使徒言行録19章18~20節
主の言葉が勢いよく広まる 石橋秀雄
驚くほどの恵みの中で
昨年12月16日映画配給会社プレシディオからDVDと原稿依頼が送られてきた。DVDには「アメイジング・グレイス」(2006年イギリス映画)とあり、マスコミ用資料としてジョン・ニュートンについて書いて欲しいとのことであった。
アメイジング・グレイスが今年3月に全国の映画会社から公開される。
この映画の主人公は「奴隷貿易禁止法案」を成立させるために信仰をもって闘ったウイリアム・ウィルバーホースである。この闘いをジョン・ニュートン牧師が支える。ニュートンの青年時代は挫折と転落の人生であり、その救いの体験は難波船の中で、必死に祈り、死の危機から救われたことによる。その後、奴隷貿易船の船長になる。
このならず者、償い切れない罪を犯した者を、罪の中に捨てられた者を、主は見出し救ってくださった。神の驚くべき恵みが歌われる。まさに、アメイジング・グレイスだ、驚くべき恵みだ。
映画の中で、ニュートンは視力が落ち、記憶が薄れ、人生の終わりが近い中で、「すべてを忘れても決して忘れられない2つのことがある。それは、私が罪人であり、キリストは救い主であるということだ」と告白する場面がある。
この映画は伝道の映画だと感銘を受け原稿を書くことにした。
伝道とは
この驚くべき恵みをパウロはエフェソのティラノの講堂で毎日論じた。
「アジア州に住む者は、ユダヤ人であれ、ギリシア人であれ、だれもが主の言葉を聞くことになった」
(使徒言行録19章10節)
エフェソの人々は、貴重な昼休みに、講堂にやってきて、熱心に福音を聞いた。
「パウロは熱心に語り、人々は熱心に聞いた」ここで多くの人々が悔い改めた。
使徒言行録が示す伝道とは、「悔い改め」を起こさせることだ。
エフェソの人々はパウロが語る「驚くべき主の恵み」を知らされた時、罪の告白をしている。
「自分たちの悪行をはっきり告白した」(同18節)
彼らは罪から解放された。そして、同時に自由にされたのだ。
エフェソの町は魔術が盛んな町であった。
パウロの福音を聞いた人々は「その悪行をはっきり告白」して魔術を捨てた。自分の生活の中心であった魔術の書物を、悔い改めて捨てて燃やした。
「その値段を見積もってみると、銀貨5万枚にもなった」(同19節)
魔術の書物は高価であった。銀貨5万枚は、膨大なこの世の価値を示している。この世の価値・書物が燃やされた。
魔術がエフェソの人々の生活の中心にあるということは、同時に生活の不安、その不安を魔術の本に頼って克服しようとしていたということになる。
今まで生活の中心にあり、人々の心を縛っていた。この魔術から、人々は解放された。
生ける神の御言葉の力は人々の生活を変える。
魔術から、迷信から、わたしたちを縛るあらゆる苦悩から自由にする。
主の言葉が勢いよく
「このようにして、主の御言葉はますますい勢いよく広まり、力を増していった」(同20節)
パウロではなく、人間の言葉ではなく、主の言葉が、「十字架と復活の主イエスの言葉が、ますます、勢いよく広まり、力を増した」のだ。
御言葉が熱心に語られ、御言葉が熱心に聞かれ、神への讃美が高らかに歌われる礼拝が捧げられる。この礼拝で熱くされた信徒が、熱心に証しをし、熱心に伝道する教会でありたい。
そして、日本基督教団において「主の御言葉がますます勢いよく広まり、力を増した」と語りえる「伝道する教団」になっていきたい。
心から願い、祈る。
(第37総会期教団総会議長、越谷教会牧師)