えてくれる。
あなたの頭に優雅な冠を戴かせ
栄冠となってあなたを飾る。」
わが子よ、聞け、わたしの言うことを受け入れよ。
そうすれば、命の年月は増す。
わたしはあなたに知恵の道を教え
まっすぐな道にあなたを導いた。
歩いても、あなたの足取りはたじろがず
走っても、つまずくことはないであろう。
諭しをとらえて放してはならない。
それを守れ、それはあなたの命だ。
神に逆らう者の道を歩くな。
悪事をはたらく者の道を進むな。
それを避けよ、その道を通るな。
そこからそれて、通り過ぎよ。
彼らは悪事をはたらかずには床に就かず
他人をつまずかせなければ熟睡できない。
背信のパンを食べ、不法の酒を飲む。
神に従う人の道は輝き出る光
進むほどに光は増し、真昼の輝きとなる。
神に逆らう者の道は闇に閉ざされ
何につまずいても、知ることはない。
わが子よ、わたしの言葉に耳を傾けよ。
わたしの言うことに耳を向けよ。
見失うことなく、心に納めて守れ。
それらに到達する者にとって、それは命となり
全身を健康にする。
何を守るよりも、自分の心を守れ。
そこに命の源がある。
曲がった言葉をあなたの口から退け
ひねくれた言葉を唇から遠ざけよ。
目をまっすぐ前に注げ。
あなたに対しているものに
まなざしを正しく向けよ。
どう足を進めるかをよく計るなら
あなたの道は常に確かなものとなろう。
右にも左にも偏ってはならない。
悪から足を避けよ。
わが子よ、主の諭しを拒むな。
主の懲らしめを避けるな。
かわいい息子を懲らしめる父のように
主は愛する者を懲らしめられる。
いかに幸いなことか
知恵に到達した人、英知を獲得した人は。
知恵によって得るものは
銀によって得るものにまさり
彼女によって収穫するものは金にまさる。
真珠よりも貴く
どのような財宝も比べることはできない。
右の手には長寿を
左の手には富と名誉を持っている。
彼女の道は喜ばしく
平和のうちにたどって行くことができる。
彼女をとらえる人には、命の木となり
保つ人は幸いを得る。
主の知恵によって地の基は据えられ
主の英知によって天は設けられた。
主の知識によって深淵は分かたれ
雲は滴って露を置く。
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