祈りと寄り添い
日本基督教団東北教区被災者支援センター・エマオでは、震災直後の2011年3月15日から今日まで働きを繋いで来ています。それはただ単に支援活動を繋いで来たのではありません。何よりも「祈り」、そして「寄り添う働き」を繋いできました。
この「寄り添う働き」を私たちは「スローワーク」という言葉で表現しています。ゆっくり時間をかけて、丁寧に被災された方たちに寄り添っていく働きです。例えば、お宅の方から望まれれば、目の前の作業を中断してでも一緒にお茶をしています。お話に耳を傾け、また求められればこちらからもお話をすることを通して、少しずつ出会いが生まれていきます。「目に見える成果」ももちろん大切ですが、それよりも「目には見えないもの」を私たちは大切にしています。
エマオが信頼関係を築いてきた結果、はじめて参加したワーカーに対しても、お宅の方たちは心を開き、受け入れて下さっています。私たちは「希望」を届けに行く働きをしていると思いますが、むしろ「希望」を与えられて被災地からエマオに帰って来ることも多いのです。
このように、何よりもワーカーに深い「出会い」が与えられていることが、エマオの特徴ではないでしょうか。
海外からのボランティア
海外から来て下さった、多くのワーカーにとっても同様です。海外から来ているからと言って、ワーク内容を変えることはしていません。他の国内ボランティアと同様に、被災されたお宅に行き、ワークをし、出会い、そして帰って来るのです。
何人もの海外ボランティアが、出会いを振り返って、最後の挨拶の時に涙を流しました。
私たちはとても不思議に感じています。「なぜ海外からわざわざ仙台や石巻まで来て下さるのか?」と。私たちだけではありません。ワークに入っている被災された方たちも、わざわざ海外から来てくれたワーカーに対して、驚きと感謝の思いを抱かれています。言葉が通じなくても、いやむしろ通じないからこそ、その姿から伝わるものがあります。それは、「目には見えないもの」=「祈り・愛・希望」です。今までに、沢山来て下さった海外ワーカーから学んだことです。
台湾基督長老教会(PCT)の働き
2012年夏には、台湾基督長老教会(PCT)が、97名ものボランティアを2ヶ月にわたって送って下さいました。
その人数にも、熱意にも圧倒されました。
なかなか人手が足りずに進んでいなかった、広い田畑からの細い瓦礫除去作業もとてもはかどりました。農家出身の台湾ボランティアは農作業において大活躍でした。日本の農家では高齢化のために、農業が出来る青年はとても少ないのが現状です。そんな中で、台湾から来た彼らの働きは抜きん出ていました。また最後のチームでは、大工の方たちが10名来て下さり、まだまだ家の補修作業が必要なお宅に行ってワークをして下さいました。
私たちが普段することが出来ないワークを担って下さり、被災された方たちもとても喜ばれていました。
もちろん、97名ものボランティアを受け入れることは大変でした。言葉が通じないことから来る、ハプニングも沢山ありました。しかし、それにもまさる大きな恵みだったことも間違いありません。
震災から2年
震災から2年を迎えるいま、被災地の現実はむしろ厳しさを増しています。
仮設に住む30万人以上の方たちすべてが「自分の家」に帰ることが出来るまでには、気が遠くなるほどの時間が必要です。津波で深刻な被害を受けた田畑が、そして〈いのち〉が回復するのにはさらに多くの「時間」と「寄り添い」が必要です。
エマオを取り巻く環境も決して甘くはありません。日本社会がどんどんと被災地を忘れていっている中で、私たちが出来る最善の業が求められています。被災者支援も緊急支援から中長期支援へと移り、エマオのワーク内容も少しずつ変えていくことが求められています。スタッフが疲労を溜め、時に裁き合ってしまう中で、時間をかけて関係性を造り上げていくことが求められています。
しかし、被災されている方たちの心からの笑顔や、津波で家を流された子どもたちが元気に遊び回っている姿を見る時、復活の主イエスが被災された方たちと共にいて下さっていることに気付かされます。厳しい現実だからこそ、私たちキリスト者は、神さまの愛に押し出されて、これからも「祈り」と「寄り添い」を繋げていきたいと願います。
どうぞこれからも、祈りに覚え続けていただければと切に願います。
(佐藤真史報/教団東北教区被災者支援センター・エマオ派遣専従者)