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日本基督教団 The United Church of Christ in Japan

【5003・04号】♦︎教師継続教育研修会♦(2面)

2023年8月26日

現代の伝道への問いとしてのカルト

 8月1日、教師継続教育研修会がオンラインで行われ、34名が参加した。講師の川島堅二教授(東北学院大学)が「“カルト”−いま私たちに問われていること」と題して講演を行った。
 川島教授は、「宗教リテラシー」の普及がカルト問題の解決に資するとし、宗教リテラシーを三つのレベル、⑴情報提供、⑵参加・傾倒、⑶研究・調査で考える必要性を指摘した。
 ⑵参加・傾倒においては、英国の神学者ジョン・ヒックを主唱者とする「宗教多元主義」に立つあり方を提示。これは宗教団体に属さず達観する宗教哲学的主張ではなく、特定の団体に所属しながら他宗教との関係を考える中でたどり着く神学的立場であるとしつつ、宗教の変更や複数所属を認める立場である故、伝統宗教に対しても挑戦となるものであると指摘した。
 ⑶研究・調査では、日本の宗教学の基礎を築いた姉崎正治の「宗教病理学」を再評価しつつ、カルトと向き合う時、「正信と迷信」(正統と異端)という視点からではなく、病理学の視点に基づき、「宗教的意識の一部に、偏重の亢進あるいは減退を生じ、あるいはその社会的進化に停滞不調を生じる病態」があるかどうかによって判断するあり方を示した。
 休憩をはさんで持たれた後半のセッションでは、川島教授の歩みを紹介しつつ、「現代の伝道への問いとしてのカルト問題」との題で話した。
 教会の他宗教に対する関わり方についてジョン・ヒックによる3類型(①排他主義、②包括主義、③多元主義)を踏まえ、19世紀までは、排他主義がキリスト教の多数派であったが、シュライエルマッハーが「あらゆる宗教に宗教的直観がある」として排他主義に否を唱えたことに触れ、自身が排他主義・包括主義から多元主義に至った経緯を述べた。その上で多元主義は、排他主義を取るカルトと向き合い、また、カルトから抜けることに躊躇している人を説得する際に、最も有効な立場となるとした。一方で、多元主義の立場を取った時に生じる、「出入り自由で良いのか」、「洗礼は取り消せるのか」、「複数宗教所属は可能なのか」といった課題があることを指摘した。
 質疑応答では、宗教多元主義については、「主イエスを救い主と信じることが多元主義ではどのように乗り越えられて行くのか」、「聖書を中心に啓示を受け取りつつ、排他的にならないようなあり方があるのでは」等の問いがあった。川島教授は、弁証法的な考え方に立てば、自分の中にある矛盾を簡単に解決しなくて良く、矛盾を無くそうとするとカルト化することを指摘した。また、洗礼については、「洗礼は取り消せないが、教会を離れることはあり得る」、「離れることもあり得ることを告げて行くことも必要」等の意見があった。「宗教2世の問題が取り上げられている中で、信仰継承についてどう考えるか」との問いがあり、川島教授は、戦後に多くの人々が教会に集い、その2世・3世が、親世代が担って来た教会を維持することで疲弊してしまっている現実を紹介し、教会がキリスト教の背景が無い人々に向かって行くことの重要さを指摘した。

(新報編集部報)

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