野村さんは、2000年夏、ACEF(アジアキリスト教教育基金)のスタディツアーでバングラデシュのキリスト教系NGO(非政府組織)の運営する寺子屋小学校の幾つかを訪れた。以来、教育の業に関わる召命観は、勤め先の東洋英和女学院における生徒たちにとどまらず、教育の機会に恵まれずにいる子どもたちにまで広がった。「学ぶことが嬉しい」と喜ぶ姿に、人格を涵養し可能性を開く「教育」の本来的意味を見続けている。
130年前にカナダからの女性宣教師や教会の人々の支援によって生まれた東洋英和女学院に学ぶ生徒たちには「今度は自分たちが教育を必要としている子どもたちのために祈りをもって支援する者になってほしい」と語る。スクールモットー「敬神奉仕」の具現化をもそこに見る。教会で役員・伝道委員長の働きに任じられ、社会的にはキリスト教学校教育同盟広報委員、ACEF理事、臼井学園ひなぎく幼稚園理事として奉仕しつつ、「信仰告白的な生き方とは何か」を日々自問する。「教会の礼拝での『日本基督教団信仰告白』がどのような実生活に繋がっているか。信仰告白する者にはリバイバル(信仰の覚醒)が惹き起こされ、自分が救われている認識が今度は他者への援助へと向かうのが真に信仰告白的な生き方ではないか。善いサマリア人がそうであったように」という。そして「生き方としてNPO(非営利民間組織)/NGOにコミットすることは信仰告白的な生き方の一つの表れであり、とりわけ『キリスト教』の表記を団体名から外さずに法人格を告白し世に問いかけているNPO/NGOに対しては、教会及び教会員、キリスト教学校からの支えが更に必要だ」と訴える。キリスト教学校に学ぶ生徒たちには草の根的な働きをするNPO/NGOを支えることが「生き方のセンス」につながって、いつの日かその中から少しでも多くの信仰者が生まれることを遥かに望み見ている。
1965年生まれ、銀座教会員、東洋英和女学院中高部教員。