横浜に「海員宣教」という、日本基督教団で唯一の活動があります。その担い手が合同メソジスト教会(アメリカ)から派遣されたフィリピン人宣教師ロナルド・ジュリアンさんです。東京・練馬の自宅から車で通い、港に着く船の乗組員を訪ねる毎日。
実は、日本の輸出入を下支えしている船員の多くがフィリピン人。祖国を遠く離れ、このインターネット・SNS時代にも家族との連絡がつきにくいまま、何カ月もかけて港にたどり着きます。
その間に体調を崩したり、精神的に追い詰められる人もいますが、なかなか言い出せません。船が厳しい階級社会であることもありますが、IT時代の港湾作業は高度に合理化され、船の滞在時間が驚くほど短縮されているため、不調を訴えにくいのです。
ジュリアンさんは、そんな船乗りたちに寄り添い、買い物から、家族への連絡や送金の手伝い、病院への送り迎えまで何でもします。行き詰った船員を職場放棄寸前で思い止まらせたり、自死した船員の葬儀に立ち会ったこともあります。
妻のデボラさんも、現在NCCで難民・移動労働者の人権問題に関わる宣教師です。来日して15年。最初の10年は、デボラさんの宣教活動をロナルドさんが配偶者として支え、二人の息子の成長を見守ってきた元祖育メン。
ところが、5年前のこと。神奈川教区が求めている海員宣教の宣教師にぜひ、と熱心に勧めてくれた人がいました。そして祈りのうちに、これに応じる思いが固まりました。本人いわく、「神様からつまみあげられて、ポンと置かれた」ように、横浜の港で自らの使命(mission)を見つけたジュリアンさんは、海をわたってきた寄留者に寄り添い、心身をすり減らす羊はいないかと探し出す、いわば「海の羊飼い」として、今日も船を訪ね歩いています。
1967年フィリピン生まれ。母国で建築士・Webデザイナーなどを経て、2013年10月より現職。