日常の働きを担いながら神学する
2010年秋季教師検定試験が9月14日(火)~16日(木)、大阪会場(大阪クリスチャンセンター)において行われた。
受験者総数は91名。試験直後に行われた検定委員会での学科試験判定の結果は次の通りである。
正教師試験は69名が受験し、合格者が41名、保留者が13名、不合格者が15名であった。また補教師試験は19名が受験し、合格者が5名、保留者が1名、継続者が10名、不合格者が3名であった。
保留者とは、学科試験の結果が合格点にわずかに及ばなかった受験者で、レポートが課せられ、後日そのレポートによる再判定を受ける者のことである。また継続者とは、主にCコースにおいて、複数年かけて補教師試験を受験する者の中で、次回以降も受験する必要がある者のことである。
今回はさらに、他教団からの教師転入の受験者があり、3名すべて正教師として合格となった。
今回の試験は、受験者総数の約2割にあたる18名が不合格となるという大変厳しい結果となった。特に、正教師試験受験者は、聖礼典の執行を含め、正教師としての働きを求める教会の篤い祈りが背後にあることを思うと、15名もの不合格者を出したことは、非常に残念であった。
正教師試験の受験者は、既にそれぞれの遣わされた場において、日々宣教の業に励む中で試験の準備を行うこととなり、時間的にも精神的にも、困難を伴う場合が多いであろう。しかし、このたびの結果を謙遜に受けとめ、自らの準備に足りなかったところを反省しつつ、真摯に再受験に備えていただきたいと願う。
検定委員会としては、事前の提出物の課題・筆記試験の問題のいずれにおいても、毎回、基本的なことを求めてきた。つまり、教師として宣教にあたる時、どうしても弁えておかなければならない事柄を、問うてきたということである。
事前に提出を求められる聖書釈義・説教は、主日毎の務めに直結する大切な課題であるにもかかわらず、釈義から黙想を経て説教作成に至るまでの流れが十分に整っていないものが少なくない。日常的に、誠実な取り組みを求めたい。
組織神学の課題は、合同教会の豊かさを生かしていくために、私たちが何によって一致するかを確認する基本的な問いであったにもかかわらず、神学的思索が不十分で、論点のまとまらない答案が多く見られたことは残念であった。
教会史・教理史の試験は、過去の問題をよく研究し、的を絞って準備していると思われる答案が多く見られた。
その一方で、的が外れると手のつけようがないのか、勉強不足が露呈するものも少なくない。また文章力が弱く、理解の困難な答案も見られた。
新約神学・旧約神学は、聖書の参照が可能であるにもかかわらず、引用すべき聖書箇所がつかめていない答案が見られた。普段から聖書に親しむと共に、少なくとも一冊は、手引きに紹介された基本的な参考書を通読することを求めたい。
教憲教規および諸規則・宗教法人法の試験は、規則の参照が可能であるためか、準備不足と思われる答案が少なくない。そもそも宗教法人法の意義が分かっていないと思われる答案、問題文の意味が理解できていないと思われる答案もあり、不安を抱かせた。主任担任教師になれば、法規に基づく事務手続きも必要になる。これも教会に仕えるために大事な学びであることを弁えて準備して欲しい。
学科試験後の個人面接に先立ち、面接の1日目と2日目に全体会が行われた。最初に各委員の紹介、次いで倉橋康夫委員長が挨拶し、今回の試験全般について説明した。その中で、委員長は現教師検定委員会の検定方針を説明し、特に教憲第9条の「神に召されて正規の手続きを経て献身した者」について丁寧な説明がなされた。
「召命」の原点に堅く立ち、さらにそれを確認しつつ、主の召しに応えて「献身」する受験者の上に、主の祝福と訓練が豊かに備えられるよう祈り願う。
(東野尚志報)
2010年秋季・正教師検定試験問題
教憲教規および諸規則・宗教法人法(60分)
次の2題に答えてください。
1.教会担任教師の招聘、辞任、解任のときの必要な手続き及び手順について、教憲教規の当該事項をあげて文章で述べてください。
2.宗教法人設立の手続きについて、特に「認証制度」の観点から大切な事項について述べてください。
旧約聖書神学(60分)
次の2題に答えてください。
1.「神の名」について述べてください。
2.「イスラエルの選び」について述べてください。
新約聖書神学(60分)
1. 次の問題に答えてください。
ルカによる福音書及び使徒言行録の神学について
2. 次の3題のうちから2題を選んで答えてください。
①初代教会の礼拝について
②パウロにおける「神認識」について
③新約聖書における黙示文書と黙示的箇所について
教会史(60分)
次の2題に答えてください。
1.「基本信条」の中から一つを選んで、その成立や内容、特徴について述べてください。
2.①~④のうち、3問について簡潔に説明してください。
①いわゆる「贖宥の問題についての95条の公開質問状」
②敬虔主義
③リマ文書
④日本基督教団の成立
講 評
日本基督教団の教師を立てることは、最重要事である、と言うことができます。教師検定委員会は、同労者の誕生を願いながら、そのための実務を担っています。しかしながら、今回の試験は、大変悲しい結果となりました。正教師受験者が圧倒的に多かった今回の試験ですが、試験を終えた時点で、正教師受験者の2割を超える不合格者が出てしまいました。
一般に、教師検定試験受験者に求められることは、神学の基本的・基礎的な知識と思考力です。今回の結果は、そのような基礎的な面が備わっていないことを示しています。補教師として、主任であったり担任であったりの違いはありますが、日常のみ言葉の奉仕に当たっていたことでしょう。しかし、日常の働きを担いながら、神学をすることが大切だと思います。これは、伝道者として生きる者の当然負うべきことです。受験者の皆さんが、良き準備を以って試験に臨まれることを願っています。(36総会期教師検定委員長 倉橋康夫)