2024年8月1日
2024 平和メッセージ
幸いなるかな。平和を実現するものたちは。
日本基督教団社会委員会
委員長 柳谷知之
現在、日本政府は防衛費倍増、敵地攻撃能力保有という「軍拡」の道を推し進めています。2022年12月、岸田政権は安保関連3文書(「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」)の改訂を閣議決定し、2023年6月には「防衛力強化2法」(「防衛財源確保法」、「防衛生産基盤強化法」)を成立させました。加えて、今年の3月26日、次期戦闘機の第三国への輸出解禁を国家安全保障会議において決定しました。また、今年の1月には自衛隊の神社参拝常態化が明らかになりました。現在の私たちの国の問題は以下のようにまとめられます。
1.敵地攻撃能力について 敵基地攻撃能力の保有は、対中国ミサイル包囲網を構築しようとする米軍の計画に呼応しています。これにより、宮古島、奄美大島、石垣島、沖縄本島(うるま市)にミサイル部隊が配置され、南西諸島の地対艦ミサイル体制を強化しています。敵による武力攻撃開始の判断は難しく、標的もミサイル基地だけに限りません。このミサイル基地は台湾有事にも用いられることになりそうです。先制攻撃がいつでもできる状況で、東アジアの軍事的緊張は増大しています。
2.ミサイル防衛について 日本は食料の約6割、エネルギー資源のほとんどを他国に頼っています。ウクライナ-ロシア戦争においても、食料やガソリン等の物価は高騰しました。どんな最新鋭の武器を擁したとしても、日本が戦争状態に入れば、食料やエネルギーの確保はできず、国民の生活は困窮を極めます。
3.防衛力強化について 岸田首相は、バイデン大統領に約束した(2022年5月)とおり、「5年間で総額43兆円」の防衛費増額を目指しています。このため暮らしに必要な財源の不足を招き、国民の生活はますます脅かされます。
4.日米安保について 米国の対中国戦略は台湾有事などに備えてますます厳しくなっています。日米安保によって日本の軍事的役割の強化も求められています。軍拡は米中衝突の際には、アメリカと一体となって中国を攻撃するためであると考えられ、米中間、日中間の緊張は一層高まります。
5.防衛生産基盤強化法について 「防衛生産基盤強化法」は、軍需・武器輸出産業への財政支援、貸付促進、事業継続が困難な企業の国有化等が定められ、これにより武器輸出の促進と、軍需産業の実質的「国営化」が進められます。「装備品等機密」という曖昧な指定により、軍需産業従業員に対する「守秘義務」と刑事罰を定め、民主主義と平和主義を破壊します。
6.軍事技術、装備の共同開発、輸出について 「グローバル戦闘航空プログラムに係る完成品の我が国からパートナー国以外の国に対する移転について」の国家安全保障会議決定及び閣議決定、並びに「防衛装備移転三原則の運用指針」の改正により、政府はイギリス・イタリアと次期戦闘機を共同開発し、それを第三国へ輸出できるようにしました。攻撃能力を持つ戦闘機を他国と開発し、さらにその採算をとるために輸出することは、専守防衛を掲げる日本国憲法の原則を壊しています。
7.自衛隊による靖国神社や各神社の参拝について 日本国憲法は、かつての戦争を反省し、国家神道的なある種の神権国家体制と決別し政教分離の原則を持っています。にもかかわらず軍事力を握る人々や国の指導者が靖国神社参拝を当たり前のようにし神権国家体制を推進しようとしています。「偶像を造り、それに依り頼む者は皆、偶像と同じようになる。」(詩編115:8、135:18)と言われるように、このことは、自由にものを言えない社会を造り出します。
以上のような戦争に備えた体制は、聖書が語る平和とは対極にあるところです。「剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」(ミカ書4章3節)とあるように、神が約束される来るべき世界は、すべての武器が平和の道具に変えられることです。また、聖書は「剣を取る者は皆、剣で滅びる。」(マタイ26章52節)、「暴力に依存するな。搾取を空しく誇るな。力が力を生むことに心を奪われるな。」(詩編62編11節)と、武器をとることや暴力を警戒しています。
私たちはこのような体制に抗議するとともに、関連する決議や法律の撤回を強く求めます。日本国憲法の「平和主義」に基づく外交努力を第一とし、武力によらない対話による平和構築の推進を求め、平和を実現するために共に働きましょう。
以上。
2024社会委員会平和メッセージ(PDF)
2024 年 8月 1日
内閣総理大臣 岸田文雄 様
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-18-31
日本基督教団社会委員会
委員長 柳谷知之
日本国の軍拡に反対し、武力によらない平和構築を求める声明
現在、日本政府は防衛費倍増、敵地攻撃能力保有という「軍拡」の道を推し進めています。2022年12月、岸田政権は外交・防衛政策の長期指針「国家安全保障戦略」に関わる安保関連3文書(「国家安全保 障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」)の改訂を閣議決定し、2023年6月には防衛力強化2法(「防衛財源確保法、防衛生産基盤強化法)を成立させました。加えて本年3月26日には次期戦闘機の第三国への輸出解禁を国家安全保障会議において決定しました。また、本年1月には自衛隊の神社参拝常態化が明らかになりました。
聖書は「剣を取る者は皆、剣で滅びる。」(マタイ26章52節)、「暴力に依存するな。搾取を空しく誇るな。力が力を生むことに心を奪われるな。」(詩編62編11節)と語り、武力によらない平和の大切さを訴えています。これは日本国憲法の「平和主義」と重なるものです。現在の国際情勢、また、私たちの国の状況において「軍拡」は大きな問題点を孕んでいます。日本国憲法の「平和主義」は決して絵空事ではなく、むしろ大いに活用すべきであると、わたしたちは確信しています。
わたしたち日本基督教団社会委員会は、キリスト教信仰に基づき、政府の「軍拡」への動きに反対を表明し、武力によらない平和構築を求めます。
1.敵地攻撃能力は、軍事的緊張を増大させる
敵基地攻撃能力の保有は、九州・沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」に沿って対中国ミサイル包囲網を構築しようとする米軍の計画に呼応するものです。これにより、宮古島、奄美大島、石垣島、沖縄本島(うるま市)にミサイル部隊が配置され、南西諸島の地対艦ミサイル体制が強化されます。これらは台湾有事を想定しているとのことですが、敵による武力攻撃開始の判断は難しく、標的もミサイル基地だけに限りません。先制攻撃がいつでもできるこの状況は、東アジアの軍事的緊張を増大させます。
2.ミサイル防衛では国は守れない
日本は食料の約6割を他国に頼り、石油などのエネルギー資源のほとんどを自国で調達することはできません。ウクライナ―ロシア戦争の影響で、わが国の物価上昇は避けることはできず、ガソリンも高騰しています。まして日本国が戦争状態になれば、食料やエネルギーの確保はできず、国民の生活は困窮を究めます。従って、どんなに最新鋭の武器を擁していても、国を守ることはできません。
3.日米安保による米国への同調は、際限のない軍拡を招く
この軍拡は我が国の防衛のためでなく、アメリカの対中国戦略の変容による日本の役割分担として要求されています。米中の衝突が起きた場合、アメリカと一体となって中国を攻撃するための軍拡である以上、それは際限のない軍拡へと突き進まざるを得ず、米中間、日中間の緊張関係の一層の増大を招きます。
4.軍事費増加は、国民の生活を脅かす
岸田首相は、「防衛費の相当な増額」をバイデン大統領に誓約し(2022年5月日米首脳会談)、GDP比2%を宣言しました。このために昨年「防衛財源確保法」が成立しました。「5年間で総額43兆円」と支出の規模ばかりが先行し、根拠が示されていません。税外収入を当てにしているとのことですが、「税外収入をほかの予算項目から回す形で賄うならば、その分国債の発行が増える」と指摘する専門家もいます。決算剰余金についても近年は経済対策の財源に使われ、剰余金の半分は借金返済に充てられるため、防衛費に回れば回るほど、暮らしに必要な政策の財源が不足し、やがては増税もやむなしとされるでしょう。軍事費増加は国民の生活を脅かします。
5.軍拡は、国民に戦争協力を迫る。
昨年成立した「防衛生産基盤強化法」は、①軍需産業に「生産基盤強化」のための資金を提供、②武器輸出を行う企業に財政支援、③日本政策金融公庫による貸付促進、④事業継続が困難な企業の国有化、を柱としています。これにより事実上軍需産業の「国営化」が可能になり、結果、武器輸出をも促進させることになります。さらに、「装備品等機密」という曖昧な指定を行い、軍需産業の従業員に対し「守秘義務」を課し、違反の場合は刑事罰も定められています。このように「軍拡」のための法整備は、国民に戦争協力を迫り、民主主義と平和主義を破壊します。
- 軍事技術、装備の共同開発、輸出は、平和憲法の原則を壊す
「グローバル戦闘航空プログラムに係る完成品の我が国からパートナー国以外の国に対する移転について」の国家安全保障会議決定及び閣議決定、並びに「防衛装備移転三原則の運用指針」の改正により、政府はイギリス・イタリアと次期戦闘機を共同開発し、それを第三国へ輸出できるようにしました。攻撃能力を持つ戦闘機を他国と開発し、さらにその採算をとるために輸出することは、専守防衛を掲げる日本国憲法の原則を壊しています。
7.自衛隊員による靖国神社参拝は、神権国家体制を復活させ、無謀な戦争に突き進ませる
日本国憲法は、かつての戦争を反省し、国家神道的な神権国家体制と決別する政教分離の原則を持っています。にもかかわらず軍事的力を握る人々が靖国神社参拝を当たり前のように行っていることが明らかになりました。明治以降、日本国は天皇を中心とした国家形成において、天皇を不可侵な存在と位置づけてきました。太平洋戦争末期、敗戦色濃い戦況で、特攻という無謀で命を粗末にする作戦が生まれたのもこの国家体制があったからではないでしょうか。悲惨な戦争、無謀な戦争を繰り返さないためにも、国家の要職につく人々や自衛隊による靖国神社参拝には異を唱えざるを得ません。
私たちは日本国憲法の「平和主義」に基づく外交努力を第一にすべきであると考え、現在、政府が進めつつある大軍拡に反対し、関連する決議や法律の撤回を強く求めます。
以上。
日本国の軍拡に反対し、武力によらない平和構築を求める声明(PDF)