【4732号】現代日本の危機とキリスト教 東日本大震災を通して問われたこと

信仰者としてどう受け止め、何を語るべきかを問う

東日本大震災・原発事故を信仰者としてどう受け止め、何を語るべきかを問う教団主催の緊急シンポジウムが8月29・30両日、銀座教会で開催された。「現代日本の危機とキリスト教-東日本大震災を通して問われたこと」を主題に、4人が発題、大木英夫・聖学院大学大学院長が特別講演を行い、濃密な、示唆に満ちたシンポジウムに延べ440人が熱心に聞き入った。内容は、教団出版局から出版され、内外に発信される。

第1日目午後1時30分から始まった開会礼拝で、北紀吉牧師(愛宕町)は、「エロイ、エロイ、レマ、サバクタニ」と題する説教で、「神は死んだという人々がいるが、人々は神を乞い求めている。神を語らざるを得ない時代であり、教会はそのことを問われている。被災地に行って、夜、絶望のうめきを聞いた。闇の中に助けを求める叫び、うめきが脳裏から離れない。絶望のただ中に十字架のイエスが立っていて下さる。そこに救いがある。教会が語る救いとは十字架のイエスの救いしかない」と熱っぽく説いた。
続いて、石橋秀雄議長は、「死者・行方不明は2万人に上る。1人の命にどれほどの命が繋がっていたか、絶望の中にどれほどの人がいるかを思う。3月11日、私は東神大卒業式に出席中、大震災に遭遇し、2日後、『後ろから押される思い』で被災地を訪問した。『神から迫られていた』のだと思う」と開会挨拶を行った。
1日目、まず中山昇氏(清教学園元理事長)が、「キリスト教学校の視点から」発題を行い、戦後、大阪空襲の瓦礫の中から、「教会学校生徒の訴え」を教会が受け止めて、学園設立に至った経緯を説明して、大きな示唆を与えた。
続いて、芳賀力氏(東神大教授)が「神学者の視点から」「なぜ神は『悲しみの人』になられたのか」と題して発題。「昔から世界には不条理なことが多くあったが、私たちが意識しなかった。危機に遭遇した時こそ、根源的な問いに目覚める好機だ。神は、悲嘆に暮れる人に寄り添うために、自ら悲しみの人になられた。キリスト教の信仰は、復活の希望に掛かっている。神は憐れみの神であり、共に祈るほかない。礼拝から復興支援が始まる」と語った。
3人目の発題者、稲松義人氏(日本キリスト教社会事業同盟理事長)は、「キリスト教社会福祉の視点から」発題を行い、「社会福祉というと誰もが施設の充実を考える。だが、福祉は地域、家庭でなさるべきもので、施設があれば済むものではない。
クリスチャン・ホームに里子をという里親運動を進めているのはそのためだ。施設の再建はすぐには決まらない。募金は貯めておいて欲しい」と述べた。
2日目は、午前10時から岡本知之副議長(西宮)が、「教会・牧師の視点から」「現代日本の危機とキリスト教」と題して発題。原発24キロ地点の原町教会に震災1カ月後、朴貞蓮牧師が韓国・済州島から着任したが、外国では、日本より遥かに正確に事故の実態が報道されていた。
保育所の園児100名が避難所で何らかの変調を来しており、困難の中で礼拝を守っている状況を報告。内外で神の存在を否定する発言が相次いでいることを紹介して、教会の使命を強く訴えた。
午後は、大木英夫氏(聖学院大学大学院長)が「土曜日のキリスト」と題して2時間の特別講演を行った。大木氏は、3・11以後、日本は神から「改革を迫られている」として、「日本のプロテスタントが何故こうも軽くなったのか」と警鐘を鳴らした。
金曜日の十字架から日曜日の復活に至る土曜日、「日本はその土曜日にいる」として、仏教の「生老病死」の永遠回帰ではない「古い人から新しい人への奇跡的転向」洗礼にこそ、人間の究極の転換、前進があると説いた。
グローバリゼーションの風潮に触れ、「世界は教会に成りたがっている。だから教会は教会に成らなければならない」と締めくくって、深い比喩に満ちた講演を終えた。
講演後、質問に答えて、「『神に迫られた』のは、『日本を神学する』ことだ。バルトは、ヨーロッパのある時期に必要だった。神学について大改革が必要で、外国の神学に頼る時代は終わった」。
「日本のキリスト教会は、左右に別れ、教派の勉強ばかりしている。教団の一致というなら、真剣に悔い改めなければならない。キリスト教学校は根本的な改革を必要としている」。
「教会は主のもの。教会が劇場化しつつあるが、教会で人気取りをしてはいけない」など、示唆に富む刺激的な回答を行った。
(永井清陽報)

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